19話 反逆の試練、そして報酬と……
最近短かったですからね。頑張りましたよ、ええ。本当は2話に分けようと思ってたところを、1話に纏めちゃいましたよ。と言うわけでどうぞ。
正直、俺は結構慌ててる。まさか、自分のステータスに応じて敵が強くなるとは微塵も思っていなかったからだ。
今からステータスを弄って減らしたとしても相手がそれに応じて減るとは限らないし、そんな隙は作りたくない。
俺はまだ殺り合えるかも知れないが、問題はフィールだ。明らかに戦闘力が違いすぎる。全力の魔法なら大分通るとは思うけど、その後の反撃を考えると止めまで温存して貰わないと厳しいかも知れない。
取り敢えず、フィールにはサポートをお願いし、俺は身体強化をフルで発動させる。身体強化のレベルは5、つまり最大1.5倍身体能力を上昇させられる。それでも、フェニキシアにはまだステータスは及ばない。
だが、それでもやるしか無い。この空間に入ってしまった以上、もう逃げ場は無い。
俺は縮地を発動させ、そのままの勢いで翼に斬りかかる。脳筋に通じなかったから、通じるかは怪しかったが。
「キエェエエエエ!!」
結果として、普通に通った。あれは縮地を持っていて、その特徴を知っていたからこそ回避できただけなのかもしれないな。
フェニキシアは浅い傷を負った翼を羽ばたかせ、空を飛ぶ。炎を纏いながら飛ぶその姿は芸術のようだが、それに見惚れる余裕は無い。
「キェェェェェエエエエ!!!!」
フェニキシアが空で大きく翼を広げた瞬間、その翼から無数の火球が俺のいる所に向けて放たれる。ざっと見ても100は超えているだろう。
「魔力を隔てる光の壁よ 我が前に顕現し 迫る破壊の渦より守れ 『マジックシールド』!」
俺は、その範囲内にフィールが入ってないことを確認し、自分のいる所に魔法を遮断する結界を張る。空間魔法レベル5で使えるようになる魔法だ。
ズガガガガガガガガガン!!!
と恐ろしい音が鳴り響く。もしも貼り損ねていたら今頃黒焦げだろう。
「あ、危ねえ」
と呟くが、危機はまだ去っていない。
空にいるフェニキシアは、火球での攻撃が効かないと判断したのか、自身の前にファイアウォールを張り、それに飛び込んで全身を炎に包みながらこっちに突っ込んでくる。
俺は、それをギリギリまで引きつけて縮地で回避したのだが、軌道を変えてそのまま避けた先に突っ込んでくる。縮地のクールタイムのせいで、回避しきれない。
ズドォン!!
と、重たい音を立てながら、俺の体を吹き飛ばす。その時に、俺以外には聞こえなかっただろうが、メシメシって音やバキッて音が聞こえた以上、多分骨は折れただろう。
「がっ……」
さらに、そのまま吹き飛んだ俺に向けて、先程の無数の火球を放つ。とてもじゃ無いが、今の状態では耐えられない。
「『ダイアモンドダスト』」
俺の前にいるフェニキシア、その後ろから声が響く。それと同時に、俺を燃やし尽くそうと放たれた火球を、フェニキシアごと凍らせようと魔法が放たれる。
極小の光の粒が辺りに漂い、その範囲内にある火球を一つ残らず消失させていく。そして、その範囲内にいたフェニキシアも凍りつき始める……が、
「ギェェエエエエエエエエン!!!」
と、甲高い咆哮を上げ、より一層紅く輝く炎をその身に纏う。全てを凍てつかせる白銀の輝きと、全てを燃やし尽くす紅の輝きが激突する。
今の所フィールが優勢だが、いつまでもそうとは限らない。そのため、俺はアイテムボックスからポーションを取り出し、体を癒すために一気に飲み干す。
途轍もなく不味いが、今はそんなことはどうでも良い。兎に角、目の前の相手にだけ目を向ける。
フェニキシアは、このままでは押し切られると判断したのか、先程より一層炎の威力を高めている。それに伴い、フィールは徐々に押し負けてきてしまっている。
「十分だ、フィール!一旦引いて魔力を補充しておいてくれ!」
「……分かった」
その返事とともに、ダイアモンドダストの輝きがどんどん失われていき、そして遂には炎に飲まれた。しかし、既にフィールは撤退した後だ。
むしろ、フィールを焼き尽くすために、フェニキシアは自ら纏っていた炎を飛ばしてしまった。そのタイミングを見逃さず、縮地で突っ込む。
「ほっはっふっ!」
まず飛び込みざまに一回、振り向いて一回、続けて一回。フェニキシアの右翼に向けて計三回の斬撃を浴びせる。
「おらぁあああ!?」
そして、最後にもう一発浴びせようとしたところで、フェニキシアが脚で俺を掴み、そのまま飛び上がる。フェニキシアの鋭い爪が俺の体に突き刺さる。
「グァアアア!!!」
さらに、そのままフェニキシアは体に炎を纏い、俺を燃やし尽くそうとする。火耐性を持っていようとも、熱いものは熱いし、体の中が焼かれる様な感覚はとても耐えられるようなものじゃ無い。
ゴォォォォゥン!
しかし、その地獄は突然終わりを迎える。フェニキシアが俺の体を突然離したのだ。落下死するほど高いようなところでも無く、普通に落下する。
落下した時、俺はフェニキシアが脚を離した理由を悟った。フェニキシアに向けて、漆黒のレーザーが放たれていたのだ。命中していた右翼の中心には大きな穴が開き、飛行を不安定な物にしていた。
その破壊の奔流の出所を見れば、そこには透明マントを脱ぎ捨て、部分龍化をして立っているフィールの姿があった。口からは黒い煙を吐いており、ブレスを使ったのだろうと想像できる。
しかし、翼を貫かれようとも、フェニキシアは止まらない。むしろ、攻撃が苛烈化する。
「キェェェエエエエエエエエエエエエ!!!」
フェニキシアが翼を広げ、咆哮する。その瞬間、床が紅く輝き始める。
俺とフィールは大きく後ろに飛び退く。そして、その目の前にまるで火山が噴火したかのような巨大な火柱が姿を現わす。
そこまでならまだよかった。しかし、その直後、俺たちは大いに驚く事になった。
その巨大な火柱が、次第に姿を変えていく。収束し、一つの火球を作り上げる。その炎は、色を変え紅から蒼に変わっていた。
そして、その火球をフェニキシアが取り込んだ。それに伴い、フェニキシアの色も紅から蒼に染まっていく。
これまでに負わせた傷も、炎が形を取り戻すが如く全て消えて行く。その姿は、もはや神々しい域にまで達している。
そして、紅から一転、蒼の焔を纏ったフェニキシアは、今までで最も猛々しい咆哮を上げる。
「ギェェェエエエエエエエエン!!!!」
その直後、フェニキシアが遥か高くに舞い上がる。蒼い残光を残しながら、空を飛び回る。
「……カイト!あれを引き摺り下ろして!」
「辛いことを……まあ、考えがあるんだろ?やってやるよ!」
フィールの頼みに応じて、俺も飛行スキルを発動させ、空へ舞い上がる。
だが、そこで俺はある事に気づく。フェニキシアは、ただ闇雲に飛んでいるのでは無かった。フェニキシアが残した蒼い残光は、まだ消えてはいない。そして、それらは魔法陣の一部を現していたのだ。
恐らく、狙いは翼を貫いたフィール。その証拠に、空を飛び接近している俺には目もくれない。
「だったら、首切ってでも止めてやるよ!」
しかし、ここは空中。縮地が使えないため高速飛行しているフェニキシアに攻撃するのは普通なら難しい。
しかし、あくまでフェニキシアは魔法陣を描いていたのだ。普通に飛ぶのと違い、軌道を特定するのは容易い。
「おらぁ!」
だが、フェニキシアもそうやすやすとは落とされない。魔法陣を描くのを止め、俺を撃墜しに掛かる。
フィールが何をしようとしているのかは分からないが、今は兎に角こいつを叩き落とすだけだ。逆に落とされる訳にはいかない。
その意思の元に、俺はフェニキシアに斬りかかる。片手に剣を構え、もう片手にはあらかじめ作っておいた物を構えながら。
「ふんっ!……貰ったあ!」
まず振り抜いた剣はそのままあっさりと回避された。しかし、今回の本命はそれではない、俺が左手に構えていた道具……。フックショットだ。
だが、フックと言ったがそんなに生易しいものではない。なにせ、この道具は引っ掛けて使用するのでは無く、突き刺して相手に取り付くための道具だからだ。どっちかっていうと先端は銛に似ている。
先端の鎖付きの銛には暴風の魔石が内蔵されており、魔力を込めることで発射されて、相手に突き刺さる。
あとは、それを辿って相手に接近するだけである。ちなみに、フィールに渡した収納の腕輪と同じギミックが取り入れられており、鎖はそこに入っている。それゆえ、100m位のところまで届くくらい鎖は長い。
また、頑丈さと軽さを兼ね備えるために金属部分はヒヒイロカネで出来ており、生半可な方法では傷すらつけられない。
その道具により、フェニキシアが距離を置こうとしても、振り払おうとしても、銛が刺さっている限り俺はしがみついてられる。
全力で羽ばたかれようとも、蒼い焔に体を焼かれようとも、俺はひたすら翼を切り続ける。
「ガハッ……いい加減……堕ちろ!」
その一声とともに、全身全霊、最後の力を込めた一撃を放つ。その一撃は、遂にフェニキシアの右翼を切り落とした。
「キェエエエ!!!?」
そして、完全にバランスを崩し、魔力のコントロールがうまく出来なくなったフェニキシアは錐揉み回転をしながら漆黒の床に向けて落下する。
そして、その下からは響くような声が聞こえる。
「……其は全てを凍てつかす刃 ありとあらゆる物を固め 刈り取る刃……」
もう、俺の身体強化は切れている。意識も、後1分もすれば失われるだろう。
「抗う術は無く 切られしものは 崩れ落ちる……」
フィールの両手には、蒼白の魔力が集まって、何かの形を取ろうとしている。しかし、それが何なのかは分からない。
「其は絶対零度の刃 その名は……」
その魔力に怯えたのか、フェニキシアが飛べないながらも全力で逃げようと暴れまわる。しかし、その時には既にフィールの魔法は完成していた。
「……『クリスタル・ファルクス』!」
その一声とともに、蒼白の魔力は氷晶の大鎌へと姿を変えた。その鎌の周りには、白銀の輝きが漂っている。周りでダイアモンドダストが発生する程の冷気を放つ鎌だ。そして、フィールはその大鎌を構え、フェニキシアに向けて縮地で接近しながら引き裂く。
「ギェェェエエエエエェェェェ……」
フィールがフェニキシアを切った瞬間、切られた所は焔を物ともせず凍りつく。そして、いともやすやすとその首を、左翼諸共切り落とした。
俺がフィールを見た時は、既にフィールは鎌を手にしていなかった。それに、フィールから殆ど感じ取る事も出来なかった。あの一撃に、あの一瞬のために持っていた魔力の全てを使い尽くしたのだ。
首を跳ね飛ばされ、弱々しく倒れこむフェニキシア。その体は一瞬燃え上がり、その次の瞬間には霧のように霧散し、その姿を消した。
それを見届け、俺が安堵して心が緩んだ時、急に意識が遠のき始める。フェニキシアにしがみついていた時受けたダメージは生半可なものでは無かったのだ。
体が「無理すんな!死ぬぞ!」と語りかけるが如く、俺を気絶させようとする。
流石に試練が終わったかどうかも分からないのに、気絶するわけにもいかないと、全力で立とうとしたのだが、
「……カイトは、無理しないで。そこで休んでて」
と、フィールに言われた瞬間、俺は意識を強制的に手放させられた。
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声が響いていた。意識ははっきりとしているのに、何も見えない空間に俺はいた。透き通るような、聞いているだけで心地よくなるような不思議な声だけが、その空間に響いていた。
試練の……おめでとう。その報酬として……の力を君に……。
ところどころ聞き取れないところがあるが、おとなしく話を聞く。
……の力は、人の限界を……力。でも、忘れないで。……は、あくまで限界を高めるだけ。努力を怠れば、その限界には………。
聞き取れないところが多くて少し苛立ってきたが、まだ静かに聞いておく。
君が、……にこの力を……のかは、分からない。だけど私は……。この力が、……事に使われる事を。さらに……ならば、……の本当の望み、……………………の恐怖より、この世界を……………………。
凄い大事な部分が聞こえなかったような気がしたが、諦めて残りの話を聞く。
この世界と、今ここに生きている君よ、どうか……。
ここで、頭の中に響いていた声は途絶えた。
その話が終わった後、俺の意識が何処かに引っ張られるような感覚がする。とても強い力ゆえ、逆らうことすらできず、意識は闇へ沈んだ。
「……ん?」
俺は体にのしかかる重たい感覚で目を覚ました。何故か、俺はベッドのようなところで寝ており、その掛かってるブランケットをどかす。
「すー……すー……」
案の定と言うかなんと言うか、そこにはフィールが、眠っていた。と、ブランケットをどかしたことで気がついたのだが、俺の怪我が綺麗サッパリ消えていた。多分フィールが魔法でどうにかしてくれたのだろう。その本人は俺の上で寝ているが。
フィールを起こさないように少しずらし、上半身を起こして辺りを見回す。壁、床、天井は洞窟だが、今俺が寝ているベッド、調理器具と竃、机と椅子のようなものが置いてあり、何者かが居住スペースとして利用していた物だろう。
机の上には何か紙のようなものが置いてあるように見え、それを見に行きたいのだが、フィールを起こすわけにもいかない。そう思った為に、フィールを優しく、そして少しずつずらしていく……が。
「……ん、目が覚めた?」
結局起こしてしまった。まあ、起きたのならと起きてから色々溜まっていた質問をしに掛かる。
「ああ。で、フィール。ここは何処だ?」
「……よくわからないけど、多分試練の製作者の部屋。場所的には、あの石碑の裏側」
「……多分じゃなくて、確定じゃないか?それ」
「……そうとも言う」
そして、間髪入れずに次の質問に入る。
「……で、試練はどうなったんだ?」
「カイトを気絶させてから……2秒後位に魔法陣が出てきて、カイト持ってそこに入ったら、この部屋に出てきて、それで終わり」
「……それ、俺を気絶させた意味あったか?」
「……死にそうだったから、無理させないようにって思ったんだけど……全く意味なかった」
「そっすか」
なんか俺が無意味に気絶させられたって思うと、若干悔しいけど、まあ、良いか。
「……で、試練クリアしたけど……結果的に何が手に入ったんだ?人の限界を超える力とか聞いてたけど……」
「……自分のステータス、見てみて」
そう言われ、自分のステータスを確認する。
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黒野 海斗
種族 人間
レベル91
体力 4187
魔力 4187
筋力 4187 + 200
敏捷 4187 + 500
物防 4187 + 800
魔防 4187 + 500
増加量 19425
スキル
剣術レベル7 縮地レベル5 身体強化レベル5
飛行レベル5 隠密レベル4 空間魔法レベル5
龍魔法レベル4 火耐性レベル3
風耐性レベル3 氷耐性レベル3
鑑定レベル11 隠蔽レベル11
《創造》レベル11
《覚醒》レベル1
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《覚醒》
分類 スキル
説明
このスキルは、普通の方法ではスキルレベルを上げることは出来ない。
所有者のスキルレベルの限界値を、このスキルのスキルレベルの分だけ上昇させる。
さらに、所有者に目覚めて無い力が秘められていた時、それを揺さぶり起こす。
ついでに、1日1回、10分の間だけ、所有している全てのスキルのスキルレベルを3上昇させる『メガ・ブースト』を使用可能にする。ただし、使用後二時間の間結構弱体化する上、このスキルを使用してスキルレベルを上げた場合でも、限界値を超えることは出来ない。
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……おおう。いつの間にこんなもんが。って、考えるまでもなく気絶してる間か。それにしても、人の限界を超える、ね。そのままだな。確かに、限界を超える為の能力だ。
でも、新しい能力が開花とかはしてくれてないか。まあ、当たり前だ。多分、ここまで俺を導いてくれた創造が、その立ち位置に当たる奴だからな。
「……あと。それよりももっと大事なものが」
「もっと大事なもの……?」
そう言いながら、フィールがあるものを持ってくる。
試練の報酬よりも、もっと大事な物ってなんだよと思いつつ、それを見た時、俺は思った。
……ああ、確かにこれは重要だ。むしろ、これを待ってたんだ。
それは、1枚の地図だった。普通の地図である。1つの大陸と、その近辺の海域を示した。
その地図上の、大陸の南側の海の上に1つの印が付けられていたのだ。もはや、これが何を意味しているのかは言わなくてもわかるだろう。
「……これって、まさか!」
「……うん、多分だけど、この島の場所」
その声を聞き、俺はベッドから飛び上がる。
「いよっしゃぁああ!!出れる!この島から、ようやく!」
「……勿論、私も付いてくから。どこまでも」
「ああ!いや、むしろ意地でも連れてく!」
「……嬉しい」
夢幻列島に来て僅か1ヶ月。
初めの1週間は、草と木の実だけで飢えを凌ぎ。
クラウディアを毒殺しレベルを上げ。
蜘蛛や兎や豚に追い回され。
そして、フィールと出会い。
その1週間後には、島の主と戦う事になった。
それから、たったの1週間で難関な試練をクリアして。
ようやく、この島から出る術を手に入れたのだった。
これで、第1章完結の予定です!予定というのは、幼馴染みサイドの話を第1章の最後に入れるか、第2章の初めに入れるかで悩んでいるからなので……。次投稿する事になる本編は第2章になります。
これからも、「生産スキルを甘く見るなよ?」をよろしくお願いします!




