5話 魔導機遺跡の守護者
「成る程な。確かに、魔物はいないな」
「……魔物はね」
ちょっと道中色々あったが、無事に遺跡に入った俺たち (フィオーリは忙しいから帰った)は、現在手厚い歓迎を受けていた。魔導機械の。
ちなみに、アダマースに聞いた話によると魔導機械とは古代に量産されていた魔法と科学が両立された機械の事のようである。基本的に魔石を動力源とし、そのエネルギーを使い物理機構を動かす……というものらしい。現在は研究はされているが簡単な物の修理が精一杯で、一から作るのはほぼ不可能のようだ。
かく言う俺も、話を聞いてやってみようと思ったができなかった。まさかの創造非対応で結構驚いた。
まあ、そんな高度な技術を使って作られた魔導機械は、丁度今俺達を葬ろうとしてきている。
「ガガガ!エマージェンシー!エマージェンシー!」
「ピー!シンニュウシャ コロスベシ ジヒハナイ!」
「ヤローブッコロシタラァァー!」
「フンサイ!ギョクサイ!ダイカッサイ!」
「ワレガジキジキニサバキヲアタエル シヌガヨイ」
現在襲ってきているのは五体、近接戦闘型三体に遠隔戦闘型二体だ。なんか変なプログラムが組まれているようだが。さらに、アイテム扱いなのか鑑定してもステータスが分からなかった。
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接近型機動兵器Dー42
分類 魔導機械
武装 携帯用小型ドリル ×2
説明
接近戦用に作られた魔導機械。小型ゆえ取り回しが良いが、破壊力は大型のそれには大きく劣る。なお、装備しているドリルは土木工事にも使用可能。
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遠隔型移動砲台Kー39
分類 魔導機械
武装 魔導小銃 ×2
説明
遠距離戦の為に製作された魔導機械。両手のライフルは高精度、高威力だが連射が出来ない。機体が脆いため、近接戦闘には耐えられない。
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結構、物騒なロボットである。これが、入って直ぐの広場に配置されていたのだ。並みの人が入ったら撃ち抜かれて、ドリルで貫かれてアウトだろう。見た感じ大分早いし。
「遺跡ねぇ。どっちかって言うと研究所だと思うんだけど」
俺は、襲って来た機械をサクッと解体して呟き、周りを見る。
広場の先には多くの扉が配置されている廊下が繋がっており、その中から迎撃用だと思われる機械が出てきている。その開いた扉の向こうには、倉庫と思われる空間が姿を見せており、起動していない機械も見える。
「まあ、行けば解るか。行くぞ、フィー……」
ビゴーン!
俺がフィールに声を掛けようとした時、とっても不穏で物騒な音が鳴る。すると、ある一つのドアから一つ、若干大きめの魔導機械が姿を現す。
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中型遠近両用決戦兵器 《Vー37564》
分類 魔導機械
武装
魔導小銃 ×2 戦闘用大型ドリル ×2
対装甲用パイルバンカー ×2
説明
戦闘用に作られた中型機械。ライフルによる遠距離攻撃、ドリルによる近接攻撃と隙がない。さらに一つにつき3発までしか装填出来ないが、高火力のパイルバンカーは相手の装甲を容易く貫く。
ちなみにミスリル製。
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「イッテイスウノ キカイノ ハソンヲ カクニン シンニュウシャノカノウセイ タカシ コレヨリ シセツニイル ゼンセイメイタイノ ニンショウヲ カクニンイタシマス」
出て来た無駄に強いロボットはそう言いながらこっちに接近してくる。恐らく、登録されてない人の場合は攻撃とか……そんな感じだろうな。
さっきまでの機械は描写の必要すらない位瞬殺出来てたけど……此奴は、そう言う訳にもいかなさそうだな。
「フィール。此奴はちょっと面倒くさい。ぶっ壊すぞ」
「……解った。私からやっていい?」
そう言うと、フィールは魔法をろくに詠唱せずに魔法を発動させる。
「飲み込め 『ライトニング・ウェイブ』」
フィールが今日、俺の「機械って水と電気に弱いんだけど……こっちのもそうなのかな?」という些細な発言を元に作った魔法だ。帯電した水流を相手にぶつけるという範囲攻撃な上に行動を封じれる優秀な魔法だ。しかし、
「テキセイコウドウヲ カクニン ゼンポウノ フタリヲ テキトハンダン コレヨリ マッサツスル」
Vー37564には全く効果が無かった。よくよく考えれば、機械に電気や水が効くのは地球の機械が電気で動いており、それが乱れるからであり魔力で動いている機械には全く関係無かった。
ついでに、それを敵対行動ととったVー37564は戦闘態勢に入り、まずライフルでフィールを狙う。動力源は魔石だが弾丸は実弾であり、物防が低いフィールはひとたまりもない。
まあ、当たればだけどな。
「……同時に撃っても、無駄」
戦闘慣れしたフィールが、そんなもの当たる訳が無い。縮地すら使わず、必要最低限の動きで避ける。
パァン!パァン!パァン!パァン!パァン!
たとえ、テンポ良く連射したとしても、狙いが正確なままではフィールに届く事は無い。少しズラすだけで回避出来てしまうのだから。
そして、弾丸を物ともせずフィールが詠唱を始める。
「其は全てを焦がす剣 この世の全てを照らし 生み出す光……」
「其は唯一無二の絶対なる光 決して届かない遥かなる光……」
「それは太陽 其の力 今ここに剣と成れ その名は 『ソル・エスパーダ』」
その詠唱と共に、フィールの手に紅く輝く焔の剣が姿を現わす。
ーーソル・エスパーダ。
火魔法レベル9の魔法にして、火魔法の単発威力が最も高い魔法だ。レベル10のは範囲魔法ゆえ威力はこれに劣る。
全てを焼き尽くす炎の剣で相手を一切の慈悲なく切り裂く魔法。そんなものを金属の機械が受けたら……。まあ、言わなくても解るだろう。
フィールはその剣を手にV-37564に跳躍し、その片腕を溶断する。これで、腕に装備されていたドリル一個がお亡くなりになった。
しかし、V-37564も黙ってはいない。腕を切り落とされた直後、肩についているパイルバンカーをフィールめがけてぶっ放す。
「無駄」
だが、幾ら威力が高くても、当たらなければ意味が無い。ちょっと弾がデカくなったところで狙いが変わってなければ回避は余裕なのだ。
3発ずつ、計6発装填されていたとしても当たらないし、そもそも全部撃つまでフィールが待っている筈も無い。
つまりは、フィールが普通に突っ込んで、普通に剣振り回して、普通にフィニッシュとなった。
呆気なく沈んだVー37564を見て俺は呟く。
「やっぱ機械も使う奴は選ぶなぁ」
と。まあ、この世界に機械を使える奴がどれほどいるか……まあ、殆どいないだろうけど。
と、そこで魔法を解除したフィールがこっちに歩いてくる。魔力の使い過ぎで大分ぐったりしている。
「お疲れ。だが、あそこまでする必要あったか?」
「……無かった。硬そうに見えたから、使ったんだけど」
ミスリルが全然硬くないってか。笑えない話だな。いや、多分俺も素手で砕けるけど。
と、普段なら収納の腕輪から魔晶石を取り出して回復するのだが、何故かそうせず俺に手を伸ばしてくる。
「……抱っこしろと?」
「うん。疲れたから」
全く悪びれる様子もなく、さも当然の様に言ってくる。別にしてもいいのだが、今は戦闘の可能性のある地帯にいるから、隙は作りたくない。
だが、フィールがジト目になりながら見てくるので仕方なくおんぶで妥協して貰った。それでも、大分戦闘はし辛いが。
「で、フィールはこの施設のことはどう思う?」
魔導機械を蹴り飛ばしながら施設内を見て回り、フィールに尋ねる。
「……大体が倉庫か機材置き場だったけど、誰か……機械じゃない人がいじった跡があった。多分、この施設には誰かいる」
「誰か、ね。人らしい気配も魔物らしい気配も感じなくて、その上この面倒くさいロボットを製造出来る誰か。……確かに、普通の奴らじゃどうしようも無さそうだな」
俺は人のいた痕跡とかはまだ判別出来ないが、薄々そんな予感はしていた。
少し考えれば解ることだ。魔石で動いてる機械が、古代文明の時代から動き続けている筈が無いと。大気から魔力を吸収出来れば別かも知れないが、これだけの機械がいるとなるとそれも無理だ。つまり、誰かが魔石などを補充している筈なのだ。
ちなみに、これだけといったが俺が蹴り壊した機械の数は優に30を超える。中型レベルの機械はあれ以降出てきておらず、完全にイージーモードとなっている。
だが、そんな無双している俺たちにも、大きな弱点があった。さっき施設を見て回ったと言ったが、幾つか足りない所があるのだ。
倉庫や資材置き場はあるのだが、肝心の、製作所が無い。設計図なども何処にも無い。それに、その肝心の誰かがいた部屋も無い。要するに、どこかに隠し部屋がある可能性が高い。
詰まる所、気配とかで敵などを判断していた俺たちにとって、隠し部屋を見つけるのは至難の技という事だった。恐らく、隠し部屋の先は気配遮断の何かでもあるのだろう。
「はあ、どうやって探す?」
「……シラミつぶしで行くしかないと思う」
フィールに助けを求めても見たが、結局は一番やりたくない手段しか出てこない。
「……やるか。果てしなく面倒くさいけど」
「……頑張って。私は眠いから、寝させてもらう」
結果、眠ってしまったフィールをおんぶして、起こさないようにロボットを撃退しながら施設内全てをシラミつぶしする事になった。
もっとも、そんな探し方で大丈夫だったかは……言わずもがな。
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「フィールー。起きてくれー」
「……むにゃむにゃ……」
俺一人じゃどうしようも無かった為ずっと寝ていたフィールを起こし、対策を話そうと思うのだが……全然起きない。
「フィール。早く起きてくれ」
「……馬鹿め……それは……」
「フィール」
「……ん?あ、おはよう。カイト」
「ようやくか。で、見つからないんだけどどうしたらいいんだ?これ」
なんとか起きてくれたので早速アイデアを求める。マジで俺だけじゃお手上げなのだ。
「……しょうがない。奥の手を使うから、静かにしてて。あと、動かないで」
「は?」
フィールはそう言うと収納の腕輪から魔晶石を取り出し魔力を補充、俺からぴょんと飛び降りる。そして、魔法名だけボソッと呟く。
「『ソナー』」
その魔法を発動した瞬間、さほど音量は高くないが、甲高い耳障りな音が辺りに響く。
キィィィイイイイイイイン!
「っ……」
若干辛いが、動かないでとも言われているのでひたすら我慢し続ける。しかし、その音は止まることを知らないかのように鳴り続ける。
結果として、鳴り終わったのは五分後の事だった。そして、その音を止めたフィールはいきなり俺の手を掴み、歩き出す。何処に向かってるかは判らない。
「え?ちょっ……」
「いいから。こっち」
そう言いながら俺を連れ歩き、廊下の途中の所で止まる。そこには、ただ何の変哲も無い壁があるだけだ。
「……ここ」
「は?」
「だから、ここにある。ぶち抜いて」
なんで場所が判った?とか色々聞きたいが、真偽を確かめるために取り敢えずぶち抜く。こんなの殴れば十分だ。
ドゴォォオン!
「……うそん」
ぶち抜いた先には下へ続く階段があった。フィールはしっかりそれを探知して、道案内をしていたようだ。
何故判ったのかをフィールに聞いてみたが、当然あの魔法の効果だ。風魔法で空気を振動させ、音を作り出す。そしてその音を反響させ、違和感のあるところを探し当てる。そういう魔法だったようだ。動くなとか言ってたのはそれが乱れるからのようである。
「……じゃあ、行こ?」
「あ、ああ。行くか!」
そう言って、俺たちは階段の奥へと降りていった。
多分、これより下の場所は誰にも知られてないはずだから、慎重に行かないとな。
そして、何事もなく階段を下り終えると、広く、一つの扉以外には何もない、異様な空間に到着した。
「……この空間は何のためにあるんだ?扉一つならある意味無いと思うんだけど」
俺が疑問に思い、フィールに聞いてみる。
「……なんとなく?」
「そんな訳あるか。まともな理由がある筈なんだが」
「ーーここまで来た侵入者を対応する為のスペースでございます」
「そうそう、そんなまともな理由が……って、え?」
さらっと会話に混ざってきた第三者。その者は、唯一の扉の前に寄りかかっている。
「……あんたが、この施設の管理人か?」
俺は、目の前にいる人物に目を向ける。
白髪のロングヘア、紅の瞳、そして白を基調としたメイド服。明らかに研究者の、いや、戦う者の格好ではない。
しかし、その両手には大型の散弾銃があり、戦闘態勢は万端のようだ。
「ええ。私がこの施設の管理人、ビアンカと申します。もっとも、名乗るのはこれが初めてですけどね。ここまで来たのは、貴方達が初めてですから」
「へえ。……で、無断で入ってきた俺たちは、排除の対象って訳か」
俺がそう聞くと、ビアンカと尋ねる女性は散弾銃をこちらに向けて言う。
「まあ、その通りですね。……では、戦闘と行きましょうか」
その声と共に、戦闘の火蓋は切って落とされた。
あ、その前に鑑定しとこっと。
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ビアンカ
種族 ホムンクルス
レベル102
体力 1060
魔力 1696
筋力 1272
敏捷 1060
物防 1272
魔防 1060
スキル
身体強化レベル7 短剣術レベル7
鍛冶レベル7 工作レベル6
魔法付与レベル6
備考
色々特殊
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……なんて突っ込めばいいんだろうなぁ。




