表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/170

25話 滅びをもたらす者を滅ぼす

 此奴が何者かは分からない。でも、此奴が美雪に何かしたのは確実だ。……なら、その事の重さをはっきりと思い知らせてやらねえとこっちの気が済まない。


「この娘に何をしたか?ただ単に、首に手刀入れて気絶させただけだけど。別に殺そうとか人質にしようとかそういうことは考えてないから安心して」


「何処に安心できる要素がある?お前は俺の仲間に手を出したんだ、はいそうですかと引き下がる訳ねえだろ」


 女は悪びれる様子すらなくペラペラと喋る。俺はそれを聞いているだけで怒りが湧いてくる。


 ……大切な人を傷つけられたんだ。そう簡単に許す訳がねえ。


「これでも随分穏便に済ませた方だったんだけどなぁ。何度も「止めろ」って警告したのに止めない……いや、耳にすら入ってなかったみたいだから仕方なく気絶させただけだし」


「それでも、だ。手を出したことには変わりはねえ」


「まあね。まあ、取り敢えずこの娘は君たちに返すよ」


 その女は俺の方に向けて美雪を放り投げてくる。俺はそれを急いでキャッチする。


 確かにぐったりと気絶はしているが、外傷とかは無いようだ。取り敢えずは一安心か。


 それを確認した後俺はその女に全力の威圧をぶつけて見たのだが……それでもこいつは涼しい顔をしていた。……こいつ、マジで何者だ?


 戦うことになるなら、情報は必須だろう。少なくとも、コレはまともな奴じゃあない。


 だから、俺はこいつに鑑定を使ってしまった。



「……っ、う、嘘……だろ……?」


「……カイト様?」


 その鑑定結果は……予想の斜め上をいく、最悪と言ってもいいものだった。


 おそらく、この場にいる全員で襲いかかっても勝ち目はない。十中八九、全員が死ぬことになる。


 しかも、鑑定を持ってない他の奴らはその事の重大さに気がついていないようだ。


 ……いや、アダマースは鑑定を使っちまったみたいだな。口をパクパクさせて狼狽えてるから多分そうだろう。


 とりあえず、この状況で1番動けるのは俺みたいだな。


「……フィール、ビアンカ。この場にいる全員と書庫にいるフローレを連れて今すぐ逃げろ。出来る限り早く、出来る限り遠くにだ」


「っ、いきなり何を!」


 だから俺は、フィール達に逃げるように警告した。それを聞いた皆は驚いている様子だが……悪いが、理由を説明する余裕はない。


「理由を説明してる時間はない。今はとにかく、ここを離れてくれ。……逃げる時間はこっちが稼ぐから」

 

「お、おい!?理由くらい説明しろよ!」


「だから説明してる余裕は無えって言ってるだろ!……ファストクリエイト!」


 ジョーカーがそれに反論してくるが、それでも無理なものは無理だ。……彼奴が、いつまで待ってくれるかも分からねえんだから。


 俺はジョーカーに怒鳴りながらも、アイテムボックスから素材……オリハルコンとアダマンタイトを取り出してファストクリエイトを使用する。


 前まで使ってた剣はフィールとの戦いで折れちまったし、機会もなくて作り直せて無かったからな。予備の剣はあるけど、それじゃあ此奴相手には強度が足りなさすぎる。


 オリハルコンで剣を作りそれにアダマンタイトで「硬化」のエンチャントを二重三重に付与し即席の剣を作り上げる。これでも力不足かもしれないが、ないよりはマシだ。


「ふふっ、やる気まんまんだね。そんなに私が怖い?」


「当たり前だろうが。お前みたいな奴を前にして、恐れない方が無理だって話だ」


「そっか。……前みたいに"視た"って事は、もう気付いたんだよね?私が一体、何者なのかに」


 俺が剣を向けても、この女は不気味に微笑んでいる。……やっぱり、此奴は俺の手に負える相手じゃないな。


「ああ。……お前ら、マジでさっさと逃げろ。このままここに居たら全滅するだけだぞ」


 だけど、誰かが時間稼ぎでもしねえと此奴からは逃げれねぇ。それでいてこの中で1番時間が稼げそうなのは俺だ。なら、俺がやるしかねえだろ。


「っ、しかし!」


「これ以上は言わない。さっさと行け。お前らが居ても、足手纏いなだけだ」


「……!」


 だから俺は、敢えて辛辣な言葉をビアンカ達に浴びせる。これで諦めてくれるとも思えないが……これで逃げてくれるなら、それに越した事はなかった。


「で、でもっ」


「でもも何もあったもんじゃねぇんだよ!『テレポート』!」


 だが、それでも誰も逃げようとはしてくれなかったので仕方なく全員纏めてテレポートで無理矢理転移させる。送った場所は、フローレが取り残されてるであろう書庫だ。


 出来る限り魔力は温存しておきたいからスペディオは仕方なく此処に放置している。まあ、逃げようとしたらもう殺すけどな。逃げられるなら、殺した方がマシだ。


 『……カイト?コレは、何の冗談?』


 テレポートで書庫に送られたフィールからそんな念話が届く。落ち着いているように聞こえるけど、大分怒ってるみたいだな。何となく分かる。


 『悪いが、今回のコレは冗談じゃない。俺は此処に残って時間稼ぎをするから、お前たちは逃げてくれ』


 『そんな事、出来るわけーー』


 『……頼む』


 『っ!』


 だが俺は、その念話も一方的に遮断する。これ以上、彼奴が待ってくれるとも思えないからな。


「話は終わった?何もせずただ突っ立ってるのも面倒なんだけど」


「ああ、終わったよ。……で、何でお前は此処にいる?一体何をしに此処にきた?」


 女性は「やっと終わった?」みたいな顔でこちらを見ており、機嫌は良くも悪くもないといった感じだ。


 一応俺がやってるのは時間稼ぎだから、会話で時間稼ぎ出来るならそれに越した事はない。何せ、戦ったところでどれだけ持つか分からないし。


「何しに、か。私はただ、この城で大量の死人が出たからその原因を確認しに来ただけだよ。まあ、そこで死んだはずの人が蘇らせられてるのに気づいた時は驚いたけどね」


「原因を確認しに来ただけなら、何で美雪を攻撃した?それに、死者が蘇るのを何で止める必要がある?」


「そりゃ、禁忌だからに決まってるじゃない。死者の蘇生と生命の創造。その2つが禁忌だなんて、よく聞く話でしょ」


「初耳だそんなもん」


 此奴が此処にきた理由を作ったのは、そこで倒れてるスペディオみたいだ。で、此奴に殺された人を美雪が蘇生しているところをこの女が見つけて、それを止めた。


 ……もしかして、これ俺死ななくても大丈夫なんじゃないか?決死の覚悟で此処に残ってたんだけども。


「……で、お前は此処からどうするつもりだ?」


「ふふ、知りたい?」


「ああ、是非とも。……お前の取る行動によっては、こっちも戦わなきゃいけなくなるからな」


 でも、まだ安心できる段階ではない。此処でもし、「禁忌を犯した美雪を殺す」とか言われたら、俺はそれを命を投げ捨ててでも止めなきゃいけないし。


「まあ、そっちはもう私が何者か(・・・・・)知ってるだろうし、想像してるんじゃないの?……私がやる事はただ、この滅びをもたらそうとする者を滅ぼすだけだよ」


「……やっぱりそれが目的か。そりゃ、お前は……智天使イルネス(・・・・・・・)は、滅びをもたらす者を滅ぼす神デザストラに創られた天使なんだからな」


 そして俺の問いにその女……イルネスは、何でもないことのようにあっさりとその答えを告げてきた。


「あの時あんなにヒント出したのに、全然気づいてくれないんだもん。ちょっとびっくりしちゃったよ」


「その紅い瞳とか黒メインの格好とかあの魔獣の時の姿を連想させる特徴は幾つかあるが、それでアレがお前だって気付けってのも無茶な話だろうが。誰だって、お前みたいな怪物が街にいるなんて考えねえよ」


「それについても、前会ったときとは少し姿が違うって言ったでしょ?」


「少しってレベルじゃねえっつの。そもそも、あのときは空間魔法で覗いてただけで直接会ったわけじゃねえし。というより、何でお前はこっちの姿を見せてないのにあのとき見てたのが俺だって分かったんだよ」


「そりゃ、魔力の波動が同じだからすぐに分かるよ」


「さいですか」


 今にして思うと、この国に来てイルネスが言っていたことには嘘は一つもなかった。


「夜に見つめ合った」というのは、空間魔法越しではあったが確かにそうしていた。


「全身をいやらしい視線でねっとりと」というのは語弊があるが、確かに空間魔法で初めに見つけたときはその姿をガン見していた。


 あのときこいつは、でまかせなんて言ってなかったのだ。

 

 それなのに、俺はそれに気がつかなかった。


 ……己の鈍感さに涙が出そう。


「……ま、それじゃあ、此処に来た目的を済ませちゃおうかな。放っておいても面倒なだけだし」


 俺のそんな心情は気にも止めず、イルネスはスペディオの方へと歩いていく。


 その途中でイルネスは虚空から得物……薙刀を取り出して、それをゆっくりと上へと持ち上げた。


「な、何なんだおまーー」


「貴方のような屍人に、説明する意味はない。大人しく此処で散りなさい」


 そしてその薙刀を……勢いよく、スペディオに向けて振り下ろした。


 ドゴォォォオオオン!!!!


「がぁぁぁぁ……」


「おおおい!?」


 凄まじい音とともに、玉座の間の一角が崩壊する。


 明らかに室内でぶっぱする火力じゃないんだが……やっぱり、これにはそんな常識は通じないんだろうな。


 人と天使じゃ、認識の差も実力の差も大きすぎる。


「ごほっごほっ……もう少し加減とかできねえのか……!」


「これでもだいぶ加減した方なんだけど。巻き込まれた人は誰もいないみたいだしね」


 しかしこれでも、イルネスにとっては加減した一撃だったようだ。……まあ、これが本気でやったら確かにこの辺一帯吹っ飛ぶだろうからまだマシな方だったんだろうけども。


 だがそんな手加減した一撃といえど直撃したスペディオは原型を留めておらず、そのまま物言わぬ屍と姿を変えた。まあ、カルディアとの戦いで消耗したあとにあんなの喰らえば耐えれるわけねえか。


「……んー、これで今回の目的は終わっちゃったんだよなぁ。面倒な事は終わったけど、それはそれで退屈かな」


 薙刀を肩に担ぎながら、イルネスはそんな事をボソリと呟く。


 特に重たい言葉では無かったが……その声を聞いた俺は、何処か言いようのない恐怖に襲われた。


 根拠も何もないが、ここにいたら確実に良くないことがわかる。でも、逃げてもどうにかなるとは思えない。


 どう行動したら良いか分からず、俺がイルネスを警戒しながら此処からどうするかを考えているその時……イルネスは俺の方を向いて、こう言った。


「……だから、さ。ちょっと私の暇潰しを手伝ってくれないかな?」


 その時のイルネスの顔は期待に満ちたような……けれど見るだけで背筋が凍りつくような、そんな底知れぬ表情を浮かべていた。

 


 


 

スペディオ「作者ぁ!」

作者「なんだよー、耳元で叫んで」

スペ「まさか、俺の出番これだけとか言わねえよな!?一応2章の時から張られてた重要な伏線の一つだぞ!?」

作者「悪いけど、その2章の時から君がこの帝国で朽ちるのは決定事項だったんだよね☆だから、マジで此処で出番終了だよ」

スペ「巫山戯るなぁ!」



作者「……本当に当初の予定だと、海斗、フィール、ビアンカ、美雪、ジョーカー、カルディア、フィオーリ、アダマース……に構想段階で没になったキャラ2人位入れて一切の抵抗の余地なくギッタギタのメッタメタにされてから拷問された上で殺される予定だったんだけど……そっちの方がよかったのかねえ?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ