23話 カルディアとスペディオ
最初の方の文と最近の方の文。読み返してみると大分感じが変わってるような気がしたので、後半辺りの文をちまちまと改稿し始めました。
詳しい事は活動報告の方に載せさせて貰いましたのでそちらをご確認下さい。
改稿したといっても内容は変わっていないので見直さなくても今後に支障はありません。
「なっ……ジョ、ジョーカー!?それに他の奴らまで!なんで貴様らが此処にいる!?」
「偶然だ。それにしても久しぶりだなぁ?スペディオ」
「随分とまぁ、好き勝手やってきてくれたものじゃ。その落とし前、今此処でしっかりと付けてもらうぞ」
スペディオはこの場にいる筈のないジョーカー達を目にして相当驚いている。まあ、魔族国にいると思い込んでたなら当然か。
フローレの証言通り真っ黒な全身鎧に身を包んでおり装着している兜のせいで表情は読み取れないが、多分冷や汗とか流してる……いや、アンデッドだから流せる汗も無いな。
「……くっ、此処で引くのは癪だが、流石に此処で此奴らを相手にするのは分が悪すぎる。此処は……」
元幹部という立場上、現幹部3人とそれを統べる魔王を相手にしては分が悪いと悟ったようでスペディオは懐から淡く光る結晶体を取り出した。
どう見ても転移石です、本当にありがとうございました。まあ、意味ねえけどな!
「……は?」
スペディオはそれを使って逃げようとしたようだが、転移石は反応を示さない。それを見てスペディオは呆気にとられている。
いやー、結界張っててよかった。
「転移石使うって分かってんのに、対策しない理由はねえだろ?」
「き、貴様の仕業か……!貴様、一体何者だ!?」
「此奴らの友人だよ。それ以上でもそれ以下でもない」
俺がスペディオを煽れば、如何にも「余計なことしやがって!」みたいな雰囲気で此方を睨みつけてくる。
……こうしてみると、兜の隙間から見える目に生気が無いな。言われなきゃ気づかないが、こりゃ死人の目だ。
「……私達から目を離すとはいい度胸だね。
其は全てを貫く弓矢。如何なる障壁も撃ち抜き 吹き荒れる風。隔つ事は敵わず それは全てを吹き飛ばす。……比類なき猛威の暴風よ 今此処に弓矢と成れ。その名は『ヴァン・アルクス』!」
そしてスペディオが此方を睨んでいたその間にフィオーリは魔法を詠唱しそれをスペディオに向けてぶっ放した。フィールが前に使ってた『クリスタル・ファルクス』とか、『ソル・エスパーダ』とかと同じ種類の魔法だったと思う。
……まあ、つまり何が言いたいかというとだ。
「っ、ぉぉおおおお!?」
ズザザザザザァァァアアン!!
威力、強すぎるんだよ!!
スペディオはそれを咄嗟に手に持った大剣でガードしたが、それでも数メートル後ろに後ずさる。
床はその風の矢に巻き込まれて軌道に沿って抉れている。石造りの床がだ。
結界張ってたから良かったものの、張ってない状態で避けられてたら城に風穴空いて退路を提供することになっていた。
……怒ってるのは分かるが、多少は加減してくれませんかね。一応此処室内なんで。
それと、その魔法消費魔力かなり高いと思ったんだが……燃費も考えて欲しい。
「フィオーリ。一応ここ室な「堅き荊よ 敵を締め上げろ 『ストーンローズ』」……お前らなぁ」
そして俺がフィオーリに注意しようとしたその直後に、今度はアダマースが魔法を詠唱する。
今度は辺りを破壊する魔法じゃ無いが……今度は、石を荊のように変形させ相手の動きを制限する魔法だった。
で、普通なら地面から持ってくるんだけど……今俺たちがいるのは室内だ。
その上で床は石造りなのだから、どうするか説明するまでもなかった。
「なっ……!?」
城の床はグニャリと変形し、荊へと姿を変えスペディオの足へと絡まっていく。鎧を着ている所為で刺さりはしないが、接続部に針が引っかかりそう簡単には抜け出せないようになる。
所詮石なので普通なら砕けるのだろうが……何本も纏まっている所為でそれすらも難しそうだ。
「ぐぬぬ……。闇よ 螺旋を描きて 接する物を喰らい尽く「詠唱などさせると思うかの?」っ!?しまっ……」
ギィィィィィイイイン!!!!
そしてその荊を闇魔法で壊そうとしたようだが、その前にカルディアから重たい一撃を貰い脚に纏わり付いた荊ごと吹き飛ばされた。
既に身体強化も発動しているようで、筋力と敏捷の値は6000を越えている。……一応、身体強化していない俺のステータスが一律5000程度と言えばそのデタラメさが伝わると思う。
しかしそれでもスペディオの着ている鎧が砕けないのを見るとあの鎧は相当に硬いもののようだ。
まあ、砕けないだけで衝撃は凄いだろうけど。
その証拠に、スペディオは受け身すら取れずに壁へと激突する。壁が頑丈なお陰か外に叩き出されはしなかったが、壁は大きく凹んだ。
「がっ……」
スペディオは苦しそうに呻く。アンデッドといえど此奴は他とは違うからか、痛覚とかは普通に通ってるみたいだ。普通のアンデッドは本能だけで動いてるからかそういうのは無いっぽいし。まあ、相手が痛覚あるなら色々と楽なんだけども。
かくいう今も、全身を襲った衝撃の所為で隙を見せちまってるしね。
「休む余裕なんざ与えねえぞ!!『プラズマストーム』!」
そんな隙だらけなスペディオ目掛けて、今度はジョーカーが追撃を仕掛ける。
ジョーカーの掛け声とともに小さな電気の弾丸が大量に生成され、スペディオ目掛けて飛んでいく。その数は優に100を上回っている。
バリバリバリバリィ!!!!
「ぐぁあああ!!」
それを受け止める事すら出来なかったスペディオはその弾幕をもろに喰らった。
音とかからして結構威力は高かったと思ったんだが……意外にもまだスペディオは倒れていなかった。
「……はぁ、はぁ、はぁ……」
黒い煙を燻らせながら、スペディオはなんとか立っている。逃げるのはもう無理だと察しているからか、あくまで立ち向かうつもりのようだ。
「……此処で、朽ちるわけには、行かねえんだよ……!人族も、魔族も、全て滅ぼすためにはな……!」
スペディオは再度大剣を構えながらそう自分に言い聞かせている。
それが、此奴の想いなんだろうな。
魔族によって命を奪われ、命なきアンデッドというだけで人族からも拒絶された。意識があるにも関わらず、だ。
だから……人族にも魔族にも復讐してやりたいと願ったのだろう。
「……お主は何故、そこまで人族と魔族を恨む?少なくとも、魔族達はお主の事を受け入れていただろうに」
しかし、鑑定スキルを持っていないカルディアは此奴の過去を知らないためスペディオにそう問いただす。
魔族に殺されたから、此奴は魔族を恨んでいる。
殺してから受け入れられたところで、此奴はそれを受け入れられる訳が無いのだ。殺したいほど恨んでいる相手を許すとか無理に決まってる。
それすら知らないカルディアの質問は……スペディオの逆鱗に触れた。
「……ッ!巫山戯るなッ!覚えて無いとは言わせねえぞ!貴様らが……いや、カルディア!貴様がした事……忘れた訳じゃあるまいな!?」
カルディアの放ったその一言で、スペディオは怒りを露わにする。先ほどまでのダメージが無かったことになったかのような怒りようだ。
……カルディア、お前此奴に何したんだよ。
「……?すまぬが、全く記憶に無いな」
「き、貴様ぁぁぁああ!!!!」
でもカルディアにはその記憶が無いようだ。嘘を言ってるような顔には見えないし。
……いや、待った。そう言えば、此奴にはアレがあるんだった。
「……む?いや、今戦闘中なのじゃが……何?彼奴と話したいことがあるじゃと?……分かった。気に食わんが、この場はお主に任せるとしよう」
カルディアはスペディオを前にして唐突に独り言を呟き始める。知らない人が見れば何をしてると思うかもしれないが、ウィードとスペディオを除くこの場にいる全員はそれが何かは知っている。
そして1人で何か解決したかのように頷くと、再度スペディオに向けて口を開いた。
「久しぶりじゃな、スペディオ。……いや、元帝国騎士団長バスタードよ」
「っ、記憶に無いとか言って、やっぱり覚えてたんじゃねえかカルディアァァア!!」
スペディオは何か勘違いしているようだが、カルディアは本当にさっきまではスペディオの事は覚えていなかった筈だ。
「いや、覚えておらんかったよ。先ほどまでの妾と今現在の妾。この2つでは、宿っている人格が違うのでな」
その理由は、此奴が多重人格だからだ。
口調などはほとんど変わっていない為判別は難しいが、先ほどまでの独り言……この人格と会話していたのを見れば、それは間違いないの思う。
前は会話なんて出来てなかった筈だが……まあ、成長したのだろう。きっと。
「まあそんな事はどうでも良かろう。……しかし、妾の目も実に節穴であった。妾がお主を殺した張本人だったというのに、今ここで指摘されるまで思い出せなかったのだからな。見た目も気配も全く別物だった故仕方がないのかもしれんが」
「「「「「はぁ (えぇ)!?」」」」」
「……なるほど」
そして裏人格の方であるカルディアは……しれっと、そんな爆弾発言を落とした。
確かに、スペディオは魔族に殺されたって鑑定の結果には書かれていた。
だけど……まさか、こんな近くに殺した張本人がいるとは思わなかった。
そりゃ、殺した相手から覚えてないとか言われたら誰だってブチ切れるよ。
「確か、100年位前だったかの?確か妾達の国の魔族の何人かがこの国に迷い込んだ事によって起きた争いじゃったか。貴様が率いる帝国軍が魔族国に攻撃を仕掛け、それをジョーカー様が率いる魔王軍が迎撃した。此方の軍は敵の撃退を目的としていた為死者は殆ど出なかったが……それでも、アレは戦争じゃ。死者が1人もいない戦争なぞ、ある訳が無い。
帝国の大将であるお主と最前線にいた妾はお互いに命を賭けて戦った。本来の目的が撃退だったといえ、あの時は明確にお主を殺そうとした。少しでも手加減すれば殺されるのは妾だったからの。
結果としては妾がお主の首を刎ね残された帝国軍は全員撤退、帝国軍の死者はお主1人だったか。
……あの時は妾も満身創痍で弔う事を忘れていたが、まさかアンデッド化していたとはな」
戦闘大好きの裏人格にしては珍しく、しみじみとした様子でそんな事を語っている。
そんな裏事情があるだなんて知らなかったジョーカー達は唖然とした様子だが……それを差し置いて、此奴らの会話は進んでいく。
「戦場で殺されるのは自業自得だ。だがな!俺の魂は還ることなく死より辛い仕打ちを受けた!貴様に分かるか!?体を引き摺りながら帰り着けば、アンデッドというだけで拒絶され!かつての仲間からは剣を向けられ、民からは石を投げられる!死人にくちなしと言わんばかりに身に覚えのない責任が押し付けられ、家族は首を括って死んでいた!人里離れ静かに朽ちるのを待とうとしても、俺を討とうとする兵はそれをさせてくれはしない!
俺は死ぬことさえ出来ずに、全てを失ったんだ!だから誓ったんだ!俺を拒絶した人族も、そのきっかけを作り出した魔族も!全員、この世界から滅ぼしてやるってな!」
「勝手な事を抜かすな、戯け。朽ちたいのなら、海にでも飛び込んで勝手に朽ちよ。死にたいのなら、今此処でもう一度殺してくれる。自業自得だと分かっているなら、黙ってこの世界から消え失せよ!」
2人はお互いに叫びながら大剣を構え突進する。
「死ねぇぇぇえええ!!」
「はぁぁぁああ!!!」
ガキィィインンン!!
大剣と大剣が激突し、その瞬間に火花が散る。
「全部!全部!ぶっ壊してやる!」
「お主のような、逃げてばかりの弱者に壊せるものなぞ何も無い!」
「黙れ黙れ黙れ黙れぇ!」
こんな口争いをしているがその戦いぶりは「魔王軍幹部」に相応しいものだ。
両者とも大剣なんていう重たい得物を使ってるのに、その速度は速い。
振り下ろし、薙ぎ払い、切り上げ、また振り下ろす。
その全ての動作には一切の隙がなかった。
「チッ……前よりも速くなってやがるな!相変わらずの脳筋吸血鬼が!」
「そういうお主は魔王軍にいた時と然程変わらんのぉ!どうせ何か隠し球でも持っとるのだろう!?さっさと出すがいい!その隠し球ごと叩き斬ってくれるわ!」
状況的には、今の所カルディアの方が優勢だ。前に見たカルディアのステータスと今見たスペディオのステータスには然程差は無かったし、身体強化のレベルもカルディアの方が高い。
……けど、一応今の所は、だ。
俺がステータスを見た時に有った、「降霊」というスキルをまだスペディオは使ってない筈だ。
説明見る限りじゃそこまで強いとも思えんが、それでもアレは派生スキルだ。警戒しておくに越したことはないだろう。
「好き勝手言ってくれやがって……!そんなに言うなら見せてやるよ!!」
そしてスペディオは遂にそのスキルを使用する。カルディアはそれを見て少し距離を取り、その効果を見守っている。
先ほど言った通り、スキルを使わせた上で捻り潰すつもりみたいだ。
ジョーカー達も動かないが、それは警戒して近づけないだけだろう。
それでもアダマースとフィオーリはいつでも魔法を放てるように構えていたが、それはカルディアに遮られる。
「……すまないが、今回は妾1人に戦わせてほしい。此奴をこうさせたのは妾の責任じゃからの。今回の件は妾の手で終止符を打たせてほしい」
カルディアはスペディオの件に責任を感じているようで、自分の手でそれを終わらせたいらしい。
まあ、俺としては逃げられさえしなければどっちでも良いんだけど。
「……分かった。ただ、逃げようとしたらこっちも参戦させて貰うぞ」
「……すまない」
ジョーカー達はカルディアのその意思を汲み取ったようで、カルディアが1人で戦う許可を条件付きで出した。
アダマースもフィオーリもそれに頷いている。
「出でよ死者の魂よ!冥界より降り立ちて我に力を貸し給え!」
と、そんな事を話している内にようやくスペディオの準備が終わったようだ。
手を空に掲げ、声高々にそう叫ぶ。
それとともに何処からともなく一つの魂が飛んできて、スペディオの近くへと降り立つ。見た目は人の姿をしており、魂というよりも幽霊といった方がしっくりきそうだ。
『お前か?俺を呼んだのは』
「ああそうだ!さっさとその力を俺に貸せ!」
『言い方が癪にさわるが……まあ、お前のおかげでつまらない場所から抜け出せたんだ。良いぜ、俺の力貸してやる!』
その魂はなんだかんだでスペディオに力を貸してしまうようで、若干面倒な事になりそう……。
だと思ってた時期が俺にも有った。
なんとなく鑑定して見たら、この魂も普通に鑑定できてしまったのだ。
しかもステータスまでバッチリと見れてしまったのだが……残念な事に、普通に弱かった。
レベルは60前後、スキルは火、水、風魔法がそれぞれレベル6程度。借りられる力は一部と書いて有ったから、大きく見積もってそれぞれレベル5程度までが使えそうか。
……そんなもん手にしたって、接近戦でどれだけ役に立つというのだろうか。アレか?これ降りてくる霊までランダムなのか?博打すぎんだろ、それ。
「さぁ、準備完了だ!焼き尽くせ!『ボルケーノ』!」
だが、そんな俺の心の困惑には誰も気づかず……準備完了したスペディオは俺たちのいる方向へと魔法をぶっ放した。
??「私の出番まだ?」
作者「ちょっ、来るの早えよ!お前の出番はもうちょい先だ!」
??「分かった。……早くしてよ?長時間待つのも面倒なんだから」
作者「悪かったな、更新頻度遅くて!」
??「おお、メタいメタい」
ー 誰かが ウォーミングアップを 始めたようだ ー




