12話 石碑?訳分かんね
「私達……勝ったの……?」
「ああ、勝った。この島の主にな」
フィールは未だにその事が信じきれていない様子だった。長い間、絶対的な強者だと思い続けてきたミラージュドラグーンを、自分達の手で倒したのだ。
「ほら、ちゃんと現実を見ろ。倒したんだぞ、俺たちは」
そう言い、ミラージュの方を指差す。ここで死んだフリとかだったら洒落にならないが、ちゃんと死んでいる。
「……」
「うおっ!?」
フィールはそれをまじまじと見つめた後、いきなり俺に抱きついてくる。よく見ると、目には涙が浮かんでいる。
「……うう……」
「お、おい!?一体どうした!?なんでいきなり泣き出した!?」
俺がそう問いただすと、絞り出すような声で弱々しく呟く。
「……私は、怖かった。また、1人になってしまうんじゃないかって……このまま、殺されてしまうんじゃないかって……。……でも、カイトは守ってくれた。あの恐怖を、倒してくれた。……私を、孤独から救ってくれた。それが、何よりも……」
そう言い、またひと泣きした後、フィールは言う。
「……ねえ、カイトはいなくならない?私を、1人にしないでくれる?」
正直、戦闘直後に告白紛いのことをされるとか大分違和感があるのだが、それよりもフィールへの返答に困っていた。
実際、すでにフィールの立ち位置は仲間を超えて恋人ポジションと言われても謙遜ない位置にはいる。しかし、俺は日本に帰るために今この島から出ようとしているのだ。
帰る事になったら、フィールをこの世界に残してしまうことになる。龍化さえしなければ普通の人の見た目だし、書類とかも魔法とかを使って全力で潜入して役所に置いてくればどうとでもなるだろうが、フィールが日本、つまり別世界に行くことを良しと言うとは思えなかった。
だからこそ、俺は微妙な、そして致命的な返答をする事になった。
「……フィールが、それを望」
「望む。カイトが何処へ行こうと、私は付いて行く」
一切の迷いもなく、フィールはそう告げてくる。正直、何言っても意味は無さそうだと薄々思いながら、フィールに告げる。
「あ、あのな、フィール。俺は、一応異世界から来た人間なんだ。つまり、いつかは元の世界に帰る事になるかもしれないんだぞ?そしたら、こっちの世界には戻れないかもしれないんだぞ……?」
「それでも。……カイトのいる所が、私の居場所だから」
そこまで言われると、フィールが望むならと言おうとした手前、断るのは不可能に近い。極め付けに、
「……カイトは、私といるの、嫌?」
なんて言われたらもう認めるしかなかった。
「……嫌な訳ないだろ。もし帰るときは、必ずお前も連れて行く。それでいいか?」
「うん。それでいい。……だから、私を1人にしないで」
フィールの目には、一切の迷いはなかった。ただ、俺に付いていきたいと思っている目だった。
「……ああ!これからもよろしくな!」
そう言いながら、俺は自分からフィールを抱きしめた。……この島にフィールと2人きりでいるうちに、ヘタレはいつの間にか改善されちまったようだなぁ。あれか?1週間の間毎日抱き枕にされたからか?それともフィールが俺の前でごく普通に着替えるのを見てたからか?いや、水浴びする時に危険だからお互いに目を離さないように見張ってたりしたからかも……?
などと無駄な事を考えるのを一旦止め、フィールを離して言う。
「まあ、今はこの位にして、だ。さっさとアレどうにかするぞ」
そう言い、俺は先ほどから視界の端で存在感を放っていたミラージュの死体を指差す。何回見ても、フィールのウィンドドリルを食らった時に撒き散らされた血塗れの死体はグロいと思ってしまう。だが、それ以上の嫌悪感とかを抱かなくなってるのは、俺がこの島に毒された影響なのだろう。
「……エグい。誰がこんな事を」
「いや、お前だからな?トドメさしたのは俺だけど血塗れなのはどう足掻いてもお前のせいだからな?」
もう、フィールにも精神的な余裕が生まれ、冗談を言える程度にはなっている。
まあ、適度に突っ込みながら解体作業に入る。流石最高位のドラゴン、これまでの魔物とは素材の質が桁違いだった。
まず、外側に面している素材の全てが、魔力を流すと光学迷彩の効果を発揮することが解った。死んでいても、擬態能力は健在のようだ。
また、鱗はレベルの割に若干脆いが軽くて硬く、皮もレベルの割に衝撃を緩和する能力は控え目だが、伸縮性抜群だった。あくまでレベルの割にはであり、十分すぎる程に頑丈だった。
結果、腹の辺りの皮を除いて全ての素材の回収が完了した。恐らく、この世界でもトップクラスの貴重品だろうから慎重に使わないとな。主に一つしかない魔石は。これはクリスタルにはしないほうがいいだろう。
そして、素材の回収が終わり、洞窟に帰ろうとしたところである事を思い出す。
「あっ!」
「……どうしたの?」
いきなり叫んだ俺に対し、怪訝な顔を浮かべる。
「いや、アイツに襲われて忘れてたけど、俺たちって確かフィールが見つけた石碑みたいなのを確認しに行くつもりだったんだよな」
「……あ、忘れてた」
フィールもすっかり忘れてたようで、怪訝そうな顔から一転、申し訳なさそうな顔に変わる。
「ま、まあ、あれだ。石碑を見つけたのはフィールだろ?だからそんな顔するなって」
「……見つけた本人が忘れるのは、ちょっと……」
フォローしたつもりなのに、思いっきり追撃を入れてしまったので、とりあえず有耶無耶にする事に決めた。
「ほ、ほら!早くしねえと日が暮れちまうかもしれねえからな!さっさと行ってさっさと確認してこようか!」
「え、あ……」
そう言い、フィールの手を取り元来た道を走り始めた。
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結局、ミラージュに襲われたとこまでは来たけどもそこからどこへ行けばいいかわからなくなった俺は、フィールに手を引かれながら走る事になった。
「……ここ。この洞窟の中に、石碑があった」
そう言いながらフィールが指差したのは、崖に小さく空いた空洞だった。知らなければ、まず見つけられなさそうな、ちょうど人1人が入れそうな位のサイズのだ。
「……こんなとこ、よく見つけられたな」
「……あの硬い豚が、入ってくのを見て初めて知った。まさか、あんな場所があるなんて」
豚というのは、9割がたピグメタルだろう。この空洞は鉱脈にでもなってんのかな?属性の結晶とかの鉱脈ならかなりいいんだが。
「……じゃあ、行こ。きっとびっくりするから」
そして、俺はフィールに手を引かれるまま、空洞に入り、その中の幻想的な光景に目を惹かれた。
蒼く輝く鉱石と、紅く輝く鉱石が洞窟内を照らし、その奥に古びた石碑が鎮座している光景。さらに、その輝く鉱石を鑑定してみると、さらに驚愕する事になった。
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オリハルコン
分類 アイテム
レア度 伝説級
説明
この世界で最も硬く、魔力を持つ鉱石。加工できる者は殆どおらず、また、これで作られた武具は神具として保管され続けている。
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ヒヒイロカネ
分類 アイテム
レア度 伝説級
説明
オリハルコンに次いで硬く、魔力を持つ鉱石。オリハルコンより軽く、破壊力より取り回しを重視する武具にはこちらの方が強力である。当然の如く、加工できるものは殆どいない。
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この辺で輝いてた鉱石、殆どがこの2つだったよ。伝説級の意味を疑うくらいあるんだけどな。
まあ、ちょっと加工を試みたけど、レベルが足りないようで加工は出来なかった。今が創造レベル8だから、9か10にならないと加工不可能だ。そりゃ加工できる人殆どいないだろうな。
それはさておき、この異様な空間に鎮座している石碑に目を向ける。見た事もない文字だったが、何故か読む事が出来た。
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限界を超える力を求める者よ
九つの証をその身に刻み
この石碑の紋章に触れよ
証を持つ者には
試練を受ける権利を授ける
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「……なんじゃこりゃ」
正直、さっぱり訳が分からなかった。限界を超える力?九つの証?試練?どういうことだってばよ。
とか思いながらも、とりあえずこの石碑の意味を考える。
まず、簡単に纏めると、
1、九つの証を集めて
2、試練をクリアすると
3、限界を超えた力を得られる
こんな感じだろう。
限界を超えた力はクリアしないと分からない、その試練は九つの証が無いと受けれない……。つまり、まずは九つの証というものを理解する必要がありそうだな。
とりあえず、特に何もしていないけど石碑に刻まれてた紋章に手を触れてみる。鳳凰というかフェニックスというか、そんな感じの燃え盛る鳥を連想させるような紋章だ。
案の定、紋章に反応は無い。しかし、その紋章の中に九つの宝石のようなものが埋め込まれている事に気づく。
だが、その宝石を鑑定してみようとしたところ、なんと無効化された。少なくとも、レベル10の隠蔽が働いているようだ。
「うーん……この宝石は、多分あと何個かとかを知らせる為の目印とかだと思うんだけど……その証っていうのがなあ……。フィール、解るか?」
俺だけの知識じゃ何にも分からないので、フィールにも助太刀を頼む。が、
「……ごめん。さっぱり分からない。九つって言うのが一番分からない」
と言われ、早速詰んだので、今日のところは諦める事にした。
「島を出るのは、まだまだ先になりそうだな……」と呟きながらも、俺たちはこの空洞を後にした。
ヘタレな海斗は、死んだ!
この島で別々行動とか唯の自殺行為だからね。しかた無いね。抱き枕に関しては5日目位で振り解ける位にはなったけど、その時にはすでに手遅れだったとかそんな感じです。着替えは・・・毎日ラッキースケベが発生するとかそんな感じでしょうか。そりゃ慣れると思いますよ、多分。




