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生産スキルを甘く見るなよ?  作者: グラウンド・オーシャン
第1章 召喚and夢幻列島編
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14話 弱い、臭い、穢らわしい

 空を飛び、新たな島に降り立った俺たち。といっても、特に光景に違いは無いが。


「もぐもぐ、来てみたはいいけど、特に何も無いな。もぐもぐ」


「もぐもぐ、確かに。もぐもぐ」


 ちょっと小腹が空いていたのでドラゴンジャーキー (海斗作)を齧っているため、行儀は悪いが野生児と化している2人は全く気にしない。


「確か、あの石碑って島の真ん中にあったんだよな?もぐもぐ」


「……うん。もぐもぐごっくん」


 石碑の場所は、フィールの記憶によると、丁度島の中心にあるという話を飛んでいる最中に聞いていた。だから、この島の中心にもなんかあるんじゃね?という考えに至った。


 と言うことで、取り敢えず島の真ん中に行く事にはなっている。ただし、魔力を温存したり、目立たないようにする為に基本的に低空飛行して行くつもりだ。歩いてたら日が暮れるからな。まあ、食べ物はあるし、どうにかはなると思うけどね。


 そんな感じで、俺たちは移動を開始する。今回は2人にとって新天地なので探索は念入りにする必要があるだろう。


 と言っても、今回は俺があの1週間の内に手にした力の1つを使わせて貰うけどな。


 その名も、「サーチ」。まあ、空間魔法だ。消費した魔力に応じて、視界を飛ばして三人称視点で見る事が出来る魔法だ。


 だけど、この魔法の真価はそこじゃ無い。燃費はかなり悪いけど、多くの魔力を使用することで、視点の数を増やすことが出来る。自分の右側と左側の光景を同時に見たりする事も出来る。


 今回は、これを使って捜索をしようと思う。今回使う視点は、捜索用の三人称視点 (自分から30m以内)といざという時の為の一人称視点の2つだ。最高3視点までは出来るけど、そうすると動くのも辛いから今回は2つで行こうと思う。


「……何か見つかった?」


 捜索を始めてから数10分後、フィールが突然聞いてくる。何かを確かめるような言い方だ。


「いや、何も。……だけど、それが不気味だな。全く生き物の気配を感じないし、視界にも映らない。なんか、嵐の前の静けさっていうか、そんな感じだな」


「……やっぱり」


 フィールも、同じ感覚を感じていたようだ。


 この近くには、全くと言っていいほど気配を感じられない。この島の魔物は強力な奴が多いゆえ、大体いつも何かしらの気配や魔力は感じるのだが……今はそれすらも感じられない。


「まあ、そんな事もあるかもな。ドラゴンの縄張りで、その張本人が遠出してるとかそんな感じだろ。もぐもぐ」


 そんな事を言いながら、俺はドラゴンジャーキー2本目を取り出し、齧り始める。サーチを維持するには結構集中する必要がある。野球選手がガムを噛んで集中力を高めるのと同じように、俺はジャーキーを噛んで集中力を高めるのだ。


 そして、捜索を再開して間も無く、空洞らしき物を発見する。島の中心には至っては無さそうだが、何かありそうなので取り敢えず入ってみようとする。が、


「……なあ、フィール。この感じ……どう思う?」


「……臭いし、穢れた魔力に満ち溢れてる。……多分、アンデッドが中にいる」


「あー……アンデッドかぁ……」


 アンデッド。死体に魔力などが蓄積し、生を求め、生きている生物を襲う存在。基本として体に闇属性の魔力を持ち、光属性を禁忌する忌まわしい存在だ。


 フィールは魔法特化型ゆえ、魔力には俺より敏感でおり、そういうのは俺より判別がしやすいのだ。洞窟の奥の方から少し感じ取れる程度なので、さっきまで気づかなかったのは仕方ないだろう。

 

「……だけど、問題なのは、"これが何のアンデッドなのか"、ということ」


 そう。普通、アンデッドは人間などの生に貪欲で汚い生物がよく成るものなのだ。しかし、この島には人間はいない。もしかしたら、俺と同じような人間が死んでアンデッド化したのかも知れないが、それはまず無いだろう。


 つまり、このアンデッドは人間ではない、魔物がアンデッド化したものだと思われる。


 人間のアンデッドは脆い体で本能に身を任せてくるだけだから強く無いらしい。作品によっては再生能力を持ってたりするが、せいぜいその程度だというのが日本でのゲームやアニメの主流である。


 しかし、魔物のアンデッドは違う。本能に身を任せてくるのは同じだけど、それは元から同じだから、単純にリミッターが外れてバーサーカー化した魔物を相手にするのと同じようなものだ。


 だから、正直洞窟に入るのを悩んでいる。どうせ、入って待ってるのが何だかは解ってるし……。


 しかし、フィールがそこで提案する。


「……悩んでるなら、私が殺っていい?」


 と。


 非常に物騒な彼女である。さらに、理由を聞いてみたら、

 

「……アンデッドは光属性に弱いから、使える私にとっては有利な相手。それに、私もどれだけ強くなったか試したいし」


 と、申した。確かに、最近は魔物が出てきたら2人で瞬殺するようにしていたから、力試し的なことはしてこなかった。本当はそんな事は安全が確保されてない限りしないほうがいいのだが、自分の強さを知っておくことも重要だろう。


「解った。でも、もし危険だって判断したら俺も参戦するからな」


「……うん。じゃあ、行こ」


 まあ、実の所フィールにもある程度クリスタルは渡しておいてあるんだよな。と言っても、フィールが「……取り敢えず、魔力のだけでいい」って言うから、それしか渡して無いけど。確か1000位上がってるんだったかな。


 俺たちは、異臭のする空洞の中に足を踏み入れる。進めば進むほど、物が腐った匂いが強くなっていく。ちなみに、明かりはフィールの魔法で確保して貰ってる。


 そして、遂にその異臭の元が姿を現した。


 巨大な体、腐り落ちた翼、剥がれ落ちた鱗。咆哮を上げているようだが、声帯まで腐り落ちているらしく声にはならない。


 そう、アンデッドモンスターの中でも最強格、ドラゴンゾンビさんだ!


 だが、それを見た俺たちの反応は、


「やっぱこいつか……つーか臭い」


「……さっさと倒して先行こ?臭いから」


 と、全く緊張感が無かった。正直、見た感じ元になってるのはレッドドラゴン、火属性の下位のドラゴンだからリミッターが外れたところで特に問題無いんだよな。


「浄化の風よ 我らを包みて 傷を癒せ 『ヒールウィンド』」


 ちなみに、この魔法はフィールオリジナルの魔法である。特に意味は無いが。


 フィールから放たれた癒しの風は、ドラゴンゾンビに当たるや否やその部位を崩壊させていく。闇属性の塊のようなアンデッドにとって、光属性はたとえ回復魔法であろうと牙を剥く。


 たとえアンデッドであろうと、本能は残ったままだ。要するに、自らを滅ぼそうとするフィールを殺そうと、ドラゴンゾンビは突進する。


「『ファイアウォール』『チェンジ』」

 

 だが、そんなものでどうにか出来るフィールではない。レベル2で発動出来るファイアウォールの詠唱を限界まで減らした上で、虹の特殊効果でその属性を光へと変える。


 そして、それに頭から突っ込んだドラゴンゾンビがどうなったかは……言うまでも無いだろう。大体のアンデッドが頭を吹き飛ばせば倒せるように、頭が崩壊したドラゴンゾンビもまた動かなくなった。

 

「……弱い」


「いや、堂々と弱点ついたらそうなるだろ」


 あっさりと撃沈したドラゴンゾンビを前に、酷な事を言い放つフィールと、それに突っ込む俺。しかし、そんな余裕は直ぐに消え失せた。


「あ、ヤバイ。あくまで実体は有るから倒しても消えたりはしねえんだ。めちゃくちゃ臭いんですけど」


「……吐いていい?」


「 ダメに決まってるだろ!」


 戦闘が終わり余裕が生まれたからか、これまで気にしないように気を付けていた腐敗臭を思いっきり嗅いでしまう。痛烈な嫌悪感とともに、吐き気が込み上げてくる。


 俺は、吐きたくはない為最後の手段を使用する。もう2度と使いたくないと思っていたものだ。


 アイテムボックスから石で出来た容器を取り出し、その中の液体を一気飲みする。


「ガアァァアア!!」


「……カイト?」


 俺が飲んだのは、特上薬草から作られた、苦いとかそういうレベルではないポーションだ。超毒消し草程では無いが解毒作用もあるため、飲めば多少はマシになるだろうと思って服用した。


 結果としては、吐き気は一瞬で収まった。さらに体から力がみなぎってくるようだ。相変わらず、このポーションは凄いな。効果も味も。


 と言うわけで、フィールを道連れにしようとポーションを進める。が、


「……大丈夫。我慢できるから、いらない」


 と、首を全力で振りながら否定された。


 そして、俺たちはドラゴンゾンビを放置して、空洞の奥の方へと向かった。







 結果として、ここには何もなく、完全な無駄足だったが。

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