13話 そう言えば、ここって列島だったな
訳の分からない石碑を後にし、洞窟に戻ってきた後、俺は作業を始める。ミラージュの素材を使い、どうしても作りたい物があるのだ。
今回は、ファストクリエイトは使わない。品質が劣化しては意味が無いからだ。それ程、繊細な作業のいる物だと言える。
俺はアイテムボックスからミラージュの皮を取り出し、それを縫い始める。アダマンタイト製の縫い針で、全力で刺さないと針が通らないというのは結構キツイ。
結果、3時間くらい掛けてようやく作業の半分が終わる。いまの時点で、地面に付く位のサイズのコートみたいになっている。
しかし、ここからフードも付けなければちょっと使いづらいと思う為、それもつけようとする。やっぱりというかなんというかそれも相当な時間がかかる。
ちなみに、フィールは初めの1、2時間位の間は見ていたが、睡魔に耐えられなくなってしまったのか心地良さそうに寝息を立てている。作業が終わったら布団に運んでやろう。
そして、ようやくフードがついた、目的の物が完成する。
某猫型機械も使用し、某魔法学園物では序盤に出てきておきながら主人公を何度も助けた便利アイテム。
そう、透明マントだ!と言っても、正確には光学迷彩とかそんな感じなので透明にはなっていないが。あと、どっちかっていうとマントって言うよりコートだが。
何故透明マントを作ろうと思ったのか。それは、ミラージュの素材を解体した時に、ある特徴を知ったからである。
具体的には、光学迷彩の効果は皮の表だけでなく、裏にもあったという事だ。つまり、たとえこっちがマントを顔まで羽織っていようとも、その外側の光景を映してくれるという訳である。
そして、外側からはこちらの事を視認出来ない。まさに隠密用装備としては最高だ。全身を隠さなきゃいけないから肉弾戦には使えないけど、魔法とかならサッと出してサッと引っ込めればかなり使えそうだな。
という事で、早速羽織ってみる。足元まで隠す為に結構長くしたのだが、そのせいでかなり歩きづらい。
結果として、飛行スキルを発動させ微妙に浮きながら移動する事に決めた。魔力の羽を出さないようにするのは苦労したけど、これなら移動しやすくなった。
……そうだ。明日、フィールが起きる前に起きてこれ着ながら起こしてやろう。慌てるフィールの姿が目に浮かぶぜ。
などと思いながら、今日のところは眠りについた。
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「……どうしてこうなった?」
結論から言おう。意味を成しませんでした。
朝、透明マントを羽織りフィールを起こしに行った。しかし、そのまま寝ぼけたフィールは俺に抱きついてきて、あっさり居場所を特定されました。……一応、スキルの隠密も発動させてたのに、一直線で向かって来られるのは若干悲しいぜ。透明マントいらないんじゃ無いかな。
まあ、そんな茶番はさておき、前々から思ってた事をしたいともう寝ぼけてないフィールに提案する。
「なあ、フィール。俺ってさ、まだこの島の端に行ったことが無いんだよ。ちょっと見てみたいんだけど行ってもいいか?」
夢幻列島は空に浮かぶ島。フィールが前に雲より高いと言っていたが、その上から見る光景というものが見てみたいのだ。富士山とかから見える雲海とか見てみたいと思う事はあったけど、登る機会がなかったからな。折角島の主を倒したんだし、少しくらい興味本位で動いてもいいかなーという考えである。
「……たまに、ドラゴンとかグリフォンとか突っ込んで来るけど……多分大丈夫」
ちなみにグリフォンはレベル120位、要するに余裕で倒せる。
「じゃあ、行こう。……ところで、道案内お願い出来ない?俺未だにこの島の地形把握出来て無いからさ」
「……方向音痴」
「否定は出来ねえなあ……」
フィールの無慈悲な発言もあったが、結果として島の岸の方まで案内して貰える事になった。
「……ところで、この透明マントってどう思う?」
「……全身薄ピンク色……ダサい」
「だよなぁ……」
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「なあ、まだなのか?この島広くねえか?」
「……あと30分位」
「マジすか」
ちなみに、現在飛んだ時間は1時間程度である。そんなに飛んでないかと思う人もいるかも知れないが、飛んでる速度は時速60Km位、普通に車並みである。その速度で森の中を飛んでいる2人を誰かが見たら新手の魔物かなんかだと見間違えることだろう。
「……ん、前方1Km位の所に何かいる。多分……グリフォンあたりだと思う」
フィールの忠告が入るが、相手は唯の鶏肉である。なんの心配もいらない。寧ろ、実験台になって貰うとしよう。
「……フィール。一旦降りる。ちょっと試したい事があるからな」
「……ダサいマント?」
「ダサいって言わないでくれよ……まあ、そうだけど」
今朝、あっさりフィールにばれた透明マントのステルス機能のチェックである。もし、これであっさりバレたら適当に別のアイテムに加工し直そうと思ってたりもする。
透明マントを羽織り、顔までしっかり隠して魔力を込める。そうすると、真っ暗だったマントの中から外の光景が見える。
そして、その光景を頼りにグリフォンの元まで向かう。今の所、全く気付いていないようだ。
100m……50m……30m……10m……5m……3m……
と、そこまで近づいたところでグリフォンが反応し、俺のいるところに向かって爪を振り下ろす。
「うーん、3mか。……微妙だな」
危なげもなく攻撃を回避しながら、そんな事を呟く。
バレた原因ははっきりと解っている。なんてったって俺にも同じ事はできるからな。
周囲には何も無いように見えるけど、風の流れまでは誤魔化しきれない。グリフォンは空を飛べる魔物な以上、空気の流れには敏感なのだ。
「まあ……面倒くさい戦闘を避けるのには十分かもな。……ああ、てめえは逃さねえぞ。久しぶりに鶏肉が食いてえんだよ。こっちの世界に来てから食ってねえからな。アレはカエルだったし」
と言うことで、コートをアイテムボックスに放り込み、代わりに剣を取り出しそのままグリフォンの首を刎ねに行く。
身体強化全開、フルスピードで斬りかかってなお抵抗があるとは結構頑丈な奴である。切り落とせたけど。
まあ、サクッと解体して、ささっとアイテムボックスに放り込む。……羽毛布団でも作ろうかな?でもアレは作っちまうと起きれなくなるかも……。
とか考えていると、フィールが言ってくる。
「……終わったなら、早く行こ?」
どうやらグリフォンで実験している間、そこらへんに落ちてる物 (吸魔石とか、魔晶石とか)を拾っていたようで、退屈だったようだ。
「ああ、悪かった。じゃあ、行こうか」
と言って、再び目的地へと向かい始める。まあ、さっきのグリフォン以外は特に何もなく、普通に岸の方に辿り着いた。
「……着いた」
「ああ、解ってる。それにしても凄えな……」
そこでの光景を見て、俺は凄い単純な事を見落としていた事に気付いた。
列島なんだから、ここ以外にも島あるよね!
俺の視界には、果てし無い雲海と、3つ位見える島が浮かんでいる。島の中では、今俺たちがいる島が1番高いところにあるようだ。
「なあ、フィール。ここ以外の島って行ったことってあるのか?」
と聞いてみたが、
「……ない。わざわざ、行く意味も無いから」
と返して来た。
個人的には行ってみたいのだが、正直なところこの島にも解らない事があるのに、他の島に行くというのはどうかと思った。のだが、
「……カイトが行きたいなら、私は付いていく」
と言われたので、もう取り敢えず行ってみることにした。距離的に、飛んで行けるし戻ってこれる距離だったので、気分転換位いいかという感じの考えである。
「……じゃあ、行ってみようか!」
「……うん。……このまま行くと魔力足りなくなるけど……」
出発しようとしたところで出鼻を挫かれたが、魔晶石を砕いて魔力を補給し、前方に見える新たな島に向けて俺たちは飛び立った。




