2話 スキルを試そう
俺は、案内された個室で一息ついていた。そして、何度もステータスを確認していた。
「ステータス1って......。召喚されて強くなるどころか弱体化してんじゃねえか......」
いくら見ても、その数値が変わることはない。そして、俺はその原因を考える。
しかし、いくら考えても答えは出てこない。鑑定とかを使って見てもそれらしいことは分からない。
そして、俺は1つの結論にたどり着いた。
即ち......諦めようと。
戦いに向いてないのは変わらないのだ。だったら、護身術程度を身につけてあとは武器とかポーション作りでサポートに回ったほうが良いのではないか、と。
正直、非常に不満である。異世界に来た時は俺TUEEEEEE!とかやってみたい気持ちはあったからな。
でも、そうでなくても何も出来ずにただここで待ってるのはもっと不満だ。ならば、生産スキルで本気を出そう。
そう言う結論にたどり着いた。
と言うわけで、早速生産スキルの練習をしよう。確か、創造の中に道具を使わずにアイテムを作れる奴があった筈だから、とりあえずは材料を集めよう。
................................................流石に、部屋の中を探しても何も集まらないな。よくて埃位だ。あ、ところで埃って鑑定出来るかな。
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ホコリ
分類 アイテム
レア度 ゴミ
説明
唯のゴミ。ちなみにこれは服の繊維とかが細かく千切れて出来たやつ。
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出来るのか。出来たところで対して意味はないが。まあ、どうせこんなものじゃロクなものなんて作れな......
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選択肢を選んで下さい
・糸
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......糸くらいなら作れるのね。確かに元が布って書いてあったけど、その成れの果てをどうやっても普通糸には戻せねえよ。まあ、作ってみるか、練習にはなるだろ。
「ファストクリエイト」
そう唱え念じると、手元に毛糸玉が出現する。
「おかしいだろがぁ!」
ちなみに俺が使った埃は片手で摘める程度だ。それが掌サイズの毛糸玉になる訳ねえだろ!質量保存の法則どこいった!......まあ、鑑定してみるか。
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糸−1
分類 アイテム
レア度 普通
説明
何が原料かも分からない謎の糸。麻や綿、絹、毛糸など様々な原料の特徴を秘めている。若干痛んでいるが、誤差の範囲。服とかに使っても問題はない。
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もはや毛糸ですら無かったな。色々な繊維が混ざった埃を使ったからこんな糸になったんだろう。あと、ファストクリエイトを使うと品質が下がるって書いてあったから、少し痛んだ糸が出来たんだろう。ところで、これまた別のものに作り変えられないかな。
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選択肢を選んで下さい
・服
・ズボン
・下着
・靴下
・パンツ (女性物)
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なん......だと......?
くっ、早まるな!考えろ!もしここでパンツを作ったらどうなる?おそらく脈絡なしに誰か入ってきて変態の烙印が押される。そうなったら......考えたくもねえ。流石に全生徒から白い目で見られたら流石に辛い。それに、これはテストだ。着心地も確かめなきゃいけない。そうだ。パンツなんて作っても俺は履けない。だからパンツを作る意味はない!よし!
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謎の服−2
分類 アイテム
レア度 地味にレア
説明
なんの繊維から作られたかも分からない服。元よりは結構劣化しているが、それでも高級品と肩を並べる性能を持つ。ただしダサい。
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......よし。無事に欲望を押さえつけられたな。普通はここで負けてパンツを作ってdead endになるのがオチだが、俺は違うのだ!最悪、また作れ......って、何考えてんだ、俺!
で、出来た服ね。確かに灰色一色はダサいな。元が埃だからそれは仕方ねえけど。ふむ、手触りは悪くないな。日本製の服には劣るが、普通に我慢出来る範囲内だ。ちょっと着てみるか。
ということで、俺は今着ていた制服を脱ぐ。季節はまだ夏じゃないけど、制服みたいな動きづらい服は嫌だからな。
......サイズはピッタリだな。特に意識しなかったら、俺の体のサイズになるのかな?これはチェックしておいたほうがいいな。それに着心地もちょっと古くなったシャツ位だな。十分だ。
さて、とりあえずダサい以外は上出来だ。これなら、もう何着か作っていいだろう。スキルの練習にもなるだろうし、作れるだけ作ってみるか。
そして、城の人から夕食の連絡が来たとき、俺は大体10枚位の服を作っていた。サイズとかも任意で決められたし、イメージを変えれば服の形、長袖とか半袖とかにも変えられるという事も分かった。あと、《創造》のレベルが2に上がった。
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「あ、この肉旨え。牛肉か?」
食堂に呼ばれた俺たちは、とりあえず幼馴染み5人で固まって食事を取っていた。
「もぐもぐ、確かに美味しいね。でも、こっちに牛肉ってあるのかな?」
「どうだろな。ほいっと」
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ミノタウロスステーキ
分類 料理
説明
ミノタウロスと呼ばれる魔物の肉から作ったステーキ。脂身は少なく、引き締まっている。見た目は牛肉、匂いは牛肉、味も牛肉。寧ろ牛肉より高級。
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「なん......だと......」
「どうしたんだい?......もしかして」
「なんだ?さっきの肉もしかしてヤバい奴だったのか?俺、全部食っちまったぞ?」
3人とも手を止めて......いや、忍はすでに肉を食い終わってるので、晶と美雪は手を止めて聞く体制に入る。ちなみに百華は耳も傾けず黙々と食っている。
「えっとな......この肉、ミノタウロスだってさ」
「「「え”」」」
おっと、3人とも効果は抜群だ!まあ、フォローはするけど。
「まあ、安心しろって。少なくてもこっちではミノタウロスの方が牛より高級品みたいだぞ?」
「海斗くんが言うなら......いや、でも......」
「詳しく無いけど......ミノタウロスってあれだよね?牛と人を足して2で割ったような奴だったよね?マジでそれなのかい?」
「旨かったが......ミノタウロスって食用なのか......」
3人とも葛藤しているな。まあ、美味いから俺は食うけどね。
「もぐもぐ。普通に美味いし、王女様たちも食ってるから大丈夫だろ。......食わないなら、俺が貰ってやろうか?」
「「遠慮します (するよ)」」
「じゃあ食べちまえよ」
そう言えば、生産系の中に料理って入ってるのかな。そのスキルがあるかもわからないから入ってるか分からないんだよな。おっと、あそこに料理人っぽい人発見!直ちに鑑定する!
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ボーショック・ボーイン
レベル 23
体力 280
魔力 36
筋力 224
敏捷 280
物防 224
魔防 36
スキル 剣術レベル3 料理レベル3
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暴飲暴食が料理人で良いのか。しかも、一応サッと他の人も確認したけどこの人が一番料理スキル高いんだよな。3でこの美味さってことは、俺なら割と早く超えられるかもな。スキルのレベルの上昇速度が上がってるみたいだし。
「そう言えば、明日から訓練だよね。百華は剣、忍くんは鎌だけど私達はどうする?」
美雪が痛い質問をしてくる。武器持っても比類なき雑魚なんだよな、俺。
「僕は、特にいらないんじゃ無いかな。見た限り魔法職みたいだからね」
「杖とかに魔法の威力を高める効果があったら杖にすればいいんじゃね?あと、俺は剣かな。打撃武器なんて使っても傷一つ与えられねえよ」
「んー、多分私も杖にすると思うかな。ところで、海斗くんはあのスキルの効果解った?」
美雪が話を変えて俺の事を聞いてくる。まだ、解ってない事も多いんだよな。
「解ってない事も多いけど、大分使い方はわかったぞ。まだ、埃から服作るくらいしかしてないけど」
「え、なにその服着たくない」
即答かよ。いや、当然だけど。
「いや、試しに着てみたりもしたけど普通に問題無かったぞ?強いて言うならどんなに頑張っても灰色一色ってことだけど」
「うん、絶対に着たくない」
だろうね。
まあ、そんなたわいない会話をしながら、今回の夕食は終わった。明日から訓練か......死ねるな。
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さて、とりあえず、生産系のスキルの確認をするか。城の通路とかを歩いていた人を確認して、色々それっぽいスキルを見つけた。
・錬金術
・鍛治
・裁縫
・工作
・釣り
・魔法付与
とりあえずこんくらい見つけた。釣りは、多分採取スキルの一つだろう。
特に気になったのは魔法付与だ。鑑定によると、どうやら魔力と材料を使い、アイテムに特殊効果を付与するものらしい。要するに、アーティファクトを作る為のスキルらしかった。
俺には魔力が無いが、ファストクリエイトを使えば弱いエンチャント位なら付けれるみたいだった。というかやってみた。紙を使ってエンチャントをしてみたところ、軽量化という効果がついた。もっとも、すでに軽い布の服を更に軽くしたところでいまいち実感は沸かなかったが。
これを使えば、今の俺でも多少はマシな防具とかを作れるかもしれないと考え、色々実験した後、明日の訓練のために眠りについた。