幼馴染みside2 力を求めて
海斗が夢幻列島に飛ばされてから約1週間が経過した時。美雪をはじめ、幼馴染み達は……
「オラオラ!そんな攻撃じゃ当たらねえぞ!無駄な動きを減らせ!」
バルス団長と戦っていた。
地上から夢幻列島へは行けない事は無いのだが、その為には"ある人物"に力を認めてもらい連れて行って貰うのが一番確実で、その為にバルス団長と訓練を行っているのだ。その方法なら行っても帰ってくる事が出来るからだ。
なお、他の方法だと行っても帰れないと言う事になるので、実質それ以外に夢幻列島に行く方法は無かった。
「光よ!辺りを照らせ!『ライト』!」
「目くらましならもっと隙をつけ!逆に隙を作るだけたぞ!」
美雪が使った光属性魔法のライト。ただ光って目くらまし位にしかならない魔法だが、その一手は完全に失敗だった。
バルス団長はそれを絶妙なタイミングで目を閉じてかわし、そのままその光を浴びて隙だらけの百華に襲いかかる。
カァン!
「うわっ!?」
そして、百華の持っていた木の剣が弾かれ、宙を舞う。要するに百華脱落である。
しかし、バルス団長は動きを緩めない。そのまま、後ろに剣を振り抜く。
「危ねぇ!」
後ろから隠密全開で迫っていた忍の鎌を弾こうとし、忍はギリそれを回避する。敏捷の高さは伊達では無いのだ。
そしてその隙を突こうと晶が魔法を放つ。
「我が魔力よ 矢となりて 敵を穿て 『マジックアロー』!」
しかし、その攻撃すらもバルス団長はひらりと躱す。ステータスもそうだが、どこを狙えば躱されにくいか、どのタイミングで撃てばいいのかと言う経験が足りていないのだ。
そして、そのまま詠唱が終わり隙が出来た晶に迫り、首に木の剣を突き付ける。晶脱落である。
残った美雪と忍だが、2人のステータスは晶と百華ほど高くない。美雪は魔力だけ、忍は敏捷だけなのだ。よって、決定打はほぼ無いに等しい。美雪の得意とする光属性魔法は回復などが使える分、攻撃性能は低いからだ。
つまり、まず美雪は即脱落した。そして、忍はかなり頑張ったが、バルス団長の剣を弾き飛ばすことも出来ず、そのまま体力切れでフィニッシュとなった。
「お前らは強い。だがな!まだまだ実践経験が足りない!もっと腕を磨け!……まあ、取り敢えず王都近場のダンジョンには入る許可をやろう。だが決して油断するなよ!」
バルス団長の言葉に幼馴染み組は目を輝かせる。
ダンジョンというのは、まず2種類ある。1つは人口的に作られた建造物のような物が魔力溜まりとなり、モンスターや宝箱が発生するようになったもの。もう一つは、魔力溜まりが何らかの影響を及ぼして自然に作られた、モンスターや宝箱が発生する迷宮。
自然発生したダンジョンは誰かが攻略するとしばらくした後に崩壊するが、誰かが意図的に作ったダンジョンは攻略したところで崩壊する事は無い。
何故、幼馴染み組がダンジョンへ行く許可を貰って喜んだか。それは、ダンジョンの敵は基本的に地上のそれより強力で、経験値が多く手に入るからである。一刻も早く強くなって海斗を助けに行きたいと考えている幼馴染み達にとっては是非とも行きたかった場所なのだ。
ちなみに、今回行く許可が出されたのは『深淵の大空洞』と呼ばれる巨大迷宮だ。途轍もなくヤバそうな名前だが、身の丈を考慮して行けばそこまで危険じゃない迷宮として有名なところである。
一層でレベル2まで、2層でレベル4まで、3層でレベル6までというように、層ごとに出てくるモンスターのレベルが定められている為、強力なモンスターが上の階層にいるということがない割と珍しいダンジョンなのだ。更に5層ごとに転移魔法陣が設置されており、何時でも帰れるようになっている。入り口にも転移魔法陣があり、その人が到達した転移魔法陣を行き来出来るというおまけ付きだ。
しかし、未だ攻略者がおらず、最高到達層は45層、レベルにして90相当になっている。この世界のダンジョンとしてはトップクラスで高い難易度だ。ちなみに到達者はバルス団長である。
「お前らなら……そうだな、しばらくは10層位で実践経験を積め。そこまでレベルは高くないと言っても、魔物との戦いは十分為になる筈だ」
そう言われた幼馴染み組は勢い良く頷く。
「まあ、今日は今から行ったら夜になるからな。ダンジョンに入るのは明日からにしとけ」
「「「「はい!」」」」
そうして、その場にいた全員は訓練所を後にした。
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「……海斗くん……無事かなぁ」
美雪が夕食を食べながら、そんな事を呟く。
「海斗なら、きっと大丈夫だよ」
「なんだかんだで海斗は1番機転がきくからね。なんとかなってるんじゃない?」
「むしろ生産スキルで俺TUEEEEE!とかやってるかもな」
すかさず、美雪の事を励ます幼馴染み四人組。しかし、側から見たら全員少し無理をしているように見える。
ちなみに、海斗が行方不明になった事は今朝全員に伝えられた。しかし、何処に飛ばされたかと言うのは明らかにはさせていない。転移石が陸地にしか転移しないというのは伝えたが、それが世界トップクラスの危険地帯と言ったら海斗が死んだと伝えるようなものだからだ。
「うん……そうだよね。海斗くんなら、きっと大丈夫だよね」
海斗を助けに行く組はこの幼馴染み組だけである。事情を大っぴらには出来ない上、1番力もあるからだそうだ。本来魔族との戦いのために呼ばれた筈なのにそれでいいのかと思う人もいるかも知れないが、国が決めた事なのでなんの問題もない。
取り敢えず、魔族との戦いは春日部と宇佐美先生を筆頭とした残り組が如何にかする予定になっている。幼馴染み組までとはいかなくても、十分チート集団だからだ。
「皆さん……ここに居ましたか」
「あ、宇佐美先生」
宇佐美先生は、海斗のステータスの事を知っている数少ない人物だ。つまり、事情を知らないその他生徒に比べて心配度は桁違いなのだ。
「明日からは……ダンジョンに行くそうですね」
「ええ、その方が、早く強くなれるようなので」
晶はそう言うが、宇佐美先生は心配そうな顔になる。
「ですが……くれぐれも気を付けて下さい。そして、絶対に帰って来て下さい。そうでないと、黒野さんを助けられませんから」
先生は生徒を守るために戦う事を選んだ。なのに、海斗を守ることができなかった。もう、2度と、あの時のような事は犯したくない……そういう目をしていた。
「大丈夫ですよ、先生。海斗くんは無事ですし、私達も、無事に強くなって、無事に海斗くんを助けて帰って来ますから。先生達も、無事でいて下さい」
「……白井さん」
と、そこで空気を敢えて読まない忍が声を掛ける。
「そう言えば、先生達は訓練の調子はどうなんですか?」
「あ、ええ。大分順調ですよ。バルスさんからは、初心者卒業した冒険者位には強いと言われましたね。もっとも、貴方達には遠く及びませんけど……」
そう言って、宇佐美先生はステータスを見せる。
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宇佐美 桜子
種族 人間
レベル10
体力 196
魔力 168
筋力 196
敏捷 224
物防 140
魔防 140
スキル
格闘術レベル2 獣化レベル3
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何故か召喚された勇者はスキルやレベルの上がりが早く、たった1週間程度でもこれだけ上がったりする。空の上の方に1週間ちょっとでレベル60位上げた奴もいるが……。
ちなみに、獣化というのは魔力を使い、1時的に獣の姿と種族特性を得られる技能だ。宇佐美先生の場合は兎なので、敏捷に大きな補正が入る。
ちなみに、幼馴染み組のステータスはこんな感じだ。
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白井 美雪
種族 人間
レベル18
体力 210
魔力 1510
筋力 210
敏捷 210
物防 210
魔防 210
スキル
光魔法レベル6 杖術レベル2
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遠藤 晶
種族 人間
レベル16
体力 425
魔力 725
筋力 425
敏捷 425
物防 425
魔防 425
スキル
無魔法レベル4 空間魔法レベル4 杖術レベル2
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八重樫 百華
種族 人間
レベル 21
体力 800
魔力 800
筋力 800
敏捷 800
物防 800
魔防 800
スキル
剣術レベル6
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影山 忍
種族 人間
レベル17
体力 190
魔力 190
筋力 190
敏捷 1980
物防 190
魔防 190
スキル
鎌術レベル4 隠密レベル7 探知レベル7
盗聴レベル7 鍵開けレベル7
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まあ、取り敢えずは全員チートだ。百華に関しては一般男性がレベル76まで行かないと辿り着けないステータスを持っているので普通におかしい。
「でも……これでも、まだ足りないと思うんです。もっと強くならないと……」
「そうかも知れませんね……。でも、貴方達ならきっと大丈夫です。先生は、信じています」
そんな会話を交わし、食事が終わった後みんなは眠りについた。
明日からは、幼馴染み組はダンジョンに潜り、レベル上げを始めるだろう。
ーー自らの意思で夢幻列島まで行き、帰れるだけの力を持つ、龍人族の族長に認められるだけの力を手にする為に……。




