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2話 なんか雲行き怪しい

人生山あり谷ありと言いますね。

山を「小説が書けるとき」、谷を「小説が書けないとき」と例えるなら、今の私は間違いなく谷にいます。

時間はない、章の序盤なので軌道に乗れてない。色々と理由はありますが……。

 王城のある一室。そこには、3人の人影があった。


 1人は椅子に座って何やら難しそうな本を読んでおり、もう2人はぐったりとした様子でふかふかのカーペットに寝そべっていた。


「「あぁ〜……」」


「……疲れてるのは分かるけど、ちょっとだらけ過ぎじゃないかい?」


 その本を読んでいる男……もとい晶は、寝そべっている男女……もとい忍と百華に呆れたような目を向ける。


 カーペットの上で、だらしない格好をしている幼馴染。疲れているのは分かってるため見て見ぬ振りをしていたが流石にそろそろ一言言いたくなったのだ。


 何せ、かれこれ2時間ぐらいこんな感じだったのだから……注意くらいはしたくなるだろう。


「んなこと言っても……なぁ?」


「だよねぇ?筋肉痛やばいし」


 そんな晶に、寝転がりながら忍と百華は対抗してジトっとした目を向ける。


 彼らがこんな状態になっている理由は至極単純。筋肉痛で、全身が痛すぎるからだ。


 海斗から次元が違う情報(デザストラ関連の奴)を聞いた彼らは、その日から修行の量も時間も大幅に増やすことにしたのだ。


 今のまま自分達では、海斗の足元にも及ばなかった。そんな状態で、海斗をして「倒せない相手」と言わしめる相手と戦うことなどできるわけがない。


 力の差があまりにも大きすぎるため追いつこうとは思ってはいないが……最低でも、一矢報いる程度の力は欲しい。そんな、ちっぽけなようで困難な目標のために彼らはひたすらに努力してきた。


 ……だが。ちょっと無理し過ぎた結果、こうやって身体的な苦痛に襲われることになってしまったのだ。


「晶はいいよねぇ……私達に比べたら、筋肉痛とかは控えめだし」


「そのぶん、魔力の消費が大分キツイんだけどね?辛いのは君たちだけじゃないからね?」


「俺、魔力使うスキルとかねえからなぁ。その感覚分かんねえんだよな」


 なお、この中で唯一魔法を使える晶は筋肉痛が控えめな代わりに魔力切れとかの所為で別途の苦しみを味わっていたりする。


 決して、晶も楽な状態ではないのだ。


 とまあそんな感じで、今は3人ともまともに戦える状態ではなくなってしまっているので……久しぶりに、こうして身体を休めているのである。


「はぁ……海斗たち一体何してるんだろうね?」


「さあな。大方、三つ目の試練とかにでも挑戦してるんじゃないか?」


「もしそうなら、どんどん差が広がっちゃうね。強くなってくれるのは嬉しいけど、なんか悲しい気もするな」


「だな……。でも少なくとも今の俺たちじゃ、試練に挑戦することなんかとてもじゃないが無理だからなぁ。……現時点でどのくらいのレベルの相手が限界なんだったか?」


「確か、少し前になんとかあそこ(深淵の大空洞)の60層くらいに行けたから……だいたい、120レベル相当くらいじゃない?勿論、準備万端でっていう前提だけど」


「120か。確か、夢幻列島に居た魔物がレベル150程度だったから……今挑んでも、そこら辺にいる魔物に殺されるだろうね。同時に2体以上出てきた時点で勝ち目はなくなるから」


 なお、今の彼らのレベルはだいたい80程度だ。最初のステータスがもともと高かったため、普通の同レベル帯の人に比べたら相当高いステータスにはなっているが……それでもまだ、万全の状態で自身の1.5倍程度のレベルの相手を倒すのが限界だ。


 晶の結界による行動の阻害に、忍の気配遮断。それを組み合わせることで大抵の戦場からは逃げられるため、なんとか60層までは行けたものの、それ以上進むのは流石に無理そうだった。


 なお、まだ晶はテレポートは使えない。使えれば、大分行動はしやすくなるのだが……テレポートを使うためには空間魔法のレベルが9 (現在のレベルは7)も必要なので、先は遠そうである。


「……俺らって、弱いか?」


「どうなんだろうね。世間一般から見たら強いんだろうけど、海斗たちがいる裏の世界から見たら……控えめに言って、塵芥くらいじゃない?」


「控えめにいってそれは酷すぎねえか?」


「じゃあ聞くけど。海斗と3人がかりで戦ったとして……私達、何秒耐えられる?」


「……10秒も耐えられないな、うん」


「というより、初撃で終わる可能性もあるね。ステータスの差も開き過ぎてるし」


 彼らはまだ、世界の裏側にいる者達と会ったことはない。だから、その力量も「無茶苦茶強い」ということ以外は分からない。


「……機会があったら、あいつ(海斗)と直接戦ってみたいな」


「だね。……まあ、その機会が来るのがどのくらい後になるのかって話なんだけーー」


 だから、彼らはその裏側に立っている最も親しい人物である海斗と一度でいいから戦いたいなと思った。


 当然、それが無理なことは分かってそう言っていたのだが……


「よっと、テレポート完了」


「「「……えっ」」」


 そんな会話をしている最中に突如姿を現した海斗 (とフィールとビアンカと美雪とフローレ)の姿を見て、彼らは言葉を失った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 帝都での買い物とかも特に何もなく (正確に言えば色々起こりそうだったが、近づいて来ようとする奴を遠距離から威嚇して事前に対処した)終わり、俺たちはフローレと共にこの城へと戻ってきた。


 忍達がいる部屋に転移してきた事に対した意味はない。


 テレポートするのに良さそうな場所をサーチで探してたら、たまたまこいつらがいるのを見つけて飛んできただけだ。まあ、そのお陰で口開けてポカーンとしてる此奴らの姿が見れたから満足だが。


「……いや、あの、あれ?なんで?なんで海斗がここに居るの?それに帝国の方に向かったフローレちゃんまでいるし……いやほんとに何があったの?」


「動揺しすぎだろ。落ち着け」


「ならさっさと事情説明しろや。訳わかんねえからこんなに混乱してるんだろうが」


 百華も忍も、大分頭が混乱してるみたいだ。まあ、あんな話をしてた最中に乗り込んできたんだからそりゃ当然だと思うけど。


 んで、事情説明しろっていってるけど……全部話すとなると、大分長引くんだよなぁ。帝国の方でも色々あったし。


 強いていうなら、イルネスとスペディオの件は俺がここに居る理由とは関係ないんだけど……流石に、話さないわけにもいかないしなぁ。超が付くほど重大な案件だし。


「そういうなら、こっちが今まで何してたか話すが……長くなるぞ?」


「ああ、それでもいいから聞かせてくれ」


「その体勢でそんな態度取られるとイラっと来るんだが……まあいいや。んじゃあ、まずは俺たちが帝国に行った理由からか」


 ちなみに、忍と百華は床に寝転がったままだ。スカートで立ってる女性がいる中で男がその体勢を取ってるのはいかがなものかとは思うけど……まあ、そういうことは考えてなさそうだ。多分、筋肉痛が辛くて立ち上がるのも面倒だみたいな感じなんだろう。


 とりあえず、そんな忍達を見下ろしながら俺は修行を終えてからの大体の経緯を此奴らに伝えた。


 道中色々あってフローレと再会し、一緒に帝都に行って、目的果たして、スペディオ現れて、最後にイルネスまで現れたこと。


 フィールの力の根幹が神の力だという疑惑が生まれたこともあったが……そのことに関しては、今回は何も触れなかった。


 いかんせんまだ不確定要素が多すぎるし、フィール自身もその力を十全に扱えるわけでもない。


 そんな状態でこのことを伝えても、ぬか喜びにしかならないと思ったからだ。


 だが。その重大なことが一つ抜けたその話の内容だけでも忍達には大分衝撃が強かったようで……明らかに、顔が強張っているようだった。


 そして、しばらくそのまま沈黙が続いた後……忍はこう言ってきた。


「……それさ。クラスの奴ら全員集めて伝えておいた方がいいんじゃねえか?」


 と。


「……その理由は?」


「前にデザストラとかの情報を聞いた時は、まだ敵対する"可能性"があるってだけだったから、変に不安を煽らないために俺たち以外には伝えなかったんだが……もうこの状況、まず戦うことは避けられないだろ。なら、いっそ一思いに伝えた方がいいと思うんだが」


「私もそう思うけど……そのことについて、海斗はどう思ってるの?」


「あー……」


 俺は百華にそう尋ねられて、少し考えを巡らせる。


 正直なところ、この件について今後どうするかとかほとんど考えてなかったからだ。


 試練を終わらせて力をつける。せいぜい、その程度の考えしかなかった。そもそも、この城に寄ったのだってついでだったんだからクラスの奴らに伝えようだなんて思ってもいなかった。


 だが、こうして言われてみると確かに全員に伝えた方がいいかもしれない気がしてくる。


 試練を終わらせても終わらせなくても、どっちにしろ俺たちだけじゃ対処できない相手だ。それなら、クラスの奴らにも伝えて協力させた方がまだマシなような気がする。


 ……1秒持つか分からんが。


 それに、下手すれば帰るのを諦めようとするのも出てくるかもしれないから逆効果かもしれない。でも、いずれは伝えることなるんだったら今のうちに知らせておいた方が確かに良さそうだ。


「……確かにお前らの言う通り、伝えた方が良さそうだな。黙っとくと、後々困りそうだ」


「だろ?まあ、伝えることを決めたところ悪いんだが……今王都に滞在してるのって、大体半数くらいなんだよな。他の奴らは、若干遠出してるから」


 だが、伝えることを決めた矢先にその肝心のクラスメイト達の半分近くがこの辺にいないと言われた。まあ確かに、ラントで春日部達と会ったっていう前例があった以上全員がここに滞在してるとは思ってなかったが……集まるのに、どれくらいかかるんだろうか。もし1ヶ月とか言われたら、流石に待ってられないんだが。


「まあ、そこまで遠くには行ってないみたいだから長くても2週間あれば全員集まると思うよ」


 などと思っていたら、質問する前に晶がそう俺に言ってくる。


 2週間。正直なところ大分長いが……試練に挑む前準備もあるから、その位なら充分許容範囲内だ。


 それなら、しばらくはこの城に滞在するとしよう。


「分かった。んじゃ、各地に散らばってるクラスの奴らに連絡を取って……連絡って、取れるのか?」


「あ、連絡なら取れますよ。各地のギルドを経由する必要がありますが、皆さんギルドを拠点として活動してるので大丈夫です」


「お、そうか」


 散らばってるクラスの奴らに「城に戻ってこい」という連絡を送れるかだけが不安だったが、フローレの話によるとその件は問題ないらしい。


 それなら、このことに関してはもう何も問題はなさそうだ。


 そうなると……後は、あいつらが集まるまで俺たちが過ごす場所か。


「……カイトが泊まってた部屋って、まだ残ってる?」


「え、あっ、はい。残ってるも何も、カイトさんがいなくなったその日のままの状態で残ってます。あ、しっかり掃除はしてありますが」


「スペースはどの位ですか?」


「普通に1人用の部屋ですけど……まあそこそこの広さはありますよ。ベッドさえ運び入れられれば、2人部屋としても使えるとは思います」


 そう考えていると、俺が尋ねる前にフィール達がフローレに色々と聞き始める。内容が若干変な気もするが、まあとりあえず続きを聞いてみよう、うん。


「それなら、カイト様の部屋にもう1つベッドを運び込んで2人部屋にして、もう1つ部屋を借りて同じようにすれば良さそうですね。フローレさん、それで大丈夫ですか?」


「ええ。構いませんよ」


「ありがとうございます。……それで。問題は、誰がカイト様と同じ部屋に泊まるか、ですが」


「「!」」


 ……心なしか、雲行きが不安になってきた気がする。


「ここは平等にくじ引きとかかな?」


「まあ、それが妥当でしょう」


「……絶対に負けない」


 どうやら、決め方は穏便なもので済んだようだが……3人とも、目がなんか怖い。


 一瞬とはいえ身の危険を感じた俺の本能はきっと間違っていないはずだ。きっと。


 

 そしてくじ引きの結果……意外にも美雪が俺と同じ部屋に泊まることになった。


 『お前も前まで泊まってた部屋あったろ』というツッコミを入れたい気持ちもあったが……それを言ったら、何かよろしくないことが起こりそうなのでそれについては何も言わないことにした。


そういえば、ブックマーク数が2,000を超えていました。ありがとうございます!

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