11話 決戦!島の主!
時はさらに1週間程経過した。と、言っても大したことはしていないが。
クリスタルによるドーピング、スキル取得、そしてフィールによる飛行スキルのレクチャー。そんなもんだ。
特に、フィールに飛行スキルの練習に付き合って貰ってる時は地獄だった。確かに厳しく教えてくれると言ってたけど、アレは酷かった。
多少コツとかを教えてもらった後、外で実際に飛んでみて、多少はコントロールが出来るようになった。そこまではよかった。
そのあと、「……じゃあ、魔法撃つから、全力で避けて。大丈夫、手加減はするから」などと言われた直後、飛来した弾幕に撃墜されたり、掠ってビビった隙にダイレクトアタックされたり、飛んできたアイシクルドラゴン (アイスドラゴンの上位種・レベル180前後)と死闘を繰り広げたりと散々だった。
まあ、そんな感じで上げまくった俺のステータスがこれである。
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黒野 海斗
種族 人間
レベル69
体力 1923
魔力 1923
筋力 1923
敏捷 1923
物防 1923
魔防 1923
増加量 7155
スキル
剣術レベル5 縮地レベル3 身体強化レベル3
飛行レベル3 隠密レベル2 空間魔法レベル3
龍魔法レベル2 火耐性レベル1
風耐性レベル1 氷耐性レベル1
鑑定レベル10 隠蔽レベル10
《創造》レベル8
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いや、ね?ステータスの組み替えってクリスタルで増やした奴にも適応出来たんだよね。だからこんなにバランスよく調整出来たんだよな。本当は全部同値じゃ無くて必要に応じて変えようかなとかも思ったんだけど、魔力はなんだかんだで色々使うし、ドラゴンがブレスとか使うから魔防も重要だし、もちろん物理耐性も必要、回避するための速度も必要……。そんな感じで全部同じステータスになった。
スキルの内訳は、縮地がクラウディア、身体強化がスマッシュラビット、隠密がピグメタル、龍魔法がなんかのドラゴン、火、風、氷耐性がファイア、ウィンド、アイスドラゴン、空間魔法が時空結晶というアイテムを魔石代わりに使った物を使用した。
スキルクリスタルの説明に経験値が得られるって書いてあった通り、習得した後でもある程度成長する効果があった。寧ろそうじゃなくちゃスキルのレベルは多分ほとんど1だろうしな。
ちなみに、龍魔法は使えるには使えるが殆ど使ってない。想像してほしい。口から火球を吐き出す人の姿を。……確かにドラゴンは口から出してるけどさ、人の姿なら手から出せるようにしてくれてもいいと思うんだけどなぁ。
まあ、こんなにステータスが上がり、夢幻列島でも大分やっていける……と思っていた時期が俺にもありました。
「キュルルルォォォォオオン!!」
「どうしてこうなったああぁぁぁああ!!!」
「……あまり喋らないで!舌を噛む!」
この島の主、ミラージュドラグーンに追い回されていた。
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現在、俺とフィールは、もはや日課となった吸魔石探しをしている。俺も既に鑑定を使わずとも見分けられる程度にはなっている。
「……はい、あっちに3個位落ちてたから拾ってきた」
「おう、サンキュー」
魔晶石も必要なのだが、吸魔石以上に普通に落ちているためストックが既に腐る程あるので、そこまで拾う必要はない。
フィールから吸魔石を受け取り、空間魔法『アイテムボックス』を使い、収納する。術者の魔力に応じてアイテムを収納出来る便利な魔法である。中に入れているものは劣化したり腐ったりしないため肉とかを保存するのに大分重宝している。
「……あと、あっちの方に何かあった」
「何かってなんだよ……」
「石板みたいなの。……書いてある意味は分からないけど」
この島に人工物?何かここから出るための手掛かりとかあるかもな。
「分かった。ちょっと行ってみようか」
「うん……。……っ危ない!」
「!?……うおっ!?」
フィールの忠告を聞き、何も考えずに空を飛ぶと、俺の元いたところが何か棒のようなものに貫かれた。
俺は、その出処を見て、その棒のようなものの正体を悟った。
そこにいたのを一言で例えると、「4枚の翼を持つカメレオン」であった。しかし、カメレオンと違い口には鋭い歯が並んでいたが。詰まる所、俺のいたところを貫いたのはそいつの舌である。
薄いピンク色の鱗に覆われており、結構目立ちそうだったのに攻撃されるまで全く気付けなかった以上、おそらく擬態能力とかを持ってるんだろう。
擬態系能力を持つ奴らは、不意打ちとかに長けている以上、正面から殴りあった時はそこまで脅威ではない……と思っていたのだが……。
「……島の主。早く逃げないと……殺られる」
などとフィールが言ったため、急いで鑑定する。
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ミラージュドラグーン
種族 ドラゴン
レベル321
体力 3900
魔力 3250
筋力 3250
敏捷 2600
物防 1950
魔防 3250
スキル
龍魔法レベル8 隠密レベル8 擬態レベル10
飛行レベル8
最高位に位置するドラゴン。周囲の景色に同化しながら、対象の背後から槍の如き速度の舌で貫き喰らう。弱き人族の国程度なら正面から殴り合っても十分滅ぼせる程度の力はある。
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擬態
分類 スキル
説明
自身の体を背景と同化させる事が出来るようになる。レベル10にもなれば目視で判別するのはほぼ不可能となる。
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これを見て、全力で走り出したところ辺りで冒頭の場面に至る。
「ああ、くそっ!全く距離が縮まらねえ!もういい、フィール!かなり辛いけど戦うぞ!」
「……駄目!相手が悪すぎる」
フィールが怪我をして洞窟にいた原因って確かこいつなんだよな。フィールが戦いたくない理由もわかる。けど、逃げられない以上、戦うしか無いんだよな。
「大丈夫だ!1人じゃダメでも、2人ならどうとでもなる!最悪足と翼を狙って機動力を落として逃げるだけでもいい!とにかくやるぞ!」
「……分かった。覚悟を決める。……だから、カイトも死なないで」
「ああ!やってやんよ!」
そう言いながら、俺はアイテムボックスから剣を、フィールは部分龍化を発動して戦闘準備をする。ちなみに、聞いた話によるとフィールはまだ完全に龍化する事は出来ないらしい。
ついでに、フィールに魔晶石を5個ほど投げ渡す。これで、魔力切れになるまでの時間は大分稼げるだろう。
そして、後ろを振り向くとやっぱりミラージュの姿は見えない。追ってきている時も、擬態を発動させているようだ。
先ほど、攻撃してきた時には姿が見えていたので、おそらく攻撃時には見えるようになると予想を立て、周囲を警戒する。
「カイト!後ろに飛んで!」
フィールの叫びを聞き、俺は後ろに跳躍する。そして、そこへミラージュの舌が弾丸の如き速度で突っ込んでくる。
「『身体強化』!オラアァ!」
身体強化を発動させ、ミラージュの伸び切った舌に向けて剣を振り下ろす。身体強化のレベルは3なので筋力、敏捷、物防のステータスが3割上昇、これで敏捷の値がミラージュとほぼ同値になる。
しかし、仮にも相手はこの島の主。そんな攻撃は想定済みだと言わんばかりに、その舌を鞭のようにしならせながら俺の剣を躱し、そのまま俺を強く打ち付ける。
「グハッ!」
だが、その行動でミラージュには僅かな隙が生まれる。そして、フィールは俺が攻撃を食らっても俺の方を心配するような素振りを見せず、魔法の詠唱を続行する。仲間の心配する位なら、一刻も早く目の前の敵を倒した方が結果的には安全なのだ。
「『トライデントレーザー』」
実は、フィールの持つ虹のレベルも1つ上がっており、端折れる詠唱の量も多くなっており、レベル4相当のレーザー魔法なら複合した上で限界まで端折ることに成功した。この位の魔法なら魔法名を言うだけでオーケーである。
フィールの手より放たれた火、冷気、雷のレーザーは確実に動きを遅らせるためにミラージュの足を狙い撃つ。フィールの全ての魔力を1発に込めた、渾身の一撃だ。
「キュルルオオォォオン!」
だが、魔法への耐性がかなり高いミラージュには大した威力は出ない。動けなくするためにはあと3、4発くらい撃ち込まないとダメだろう。ちなみに、放った直後にフィールは魔晶石を砕いて魔力を補充している。
しかし、この一撃によって、ミラージュは俺たちのことを「獲物」ではなく、「敵」と判断する。最早、形を残さない位本気で迎撃しに掛かってくる。
「キュルルルルララララァァア!!!」
ミラージュが天に向かって咆哮する。ただ叫んでいるだけの筈なのに、背筋が凍るような感覚に襲われ、動きを止めてしまう。フィールも同じように動きを止めてしまっている。
原因は、この咆哮が唯の咆哮ではなく、龍魔法の1つ、「萎縮の咆哮」という、格下の相手を威圧し、恐怖を与え動けなくするというれっきとした魔法だからだ。この世界において、上位以上のドラゴンが災害として扱われる原因にもなる程脅威的な技である。敵を前にして恐怖で動けなくなる……。それがどれほど危険なことかは考えなくても分かるだろう。
そして、その隙をミラージュは許さず、すかさずレーザー状のブレスで辺りを薙ぎはらう。無属性の、ただ魔力を圧縮しただけのブレスだが、ミラージュの持つ魔力の前では十分すぎるほどの脅威となる。
結果として、すんでのところで回避した俺とフィールの周りには、幾つもの切り倒された木々が並ぶこととなった。
「……なあ、フィール。これってさ、俺たち選択間違えたかな」
「……もう遅い。ほら、ちゃんと警戒しないと背後を取られる」
目の前で掻き消えたミラージュを見て、フィールが呟く。先程までそこにいたはずなのに、その姿を捉えることは全く出来ない。
周囲を警戒している時、俺の頭上の風の流れが変わる。風の流れ位、解るようにならないとこの島ではやっていけないからな。
後ろに飛び退くと、俺の元いたところに土煙が上がり、そこにミラージュが姿を現す。俺を潰しに来ようとしていたようだ。
無論、そのチャンスを見逃す意味は無い。飛行を発動させ、着地の隙を無くしそのままミラージュに突っ込む。
「キュルルル!」
俺の一閃はミラージュの腹の辺りに深い傷を負わせるが、致命傷には遠く至らない。そして、俺がそこから飛び退いた直後、追撃が入る。
「吹き荒れる暴風よ 螺旋を描き 敵を貫く 杭となれ『ウィンドドリル』」
「キュララララァァァア!!!!」
俺が付けた深い傷に、寸分違わず放たれた風のドリルは、血糊を撒き散らしながらミラージュを抉る。しかし、獣が最も恐ろしいのは手負いの時というように、ミラージュの動きも過激化する。まるで、自身の身を顧みず敵を滅ぼすバーサーカーの如く。
ボボボボボボボボボボンッ!
ミラージュの放った球状の10つのブレスが、周囲の物を吹き飛ばし、俺たちの接近を封じる。
ヴォォォオオオオオン!
続けて、放射状のブレスを放ち、周囲一帯を破壊し尽くし、
「キュルルルォォォォオン!!!」
そのブレスの後に続き、フィールに向かって猛スピードで滑空する。大口を開け、フィールを噛み砕かんとする。
「堅き荊よ 敵を締め上げろ 『ストーンローズ』」
フィールがそのまま噛み砕かれる訳は無く、地面から這い出した無数の岩石の荊が滑空していたミラージュに絡みつく。初めはなぎ倒していたが、数に押し負け、そのまま地面へと引きずり降ろされる。
「……カイト!」
「ああ!喰らえ!『電光石火』!」
俺は、そう叫びながらまたもミラージュの腹の傷に向けて一閃を放つ。
電光石火。剣術と縮地を複合した技で、縮地の「目的地までの間に障害物があると移動出来ない」という特性を利用したものだ。正確には、「障害物があると猛スピードで激突してめちゃくちゃ痛い目をみる」という感じなのだが、その障害物の部分を俺ではなく剣のみが触れるようにし、それを引き裂きながら突き進むという単純だが高威力の技だ。
結果、胴体の半分近くを引き裂かれたミラージュは絶命し、俺たちは見事島の主を打ち倒したのであった。
島に来てから約二週間、たったの二週間だったが、死ぬ気で努力すれば人は強くなれる。強大な敵も、きっと打ち倒せる。そして、この島から出ることも、日本へ帰る事もきっと出来る。
そう、確信した瞬間であった。
たった1話で沈んだ島の主ミラージュドラグーン。ですが、実力的には洒落になってない設定にはなってます。海斗のステータスが約レベル180相当、+本来持ってないスキルの数々、+海斗程では無いとはいえ十分チートの少女と2人がかりという条件で何とかといった感じなので、実際クラスメイト全員が束になっても瞬殺されますね。
これでも、レベルの割に敏捷が低いので、肉弾戦はそこまで得意じゃなかったというのも海斗たちが勝てた理由の1つです。




