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生産スキルを甘く見るなよ?  作者: グラウンド・オーシャン
第5.5章 夢幻列島編 (ヘルモード)
133/170

part5 思ったより大したことなかったな

 彼らが洞窟に逃げ込んでから、早くも2週間程度が経過した。


「カルディア、大丈夫なの?」


「ああ、平気じゃ。力を込めると若干痛むが、一応は動けそうじゃ」


「そっか。頼むから、無理だけはしないでよ?」


 カルディアの傷の方も、アダマース達の治療によってほぼほぼ治りかけていた。魔法などを使わない比較的原始的な方法ではあったが、使っているモノ(薬草)が良かったからかかなりの効果を発揮した。


 だが、それだけでは折れた骨や傷付いた内臓の方までは治しきれなかった。しかし、それに関しては別の要因があった為なんとか治すことに成功したのだ。


 その要因というのは、カルディアの持つ大剣の一つ……魔剣「アモーレ」だった。それには「持ち主の傷を癒す」という効果が付与されており、それが折れた骨などを復元してくれたのである。


 いかんせん、まだ2週間しか経っていないので時間が足らず、完治とまでは至っていないが……無理をしなければ、治るのは時間の問題といったところだ。


「カルディアの傷はしばらくすれば完治する……か。だが問題は……」


「……その間、私達が生き延びれるか、ですよね。また食料難になってますし」


 ……しかし。そのしばらくの間、彼らが飢え死にしないかが最大の問題だった。


 ディアボロスの肉はもうとっくに食べ尽くしてしまったし (その辺にあった火炎結晶を使って火は通した)、フィオーリの方も洞窟内では光合成が出来ないためこのまま中にいては長くは持たない。


 避難してすぐの時は、大分魔物が少なかったのでジョーカーとフィオーリの2人で外へ食料調達 (木の実とか、たまたま一体でいた魔物とか)へ行っていたのだが、時が経つにつれてだんだん魔物が増えてきてしまったのでそれが出来なくなってしまったのだ。それが大体5日位前のことだ。


 その時から彼らは洞窟から出ることさえ出来ていない。そのため、食料はもう無いに等しかった。


 今のままだと、もって3日。カルディアが完治するまでには、多分1週間位。


 どう考えても、今のままではもたなかった。


 その上。


「ッ!お前ら静かにしろ!!魔物が近づいてきてる!」


 彼らが潜んでいる洞窟に、魔物が接近してくる。入り口は岩で塞いでいるため側から見たら入ろうとは思わないはずだが、中にいることがバレたら普通に押し入ってくる可能性が高い。


 それは過去の経験でわかっている為、彼らは急いでその口を閉じる。些細な音でも察知してくるのがここの魔物なので、すぐさまそうしなければまず間違いなく気づかれるからだ。


 だが、


「「「ゴォォオオオオ!!」」」


「ダメだ!!気づかれた!!」


「しかもこの鳴き声、まさかあのドラゴン!?」


 若干口を閉じるのが遅かったからか、その音を察知した魔物……プロト・ソルがこの洞窟に入ろうとしてきた。


 塞いである入り口からは断続的に何かを叩きつけるような音が聞こえ始める。恐らく、体当たりか何かをしているのだろう。


 1匹当たりの体当たりの威力は決して大きくはないが……外からは、軽く見積もって30近い数の鳴き声が聞こえてくる。それだけ数がいれば、入り口がぶち破られるのもそう遠くはないだろう。


「ど、どうしますかジョーカー様!?」


「この鳴き声はあのドラゴンで、ここは洞窟内。入り口で魔法をぶっ放せば前よりは当たりやすいだろうが、天井があるせいで雷を降らすことも、隕石を堕とすことも出来ない。そうなるとフィオーリの魔法がメインになるが……この量相手だと、どんなに上手くいっても半分位は残りそうか。そうなると、その撃ち漏らしをどうにかする必要がある。だがそれが一番得意なカルディアは戦えるような状態じゃない。そうなると……ダメだ、打開策が浮かばねえ!」


 ジョーカーはこの場を切り抜ける方法を必死に考えるも、打開策は一つも浮かんでこない。1人も欠けずにこの場を乗り切るのはやはり無理なのだろうか。


 そう悩んでいる間にも、外の音は強さを増していく。あと少ししたら、この洞窟内にあのドラゴン達がなだれ込んで来るだろう。


「……のお、ジョーカー様よ。このまま乗り切る手段が無いというのなら……一か八かの勝負に出るのはどうじゃ?」


「っ、なんだ!?一か八かの勝負ってのは!」


「そこにあるじゃろう。……一応は、此処から逃げるための手段が」


「っ、馬鹿かお前は!?"それ"は逃げるための手段とは言わねえだろ!!」


 そんな中、カルディアはジョーカーにある方向を指差しながらそう告げる。そしてジョーカーは、その方向へ振り向いた。


 そこにあるのは……燃え盛る不死鳥の紋章が刻まれた石碑だった。……ご想像の通り、"あの"石碑である。


 彼らはしれっと全ての島の石碑に触れてきているので、これに触れればこの島の試練を受けることは可能だ。その際は専用の空間に飛ばされるので、このドラゴン達から逃げられるということは間違ってはいない。


 だが、カルディアが"一応"といった通り……そこが安全かと言われたら、絶対にそうは言えない。寧ろ、このドラゴン並にヤバいやつが出て来ることが確定している以上危険としかいえないような場所だ。


 閉鎖空間で、このプロト・ソルの軍勢を相手にするか。それとも、そこそこ広い空間で試練に挑み、終わる頃には此奴らが何処かに移動していることを祈るか。


 どちらも分の悪い賭けで、どちらを選んでも無事でいられるとは到底思えない。……だが。


「……なあ、カルディア。一応聞いておくが……お前なら、どっちを選ぶんだ?」


「妾なら、この石碑に触れることを選ぶ。あの数をこの人数で対処する位なら、強大な一体を4人がかりで倒す方がまだマシだと思うのでな」


「……そうか。なら……」


 ジョーカーはカルディアの意見を聞いてから……大声を張り上げて、3人に告げた。


「アダマース!カルディア!フィオーリ!このままじゃ、俺たちは全員助からない!だから、今俺たちが行ける唯一の逃げ場……この石碑に触れるといけるらしい、試練の間とやらに飛ぶ!そっからどうなるかは分からんが!」


「っ、分かった!今行く!」


「正気ですか!?ジョーカー様!?」


「正気だ!このままここでドラゴン相手しても追い詰められて終わりだろ!?それならいっそ、賭けに出てみようじゃねえかよ!」


 ジョーカーの指示に2人は戸惑った様子を見せたものの、すぐにその指示に従って石碑の前まで走り寄ってくる。既に石碑の近くにいたカルディアも、少し歩き場所を調整する。


 4人は顔を見合わせる。そして。


「ここまで生き延びたんだ!こんなところで死ぬわけには行かねえ!……意地でも勝って、城に帰るぞ!」


「「「はい (承知)!!」」


 自分達を鼓舞するように叫び……同時にその石碑に触れた。


「「「ゴァァア!!!」」」


 それと同時に、入り口が破られ数十体のプロト・ソルが雪崩れ込んできたが……その直後には、彼らの姿はこの空間から消え失せた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……真っ暗だな」


「だね。なぜかお互いの姿ははっきりと見えてるけど」


「それより……あの紅い霧はなんでしょうか?まあ、想像はつきますが。」


 彼らは終わりの見えない漆黒の空間に飛ばされていた。


 その空間にあるのは、彼らの姿とその正面にある紅い霧のようなものだけだ。それだけ見てもこれがなんであるかは分からないが、彼らは事前に海斗からネタバレを聞いてしまっているのでそれがなんなのかは予想が出来てしまった。


 その霧は初めはただそこに佇んでいただけだったが、まるで意思を持つように、徐々にその形を変えて行く。


 翼、嘴、脚。形が見え始めるとともに、その霧は紅く輝き始める。


 そして、その霧が遂に直視できなくなるほど輝いた。


 彼らはそれを目にして一瞬だけその目を閉じてしまう。その直後、


「キェェェェェェエエエエエエエ!!!」


 という、耳をつんざくような甲高い咆哮を上げ、夢幻列島の最終試練……フェニキシアが、姿を現した。


「此奴が、ここのボスか……」


「……クロノさんの報告通り、ステータスはジョーカー様の倍になっているようですね。スキルのレベルは低いですが」


 そのステータスは、パーティメンバーの中で最も強い者の数値の倍となっている。今のこの場で一番強いのはジョーカーなので、相手のステータスの数値はその2倍だ。


 どんなにレベルを上げて挑んでも、その数値の差は決して縮まらない。それ故に、この試練はこう名付けられている。


 ーー「反逆の試練」と。


 縮まらない力量を、経験と技術で覆せ。それが、ここの試練を突破する条件だ。




 だがここで一つ、忘れてはならない事がある。


 しつこく言うが、ジョーカーは魔王……つまり魔王軍のトップであり、カルディア達はその幹部だ。


 戦いがここに比べて少なめな地上にいたとはいえ、戦ってきたその時間は海斗やフィールに比べても遥かに長い。当然、何度も死線を越えてきている。


 そんな者達が、「経験と技術」を確かめる試練において遅れをとるだろうか?


 答えは、否だ。



「アダマース!フィオーリ!俺が前に出る!お前らは魔法の詠唱を!カルディア!お前は出来る限り戦うな!回避に徹しろ!」


「りょーかい!」


「分かりました!」


「承知した!」


 ジョーカーは手早くアダマース達に指示を出し、そして自身もすぐに行動を開始した。


「お前の相手は俺だ!この焼き鳥が!!」


「キェェェェェェエエエエエ!!!」


 ジョーカーはフェニキシアの前に躍り出ると、その燃え盛る身体に向けて鋭い刺突を何発か繰り出す。


 フェニキシアはそれをその身体能力のみで回避しようとしたが、それだけでは研ぎ澄まされたジョーカーの攻撃は避けきれなかったようで、何発かをその身に受けている。


 しかし、


「はっ!はぁっ!!……っ、あっついなおい!!」


 何発か突きを繰り出したところで、ジョーカーの槍がその炎のせいで熱を持ち始める。


 ジョーカーの槍は一応アーティファクトではあるものの属性とかは特についてはいない。そのため、熱を手に通したりしないなどという構造はついていなかったのだ。そのため、炎を突いたりすればその熱は持ち主であるジョーカーに伝わってしまっていた。


 連続で攻撃は出来そうにない。だが、別に何発も攻撃する必要もないのだ。


 ジョーカーの役目は、あくまで2人が魔法の詠唱をする時間を稼ぐこと。ダメージを与えるのはあくまでもおまけに過ぎない。


「キェェェエエエエエ!!」


「はっ!どこ見てんだ焼き鳥が!」


 フェニキシアは、前に立っているジョーカーをついばもうとする。ジョーカー達の目論見通り、まんまと時間を稼がれているわけだが……そのことに、フェニキシアは全く気づいていない。



 こいつの最大の弱点は、魔法を使うこと以外は知能がだいぶ低いことだ。


 基本的に最後に攻撃してきた相手以外には攻撃しようとしないし、相手の攻撃を先読みしたりもしない。


 押し切れないと判断すれば力を強めたりもするが、逆に言えばその程度しかしようとしないのである。


 そのあたりを考慮して、耐久が高い者がコレを抑えているうちに後衛が魔法を撃ったりしてれば結構楽に倒せる……こいつは、そんな奴なのだ。


 なお、そんな奴相手に海斗達が苦しんでいた理由は……ただ単に、海斗のステータスの高さのせいでフェニキシアが強化され過ぎたというだけである。要するに自業自得であった。



「……顕現せよ!『シルフィード』!!」


「……墜ちよ!『ミーティオ』!!」


 ジョーカーが時間を稼いでいる間に、2人の詠唱も終わり同時に魔法が放たれる。


 超高火力の魔法が2つ。いくらフェニキシアでも、そんなの喰らえばタダでは済まない。


「キェェェェェェエエエエエ!!!!?」


 眼中にないとはいっても、流石に目の前までその魔法が迫ってくれば嫌でもその存在には気づきはする。だが、今更気づいたところで意味はないというのが実情だ。


 暴風が吹き荒れ、隕石が堕ちる。それを避けるには、もう遅すぎた。


 なすすべなく、フェニキシアはその2つの魔法をその身に受ける。馬鹿みたいに高いそのステータスがあったから耐えきれたようだが、それでも相当なダメージが入ったようだ。


「はっ、休む暇なんざ与えねえぞ!『ボルテックス』!」


「ギェェェェエエン!!?」


 そしてそのダメージによってよろめいていたフェニキシアに、ジョーカーはさらなる追撃をかける。これ以上槍を突き立てたら持てなくなるくらい熱くなりそうなので、今回は魔法での応戦だ。


 電撃が辺り一帯に波紋を描くように広がり、その中にいるフェニキシアを巻き込んでいく。もともと燃えてる為熱によるダメージは入りそうにないが、電撃は普通に通っている。


 例え不死身のフェニキシアとはいえ、その波状攻撃はなかなか聞いたようで……フェニキシアはそれから逃れる為に大きく羽ばたき宙へと舞う。


 この中で一番空中戦が出来るカルディアは、今は戦うのは厳しい状態だ。無理すれば少しは戦えるだろうが、そうすると後が怖い。


 そのため、あのフェニキシアはジョーカー達だけでどうにかしなければならないわけだが、その無駄に高い敏捷で飛び回っているソレを撃ち落とすのはなかなかに難しいものがあった。



 ……しかし。そのフェニキシアを見て、ジョーカーはニヤリと笑う。


「アダマース。フィオーリ。もう一回、さっきと同じように魔法を撃つ用意をしろ。俺が、アレを地面に引き摺り下ろす」


 ジョーカーは2人にそう指示を出す。まるで、フェニキシアを落とすことが簡単であるかのような言い方だ。


 それを聞いて、フィオーリは疑問の声を上げる。


「そ、そんなことできるの?確かに飛べる靴は持ってるけど、それだけじゃあれに追いつけるとは思えないし」


 そう。確かにジョーカーは飛ぶための手段を持ってはいたが……その速度では、今飛んでいるフェニキシアに追いつくことは出来ないのだ。


 単純なステータスの差ですら2倍もあるというのに、飛ぶための方法のせいでその差は更に開いている。それでは、とてもではないが追いつけるわけがない。


 だが、


「……ああ、そういやお前とカルディアは知らねえんだったな。俺の"槍"が、どんなモノかを」


「え?それってどういうこと?」


「……ジョーカー様の持つ槍は、かなり特殊なアーティファクトなんですよ。その能力を使えば、アレを落とすことも容易です」


「まあ、そういうこった」


 ジョーカーは別に、あれに追いつこうなどとは思っていなかった。


 未だフェニキシアは空を飛んでいる。あいつは体力を自動回復するスキルを持っているため、飛び続けてるだけでも体力は徐々に回復されてしまう。


 これ以上飛び続けられたら、与えたダメージはすべて無くなってしまう。それだけは、絶対に避けなければいけない。


「……ぉぉぉおおおおお!!」


 ジョーカーはその飛んでいるフェニキシアを見つめながら自身の持つ槍に魔力をありったけ注ぎ込んでいく。


 そしてそれに伴い、その槍は次第に淡い光を放ち始めた。


「狙いはあの焼き鳥だ!!俺の魔力と引き換えに、アレを貫け!!……"グングニル"ッ!!」


 ジョーカーはそう叫びながら、その槍を力強く空へと放り投げる。


 その槍はすさまじい速度で飛び出したものの、そのままではフェニキシアに当たるわけがない。


 だが、その槍は突如として不可解な動きを見せた。


 空中で何かに引き寄せられたかのように、その軌道を変えたのだ。


 その先は、今まさに縦横無尽に飛び回っているフェニキシアの心臓があると思われる部分だった。


「ギェェエンッ!!?」


 その槍は見事、フェニキシアの心臓を貫く……なんて事はなく。その前に、その直線上にあった翼へ突き刺さる。


 心臓を貫けていたら、その時点で倒せていたかもしれないが……どちらにしろ、翼をやられたフェニキシアが飛ぶのは困難になった。


 バランスを崩し、そのまま床へと落ちていくフェニキシア。そしてその方向を先読みし、アダマースとフィオーリの2人が持てる最高の魔法を叩き込む。


「……『ヴァン・アルクス』ッ!」


「……『アダマース・スクーレ』ッ!」


 ディアボロスに撃ち込んだ魔法と全く同じ魔法。その魔法の威力はいうまでもない。


 全てを裂く暴風がフェニキシアの身体を両断し、全てを砕く斧がその断たれたフェニキシアの身体を更に押しつぶす。


 フェニキシアは死なない。だが、それでもそれだけのダメージを受ければその身体を保つことも出来はしない。


「ギェェエエン……」


 フェニキシアの身体は一瞬燃え上がったと思うと、初めの時のように霧の姿となる。そして、初めから何も無かったかのように掻き消えた。


「……なんか、思ったりよりあっけなかったな」


「強かったはずなんですけど……あの鹿魔物に比べたら弱かったですね。明らかに」


 消えたフェニキシアのいた所を見ながら、2人はそんな事をつぶやく。



 確かにフェニキシアは強い。だが、この魔物は生態系の変化による影響は全く受けていなかった。


 つまる所、このフェニキシアは……様々な魔物が強化された今の夢幻列島において、強くなるどころか弱体化した唯一の魔物だったのだ。


 四体がかりで、前衛後衛はっきり分かれていたバランスの良いディアボロスとその仲間たちに比べたら……よっぽど生温かった。


 

 そしてそれから少しした後に、何もない真っ暗な空間の中に1つの魔法陣が現れた。


「これ、入って良いんだよね?」


「良いと思うぞ。……うん。槍も回収したからな。入って良いはずだ」


「では、入りましょうか」


「ううむ…?これは、妾はどういう扱いになるんじゃろうか?参加こそしたが、一度たりとも攻撃はしとらんし……」


「まあ、入ればわかるだろ」


 4人はその魔法陣へと入る。すると魔法陣が光に包まれ、それが収まると彼らの視界には見覚えのある岩肌が入ってきた。もっとも、見覚えがあると言っても彼らが試練に挑む前にいた場所とは別の場所だが。正確には、そこの石碑の裏にある隠し部屋だ。


 そしてそれと同時に、頭に女性らしき声が響いてくる。


 内容は……海斗があの時聞いたそれと全く同じだった。限界を超える力がどうとか、そういう内容だ。


「限界を超える力、か。……ちょっと、ステータス確認してみるか?」


「そうして見ましょうか」


「だね。ちょっと楽しみかな」


「妾は不安じゃがな」


 それを聞いた4人は、恐る恐るステータスを開いてみる。


 そこにあったのは……しっかりと刻まれた 《覚醒》の文字だった。レベルの方も、もともとレベル10に達していたものが幾つかレベル11へと到達している。あと、ついでに"見覚えのないスキル"も若干1つ付いていた。


 なお、4人全員だ。


 それを見て4人とも安堵の息を漏らしたが……その安心感は、すぐに途絶える事になった。


「「「ゴォォオッ!!」」」


「ッ!?」


「まさか!?」


「そんな……!」


 壁一枚隔てた向こう側から、彼らが逃げ込む前に入ってきたプロト・ソルの咆哮が響いてきたのだ。


 フェニキシアが拍子抜けだったとはいえ、今はもうすでにだいぶ体力を消耗してしまっている状態だ。とてもではないが、応戦は出来ない。


 万事休す。そう思っていたのだが……。


「……?どういう事だ?」


「確かに妙ですね。てっきり、壁をぶち破ってでも入ってくると思っていたのですが」


「……もしかして、壁が硬すぎて壊せないとか?」


 いくら待っても、プロト・ソルは彼らのいる部屋の中へと入ってくることはなかった。


 余談だが、この部屋の壁はただの岩壁では無く……オリハルコンとかヒヒイロカネとかアダマンタイトとか、そういう類の成分が混ざりに混ざった混沌とした岩だったりする。生半可な生物の攻撃程度では傷すらつかない硬度があるので、プロト・ソル程度の攻撃力ではまず突破出来ないのだ。


 だが、出入り口は石碑の裏なので……そこにプロト・ソルがいる限り、彼らは出ることが出来なかった。


「……これ、どーするの?」


「知らん。彼奴らが去るまで待つしかねえだろ」


「……」


 とりあえず、彼らはプロト・ソルが出て行くまで待つ事にしたが……



 ……プロト・ソルがこの洞窟から去る事はなく、そのまま丸一日程度が経過した。


「……なあ。こいつらいつまでここにいるんだ?」


「……妾達が出るまでじゃろ。常識的に考えて」


「だよな。……こりゃ、詰んだか?」


 このまま待ってても、おそらく出ることは出来ないだろう。そして出なくても、食料が無い以上飢え死には免れない。


 詰んだ。3人は、その時そう確信していた。




 アダマースの言葉を聞くまでは。


「……あ、あの……」


「……なんだ?アダマース」


「え、えっと、怒らないで聞いてくださいね……?」


「……言ってみろ」


「……すっかり忘れてたんですけど……アイテムボックスの中に、こんなものが……」


 アダマースは、恐る恐るといった様子でジョーカーにある物を差し出す。


 それは、淡く光る結晶体だった。


 ジョーカーはそれを見て、何回か瞬きをしたあと……アダマースに詰め寄った。


「ちょっ!?おまっ、これ転移石じゃねえか!!なんでこんなもの持ってんだよ!?」


「えっ、あっ、それは……半年くらい前に、クロノさんがくれた……」


「アレか!!つーかあるならもっと早くだせよ!!俺たちの今までの苦労はなんだったんだよ!!」


「わ、忘れてたっていったじゃ無いですか……!」


 それは、海斗が彼らに渡した転移石だった。


 

 それは、ずっとアダマースのアイテムボックスの中に入っていたのだ。ただ単に、忘れ去られていただけで。


 アイテムボックスから物を取り出すのにもある程度魔力を消費するので、アダマースは必要最低限しかそれを使おうとしていなかったのだ。だから、ポーションなどを探した時もこれの存在に気づかなかったのである。


 それで、最後の最後に僅かな希望を込めて全体を漁って見たところ……こんなものが出てきたというわけだった。


「め、珍しいね……。アダマースが、こんなミスするなんて」


「じゃな。……じゃが、まあよかろう。どちらにしろ、これがあれば帰れるようじゃからな」


 ジョーカーは怒ってはいたが……当然、これを持ってくれていたアダマースに感謝もしていた。


 何せ、これは今彼らが生きて帰ることが出来る唯一の手段なのだ。


「はぁ……。まあ、ありがとな、アダマース。お前のおかげで、全員無事……とは言えないが、生きて帰れそうだ」


「すみません……私がもっと早く気づいていれば、こんな長居することなく帰れたというのに」


「もう過ぎたことだ。……それに見合う収穫もあったんだし、そんな気にするな」


「……はい」


 ジョーカーはアダマースにそう声を掛けた後……大声で言った。


「今回は、俺のせいでお前らを危険な目に合わせてすまなかった!だが、皆のおかげで俺たちは誰1人として欠けることなく生き延びることができた!まだまだ色々と言いたいこともあるが今は……帰ろう!地上へ!」


「「「はい (承知)!!」」」


 そして3人がジョーカーの体に触れている事を確認した後、彼は手に持っていた転移石に魔力を込めた。


 転移石はそれに応じ光り輝き、その光は彼らの視界を塗りつぶす。


 この光が収まる頃には、きっと目の前には海斗がいる事だろう。この転移石の宛先は、海斗のいる場所なのだから。


 魔力もだいぶカツカツだし、体力も大分減っている。だが、久しぶりの友との再会なのだ。しみったれた再会では、全然面白く無い。


 だから彼は、空腹や疲れを押し殺して……目の前に現れた親友にむけてこう叫んだ。


「ハーッハッハーッ!!久しぶりだなぁ!クロノぉ!!」


 と。

作者「……よーやく、この番外編終わった……」

アウィス「なんか疲れてるみたいだね……。何かあったの?」

作者「大した事じゃないさ……。ただ単に、8000字くらい書いた後になんかしっくりこなくて1から書き直しただけだ」

アウィス「要するに、今回の10000字と合わせて大体4話分くらいの文字数を入力してたと。……そりゃ、疲れるね」

作者「まあ、楽しいから書いてるんだけどさ……。今回の話、章の最後の話なのに内容がただの消化試合っていうなんともいえない感じだったから、なんかうまくいかなかったんだよな」

アウィス「私の作ったフェニキシアちゃんとの戦いを、ただの消化試合と申すか。……殴っていい?」

作者「作者不在で打ち切りになっていいならな。まあ、とりあえず茶番は置いておいて本題移るぞ」

アウィス「だね。……まあ、今回は特に説明したりすることも無いんだけど。せいぜい、ジョーカーの槍についてくらいかな?」

作者「そんなもんだな。まあ、あの槍の能力は元ネタ通りだ。投げれば当たる。ただそれだけだ」

アウィス「まあ、その代わりに相当の魔力を使うっていう設定にはなってるけどね。それ以外は、ただ単に切れ味のいい槍だよ」

作者「ちなみに、『神話からそのまま持ってくるとか手抜きじゃん』とか言ったら無言の腹パンを食らわすから」

アウィス「神話からそのま……」

作者「…… (腹パンの構え」

アウィス「……あっ、そうだ。それよりももっと重要なことがあったんだ」

作者「逃げたな。……んで、なんだ?」

アウィス「次回以降はしばらくこの後書きコーナーはやらないって事だよ。前もって打ち合わせしてたでしょ?」

作者「あー、そうだったな。……まあ、そうは言っても6章の後半辺りから再開する予定ではあるが」

アウィス「とまあそういう事だから、しばらくの間私とはここでお別れだね!皆、今までありがとね!」

作者「またなー。……あ、そうだ。

 第5.5章は、これにて終了です。ここまで読んで下さってありがとうございました!次回からは第6章ですが……どの場面から始めるかをまだ決めていないので、言えることはないです。

 では、最後に一言。

 これからも、『生産スキルを甘く見るなよ?』をよろしくお願いします!」


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