part3 戦うしかなさそうじゃな
彼らが夢幻列島に来てから、なんやかんやあって凡そ2ヶ月ほど経過した。
逃げに逃げを重ねた結果、大怪我などもなく、一応全員無事な状態だ。ただし、逃げるために応戦してたため魔力はほとんど回復していない。
そしてその上、今彼らは別の問題に苛まれていた。
それは。
「腹、減ったな」
「それは皆同じです」
「意識してしまうから、言わんでくれぬかの?」
食べるものが、圧倒的に足りないことだった。
「魔物を倒さねば食べられぬというのに……その魔物を倒せぬからな」
「倒しても、肉などを剥ぐ時間がないですからね。……全員、その為のスキルなどは持ってないですし」
「知識はあっても出来るって訳じゃ無いからな」
魔物を倒さないと肉は取れないし、倒しても回収する暇がない。木の実などもあるにはあるが、3人が充分に食べられる程の量はない。
だからこうして3人は空腹に苦しんでいた。
……ただし、1人だけ飢えに苦しんでない者もいたが。
「私は大丈夫だけど……皆は私みたいには出来ないからなぁ」
「当然じゃな。流石に、妾達に"光合成"などというものは出来ん。気合いではどうにもならぬしな」
忘れている人もいるかもしれないが、フィオーリの種族は「アルラウネ」だ。姿こそただの幼女だが、その身体構造は植物に近い。
普通の食事も取れるが、いざという時は光合成によって養分を作り出すことも可能なのである。つまり、夢幻列島が外である以上飢え死にの心配はほぼ皆無だった。
3人からしたら羨ましいことこの上ないが、無い物ねだりをしても意味はない。そんな事は既に分かっているのでそれについては大して触れようとはしていない。
「……話を戻すが、このままだとフィオーリ以外は全員飢え死にしてもおかしくない状況だ。だから、早急に食べられる魔物を探す必要がある」
「今の私たちに狩れて、毒などがない魔物ですね。その上、近くに別の魔物がいない必要があると。……無理じゃないですかね?それ」
「狩った後に持って逃げるという選択肢もあるが……その場合、サイズは限られてくるな。それに、血の匂いを嗅ぎつけられる可能性もありうる」
3人は色々と方法を考えるが、考えれば考えるほどに無理な気しかしなくなる。それほどまでに、ここの食料事情は厳しかった。
「なんだかんだで全部の島を回っちまったが、どこもかしこもこんな状態だったからなぁ。これ以上島渡りたくねえ」
「渡ろうと渡らなくとも変わらぬなら、それはそうじゃろうな。妾だって飛びたくはないな」
ちなみに、この2ヶ月間でジョーカー達はしれっと全ての島を回っていたりする。そのうえ、さらっと全ての石碑に触れていたりもする。要するに、攻略するならあと一歩というところまで来ていた。もっとも、攻略するつもりはないのだが。そんなことよりも生き延びることに必死なのだ。
彼らは森を歩きながら、今後のことについて話し合っている。"運良く"魔物が近くにいないようで、今のところ襲われたりはしていない。
「……なあ、アダマース。流石におかしくねえか?」
「……何がでしょうか?」
「……魔物に襲われねえのは良いことだが、いくらなんでも静かすぎる」
「確かに、嵐の前の静けさといっても良いような感覚じゃな」
だが、この島でそんな"運良く"魔物がいないなど、彼らには考えられなかった。普通は少し移動するだけで襲われるのに、今だけは何かが近づいてくる気配すらない。
カルディアの言った通り、嵐の前の静けさというのが1番しっくりくる表現だった。
「……この場所から、早く離れた方がいいんですかね?」
「分からねえが……此処にいて、良いことがあるとは思えねえな。でも、何処に行けばいいかも分からねえが」
「後手に回るのはあまり良くはないが……原因が分からぬ以上、それを知らねばできることはないじゃろうな」
だが、もしそうだとしても何が起きてるか分からない間は迂闊な行動はとれない状態だ。下手にこの場所を離れようとして、原因に突っ込むなんてことがあったら目も当てられない。
4人はこの状況にどう対応しようかを少しの間考え込む。いつもならこんな場所で考える暇はないが、今は"普通の"魔物が近くにいないため考える時間は充分にある。
「……(バサバサッ」
「……あ?」
彼らが口を閉ざし考え始めてしばらくしたあと、唐突に鳥の羽ばたく音が聞こえてくる。そしてその音源の方へ振り向けば、そこには一羽の白いフクロウがいた。
気配は小さく、大した脅威ではないように思える。それに攻撃してくる気配もなく、ただ彼らの方をジッと見ている。
夢幻列島では違和感しか無い鳥だが、見た目は魔物ですら無いただのフクロウにしか見えなかった。
「……なあ、カルディア。これはなんだ?」
「……何を分かりきったことを。『肉』に決まっておる」
そしてそんな普通っぽいフクロウを見て、2人は目をギラリと光らせる。魔物でないか、弱い魔物か。どちらかは分からないが……そんなのが単体でいるならただの獲物だ。
ジョーカーは槍を、カルディアは大剣を構える。距離は若干あるが、詰められない距離ではない。
そのフクロウはそんな2人を見つめてはいるが、飛び立とうとはしていない。距離があるからと油断しているのだろうか。
「……はぁぁぁああ!!」
「ぜぁぁああ!!」
2人は少しずつにじり寄り、それから全力で接近しそのフクロウ目掛けて武器を振るう。両者ともに、首を狙った攻撃だった。
フクロウはその攻撃を避ける様子すら見せずに、ただ佇んでいた。そして反応すら出来なかったのか……その2つの攻撃は、寸分違わずフクロウの首に吸い込まれた。
「「やったか!?」」
「……その台詞ダメな奴じゃない?」
2人は同時にそんな声を上げる。それにフィオーリがボソッとツッコミを入れるが、その返答をする前にジョーカー達の顔色が変わる。
「……手応えがねえ」
「やられたな。どうやら、幻影か何かのようじゃ」
攻撃は確かにフクロウの首に直撃した。ならなぜ、全く手応えがないのか。なぜ、血すら出ていないのか。なぜ、フクロウに傷1つ付いていないのか。その理由を彼らは直ぐに察した。
このフクロウは、ただの偽物だったのだ。おそらく、光魔法で作り出した幻影か何かだったのだろう。
「……しかし羽音がした以上、本体も近くにいるのは確実じゃ。それも、音からして遠くはないじゃろう」
「……見つけ出して食ってやる。絶対にだ」
だが、術者がいるということに変わりはない。そのためジョーカー達はそのフクロウを捕らえるとこを微塵も諦めてはいなかった。
武器をしまうことすらせずに、神経を集中させその本体の位置を探る。一応ジョーカーは探知のスキルを持っているので、ある程度……というより、ほぼ全て (レベル10未満)の隠密スキルは貫通できる。もっとも、相手のスキルレベルが7とか8とかになると相当集中しないと感知できない為常時発動は無理なのだが。
ジョーカーは今日の飯のために、その探知スキルを全力で行使する。全力全開で行使すれば、数少ない例外に属してでもいない限りまず感知できる。
だが、幸か不幸か。そんな探知能力を発揮してしまったせいで……ジョーカーは、此方に向かってきている、フクロウ以外の魔物の気配に気がついてしまった。それも複数体で、前後から挟み撃ちにするように。
「っ!?まずい!魔物が前後から来てやがる!!」
ジョーカーは急いで3人にそう告げ、走り出そうとしたが……逃げるのは、もう既に手遅れだった。
「……それって、もしかしてコレのこと?」
彼らが動き出す前に、彼らの前から1匹の魔物が姿を現したのだ。
角は水晶のように透き通り、体は純白の毛で覆われている。その美しさは、まるで芸術品のようだった。
「鹿、ですよね?」
「……じゃな。しかし、凄まじく嫌な予感がするな」
その魔物はどこからどう見ても鹿の姿をしており、ドラゴンなどに比べたら威圧感には欠ける。だというのに、4人の勘はこの魔物が今まで見た魔物の中でもっとも危険だと警鐘を鳴らしていた。
本当なら、今直ぐにでも背を向けて逃げ出したい。だが、後ろから魔物が迫っている以上それも出来そうにない。
「……(バサバサッ」
「キュウッ!」
「ギィィイイ!!」
そしてその後方から来ていた魔物も直ぐに彼らの元へと姿を現わした。先ほどのフクロウに加え、空中を跳ねるウサギと脚が大剣のようになっている蜘蛛の2体だ。フクロウは近くの木の上に留まり待機しているが、残りの2匹は臨戦態勢に入っている。
「……今回は流石に逃げれそうにねえな」
「……そのようじゃな。死に物狂いで抗わねば、死ぬだけのようじゃの」
「……魔力は不安ですが、やるしかないなら仕方がありませんね」
「いつも通り話は通じそうにないからね。……来るよ!!」
逃げることは不可能。そのため彼らはこの魔物達と戦うことを決意する。勝てる見込みは薄いが、殺らなければ殺られるだけだ。
ジョーカー達も武器を構え魔法を撃つ用意をし、戦闘態勢へと入る。
そしてそれとほぼ同時に……そのウサギと蜘蛛は、彼ら目掛けて飛びかかった。
アウィス「あ、ウィッス」
作者「……その寒いダジャレいつまで続ける気だ?」
アウィス「さあ?」
作者「さあ?ってお前なぁ……」
アウィス「だって、気分次第だし。気にしたら負けだよ」
作者「そっすか。……あ、悪いが今回は魔物紹介は無しだ。次回戦う魔物の解説は流石にアウトだろうしな」
アウィス「だよね。……まあ、フクロウ以外はこれまで出て来た魔物のリメイク版だからどんな魔物かは大体分かるかもだけど」
作者「全部第1章に出て来てるからな。ウサギ、蜘蛛、鹿って時点で覚えてる人はティン!ってくると思う」
アウィス「そこまで覚えてる人は少ないと思うけどなぁ……」
作者「いる!きっといる!」
アウィス「だといいけど……」
作者「……きっといるさ。うん、きっと」




