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29話 その力、混沌につき

「……知らない天じょ……って、このくだりは前にもやったか」


 目が覚めると、そこは城の (無事な)一室のようだった。日が傾いているのを見ると、そこそこ時間は経ってるようだ。


 体には気怠さとかそういったものは一切なく、普通に寝て起きたような感覚だ。……イルネスが本気出してたら永遠の眠りについていたと考えるとゾッとする。


「……あっ!目が覚めた!」


「……おう、目が覚めたぞ。ところで、ここにはお前しかいないのか?フィオーリ」


 俺の横から嬉しそうな声が上がり首をそちらに向けると、そこには嬉しそうな顔をしているフィオーリがいた。

 

 他の奴らの姿は無いようだが……何をやってるんだろうか。


「他のみんなは、今回の騒動の後処理に行ってるの。特にミユキお姉ちゃんはひっぱりだこになってるの」


「……ああ、再生魔法で人も城も直せるからか」


「そういうこと。私は1番役に立たなさそうだったから、こうしてここでお兄ちゃんを見守る係になったの」


「役に立たないって……まあ確かに、筋力は1番低いし植物操れるって言ってもここで出したら被害が増えるだけだけども」


 美雪は再生魔法が万能すぎる、アダマースは空間魔法持ちだから運搬に最適、ジョーカーとビアンカとカルディアは普通に筋力でどうにかなる。


 その点フィオーリは、今回の復興作業には全く向いていないようだった。


「……あれ?じゃあフィールは何処にいるんだ?まさか、もう復興作業の方に行ってるなんてことはないだろ?」


 だがそれだと、俺と同じく眠りについている筈のフィールが何処にいるか分からない。一応あっちの方が早く眠りにはついたが……それでも、起きていたとしてもそんなに時間は経ってない筈だ。


 流石にそんな状態でもう作業してるとは思えないし。


「……ん」


「……ちょっと待った。このパターンって……やっぱりか」

 

「すぅ……すぅ……」


 俺がフィオーリに尋ねると……フィオーリは、俺のお腹辺りの位置を指差した。この時点で、何時ものパターンである事は大体察した。


 俺がブランケットをめくると、案の定そこには心地好さそうな寝顔のフィールが居た。……夢幻列島の時もこんなんだった気がする。まあ、嫌じゃ無いけどさ。


「1時間位前に1回起きたんだけど、眠っちゃう前に無理してたせいで大分疲れが溜まってたみたいで、また眠っちゃったの。……わざわざ、お兄ちゃんのベッドに移動して」


「ああ、うん。なるほど。……確かに、あの龍化は相当に体力使うみたいだからな。前の時も、死ぬ一歩手前になるまで力を使っちまってたし」


 わざわざ俺のベッドに移動してきたという点には突っ込みたいところはあるものの、残念な事にそれをした本人は心地好さそうに眠ってるからそれは出来そうにない。


 ……前回みたいに衰弱してる様子は無いから一先ずは安心だな。


「取り敢えず、みんなを呼んでくるね。きっと復興作業なんか投げ捨てて駆けつけると思うから」


「いや、投げ捨てたらダメだろ。……そっちの作業がある程度落ち着いてからでいいよ。しばらくゆっくりしたいし」


「そっか。それならそうするよ」


 フィオーリはビアンカ達を呼びに行こうとするが、俺はそれを引き止める。出来れば、このままもう少しゆっくりしていたい。

 

「……死者って、何人位出た?」


「大体20人位。……生き返れなかった人が半分に、生き返ったけどあのブレスで起きた崩壊に巻き込まれた人が半分。……ブレスに直撃した人もいるかもしれないけど、そっちは完全に消滅しちゃってるだろうから分からない」


「……そうか」


 美雪の再生魔法じゃ、時間が経ち過ぎた死体は治せない。今の美雪だと3時間が限度だから、今死んでる人はもう生き返る事はない。


 死者が1人もいなければいいな……なんて少し思ったりもしたが、そんな上手く事が運ぶわけはなかったか。


「意外にも、イルネスが崩した瓦礫には誰1人として埋もれてなかったけどね。……巻き込まれる人が居ないから、わざと崩したって思えるくらいだよ」


「……まさか。彼奴は、人族を滅ぼそうとした者の1人だぞ?そんな奴が、周囲の被害なんて「……彼奴なら、考えるかもしれない」っと、起こしちまったか?」


 俺がフィオーリの言葉に異を唱えようとした時……眠っていたはずのフィールからそんな言葉が聞こえてきた。


「……カイトが話してる気がしたから。目が覚めてよかった」


「お前も無事で良かったよ。……それで、さっきのセリフの意味は?」


「……確証はないし、自分でも頭が追いついてないけど。それでも、聞いてくれる?」


 フィールは寝起きで眠そうにしながらも、真面目な目を此方に向けてくる。


 ……そんな目されたら、聞かない訳がないだろ。


「……ああ」


「……ありがと」


 俺が頷くと、フィールは少し嬉しそうな顔をした。けれどすぐにさっきまでの真面目な標準へと戻る。


 そして一拍置いてから……フィールは、自分の考えを語り始めた。


「……私が今までイルネスに会ったのは、この国で会ったあの二回だけ。それは、カイトも知ってる通り間違いない」


「まあ、そうだな。まさか、夢幻列島に来たりとかそんな事は無いだろうし」


「流石に、そんな事はない。……けれど。私が私じゃない時に、私はイルネス達に会っていた」


「……どゆこと?」


 早速フィールは、俺の理解できない事をサラッと言ってくる。「私が私じゃない時」ってどんな時なんだ一体。


 つい聞き返してしまったが、フィールはすぐにそれに答えてくれた。


「……多分だけど、私には前世?の記憶がある。その前世?の私が、イルネス達を見たことがあった。数日前に会った時に言ってたあの言葉も、その時に聞いていたみたい」


 前世の記憶。それも、イルネス"達"を見たことがあったという事は恐らく"あの"戦争のあった時代ということだろうか。……というより、なんで「前世」が疑問形なんだ?


 だがそれについてはまだ尋ねないで、取り敢えず話を一通り聞くことにする。


「イルネスは、確かに病を広げてたけど……その中に、生き物を殺す物はなかった。弱らせたり、動きを止めたりする物ばかりで死に至るような物は一つもなかった。

 憶測だけど、彼奴らは「滅びをもたらす者を滅ぼす者」だから……滅ぼす対象に含まれないものを、巻き込んで殺したりはしないようにしているんだと思う」


「……でも、その理論だと人は「滅ぼす対象」なんじゃ……」


「それについては、アウィスが言ってた通り……今あの戦争は休止状態あるから、イルネス達にとって人は滅ぼす対象じゃないんだと思う」


「成る程。そういう考えもあるのか」


 あくまで「滅びをもたらす者を滅ぼす」のが役目だから、必要以上の殺戮はしない。だから今回、イルネスが暴れた所為で死んだ者はいなかった。蘇生出来ずに死んだ者に関しては除くけど。


「……でも。彼奴らは、滅ぼす対象や敵対行動を取った者に対しては決して容赦はしない。あの時の私も……イルネス達3人に、成すすべなく負けたから」


 フィールはそこまで言うと、一度そこで口を閉じた。落ち着いているようには見えるが、微かに体が震えていた。


 前世の記憶があるって事は……覚えちまってるんだろうな。イルネス達に殺された、その瞬間を。


 出来れば落ち着くまで待ってやりたいけど……過去の話を聞こうとする限り、多分この状態は続くだろう。


 なら、さっさと話を終わらせたほうがいい。


「……フィール。お前の前世は、一体何だったんだ?」


 だから俺は、さっきからずっと気になっていた質問をフィールにぶつけた。


 フィールはそれを聞くと、しばらく悩んだような素振りを見せた後……自らが、何者だったかを告げた。


「……前世とはいったけど、正確にはそうじゃないかもしれない。けれど、少なくとも……。私には、『混沌神ケイオス』としての記憶がある」


「……えっ」


 混沌神ケイオス。それはこの世界の神であり、そしてデザストラに立ち向かい成すすべなく負けてしまった者。


 それが、フィールの前世だった?


 いや、神だったなら前世って表現はちょっと違う気もするけど。


「……そう考えれば、全部説明がつく。私の持つ不可解な記憶は、私がケイオスだった時の記憶だった。私の力で失わせてしまったカイトの腕が治らなかったのは、私の使った力が"神気"だったから。魔力よりも上に位置する神気なら、ミユキの再生魔法を阻害しても不思議じゃない。……ただの龍人である私が、なんでこんな力を宿しているかは全く分からないけど」


 フィールは少し弱々しい声でそう語る。


 

 つい先日、フィールは自身の持つ不鮮明な記憶について俺に話してくれた。そしてその時も、今と同じような顔をしていた。


 不安で不安で仕方がなくて、今にも泣き出してしまいそうな、そんな顔をだ。


 あの時は、分からない何かに怯えてたけど……今は、それが何なのかが分かって、それに対して恐怖を抱いている。


 龍人といえど、あくまで"人"だったのに……今更になって、"神"としての自分の一面が現れた。そしてその理由全く分からない。


 その上で"神"だった時の自分が負けた時の記憶まで残っていて……さらに、その自分を倒した相手とまたこうして対峙する事になる道を辿っているのだ。

 

 そんなの、怖いに決まってる。


「……でも。いくら怖くても……私は、この力と向き合ってかなきゃいけない。例え恐ろしくても、煩わしくても。なければいいのにって思っても……無くなることなんて、死ぬまでないんだから」


 ……けれど。もうフィールは、覚悟を決めたようだ。不安そうな顔をしてはいるけど、その目には強い意志が宿っていた。


「……お前は。それで大丈夫なのか?」


「うん。……それに、ここで目を背けたら。きっと後悔するから」


 俺が大丈夫かと尋ねても、フィールの意志は変わらない。もう、なにを言っても曲がりはしなさそうだ。


 だから。


「そっか。……それなら、俺も協力する。いや、俺だけじゃないな。ビアンカや美雪も、きっと協力してくれる」


「……ありがと」


 俺は、そんなフィールを支えることにした。


 きっとフィールなら、どんな困難でも乗り越えてくれると思うからな。


 でも。


「……ふぁ……」


「大分疲れたまってるからなぁ……もう一回寝るか?」


「……うん」


 今はその事について考えるよりも、溜まった疲れを取る事に専念する事にした。


「……私がいること、忘れてない?まあ、別にいいけどね」


 俺が眠りにつく前にフィオーリが少し寂しそうにそんな事を言ってきたが……返事をする前に、俺はぐっすりと眠りについたのだった。


 

 


 

作者「とりあえず、第5章はこれにて終了です」

海斗「ところで、今って何月か知ってるか?」

作者「四月後半だけど。それがどうかした?」

海斗「じゃあ、第5章始まったのはいつだ?」

作者「11月後半だけど。それがどうかした?」

海斗「……何か言うことは?」

作者「……大変長引いてすみませんでした」



作者「では、茶番は置いておいて今後の話をしましょう」

海斗「んなこと言っても、普通に第6章に進むだけだろ?」

作者「と、思うじゃん?」

海斗「……違うのか?」

作者「違います。とりあえず今の予定としては、多分5話くらいで終わる (予定)の番外編、第5.5章『魔王と愉快な仲間達 in 夢幻列島 (ヘルモード)』を書こうと思ってます。タイトル長いんで多分変わりますけど」

海斗「結局それ書くのか……」

作者「まあ、どっかの誰か(カイトとフィール)が荒らしたことによって夢幻列島の生態系は大幅に変わってる設定になってるからね。折角だから出してみようかと思った」

海斗「……ルビおかしくないか?」

作者「なんのことやら」


作者「とりあえず、今後の予定はこんな感じです。リアルの方が忙しいので投稿ペースは落ちるかもしれませんが、まあコツコツと進めていく予定なので生暖かい目で見守ってください。

では、今後とも「生産スキルを甘く見るなよ?」をよろしくお願いします!」

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