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11話 皇帝、それでいいのか?

少し短いです。

 フレッサ帝国。


 そこは実力主義国家であり、マンサーナ王国と比べると治安は悪い。


 街を見れば奴隷もちらほら見かけ、お世辞にもいい場所とは言い切れない。  


「そういや、獣人を見るのってこれが初めてなんだよな。……奴隷にされてるが」


「私達の国は比較的奴隷は少ないですからね……。犯罪奴隷といった者や、働くアテが無くて仕方なく身売りをしてしまった者は何人かは居ますけど」


 1ヶ月の旅路は何事もなく終わり、俺たちは無事に帝都へと到着した。


 乗っている者が隣国の王女ということもあって、門も簡単に通れた為もう俺たちは帝都の中に入っている。


 時刻は現在4時位。場所は大通りのど真ん中だ。


 フローレは急ぎなためそのまま帝城へ、俺たちは取り敢えず宿屋を探しているのだが、今のところは向かう方向が同じなのでこうして話しながら歩いている。


「獣人は多種族に比べ魔力が少ないと言われてますからね。捕まえる側としては楽ということでしょう」


「まあ、そんな感じだとは思ってたが……見てていい気はしねえな」


「日本には奴隷なんていないもんね」

 

 奴隷は、一目で分かるように首輪がつけられ重労働を課されている。


 その目には、生気といったものは僅かにしか見られなかった。


 まあ、それは無理もない事だろう。


 ビアンカが言っていた通りなら、此奴らは普通に暮らしてた所を捕まえられて突然奴隷にされた筈なのだ。


 いきなり、なんの前触れもなく自由を失う。


 そんな中で、生きる望みを捨てないというのは多分困難なのだろう。


「……でも、助けはしない」


「当たり前だ。奴隷が良しとされてる世で奴隷解放とか言ったらこっちが悪者だ。無関係な奴を助けるためにこっちの身を削ろうとは思わん」


「でも、無関係じゃないなら身を削ってでも助けるんでしょ?」


「そりゃな」


 もっとも、無いとは思うが此奴らが攫われたりして奴隷にされたりした場合は即座に潰しにいくつもりだが。


 まあ、それは万に一つもない話だ。


 此奴らを捕まえられるような奴がそうそういるとは思えないし。


「それが出来る力が実際にあるのが怖いところなんですよねぇ……」


「あの時飛ばされたりしなかったらこんな力手にすることも無かったけどな」


「うっ……め、面目ないです」


 フローレは俺の返しにしゅんとした様子になる。


 確かに、あの……えっと、ダーティだったか?はフローレの家来に当たる奴だった。


 それを止められなかったのは今でも気にしているのだろう。

 

 飛ばされた本人である俺が気にしてないんだからそこまで気にしなくても良いとは思うのだが。


 まあ、他人思いの優しい奴だから俺がそう言っても多分意味はないんだろうが。


「気にすんなって。……あ、そういえば、ここの皇帝ってどんな奴なんだ?」


 けれど、一応気にするなと言いつつ話題を逸らしていく。


 仮にも他国のトップと交渉しに行くのだから相手の素性を知っておきたいという私情もあるが、本命はフローレに落ち着いて貰いたいという理由である。


「話題を変えてくれたのは分かりますけど……さすがに皇帝を"奴"って呼ぶのは止めておいた方がいいですよ」


「ん?まあ、そんなもんか。じゃあ……ごほん、ここの皇帝って、どんな人なんだ?」


 フローレは俺のその考えに乗って話に乗ってくれる。最も、まず帰ってきたのは警告ではあったが。


 今更だが、今回交渉しに行く相手は皇帝なのだ。一応敬語とかを使っておかないと色々と厄介な事になるのは当然だ。


 もちろん、厄介な事になっても全て押しのけられるとは思うが。それでも、何も起きないほうが一番良い。


 だから、一応それは頭に留めておいてフローレに続きを促す。


「皇帝がどんな人か、ですか……。正直、何とも言い難いんですよね」


「というと?」


 だが、フローレはその質問に少しの間考え込んでしまう。


 これから会いに行く相手に対してそれでいいのかと言いたくもなるが、その後にフローレが言った言葉でその言葉は取り消されることになった。


「実力主義国家の皇帝なので実力は確か何ですけど……プライドが無駄に高くて、女好きで、人を導くのが下手で……」


「……それ、上に立つ者としていいのか?」


 上に立つものとして相応しいとは思えないような人物像が頭の中に浮かんでいく。


 前2つはともかくとして、最後の1つだけは絶対に駄目な気がしてならない。


 寧ろ、そんなんで良くここまで国がしっかりしてるなと思えてしまうほどに。


「ここだけの話、私は駄目だと思います。一応、彼の旧友が補佐についていてその人が優れた頭脳を持つ者だからここまで国が落ち着いているのですが」

 

 そして、フローレは周りには聞こえないように小さな声でそんな事を言ってしまう。随分な言い様だが、そんな事言っていいのかと思ってしまう。


 まあ、周りには聞こえていないからここだけの話という感じで割り切ればいいのだろう、きっと。


「実力は帝国内で文句無しの1位なんですけどね」


 まあ、一応最後にフォローを入れるあたりがフローレらしいといえばらしいが。


「はっきり言って、会いたくなくなってきた」


「実を言うと、私も苦手なんですよね。2、3年位前に会った時はいやらしい視線を感じましたし」


「それは無いわー……」


 だが、俺が余計な事を言ってしまったせいでまたもその皇帝の汚点が追加されていってしまう。


 でも、会いたくなくなってきたのはまぎれもない本心である。


 そして……


「あ、それと1つ重要な事を言い忘れてましたが……」


「ん?」


「現皇帝、ウィード・フレッサは俗に言う戦闘狂です。交渉の際、多分戦闘を申し込まれるので適当にあしらってください」


「……マジで?」


「マジです」


 トドメに、そんな言葉が放り投げられた。


 傲慢で、女好きで、上に立つ資質が無くて、戦闘狂。


 この時点で、俺の中では関わりたくないという意思が大分膨らんできている。


「隠れながら本を探すのは厄介ですし、一応は会いましょう、ね?」


「……嫌だー……」


「私たちもいるから。出来る限りフォローはする」


 と言うより、後々の事を考えないのならば多分秘密裏に城に潜入していただろう。厄介ごとの予感しかしないから。


「強くなっても厄介ごとは嫌いなんですか?」


「出来る限り関わりたくは無いな。まあ、後々に響かないような軽い内容なら問題はないが……」


「今回は一応国のトップが相手ですからねぇ。後々に響かないなんて事はまず無いと思いますよ?」


「ですよねー」


 別に、利益とか目的とか命とかそういうのに関わらない、日常的な厄介ごとなら問題は無い。


 だけど今回のそれはそういうわけにはいかない。


 帝城にあるであろう情報は手に入れる必要がある以上、避けては通れない。


 だが、敵対して時間を取られると後々それが響くような気がしてならないのだ。


「まあ、私も口添えしておくので……」


「すまん、頼むわ……」


 とりあえずフローレは口添えしておくとは言ってくれたものの、どっちにしろ明日は大分疲れることになりそうだ。


 俺はその時の事を考えて気分を重くする。


「ああ……今日は早く寝よう……」

 

 だが、俺は明日の事を考えていたせいである事を失念していたのだ。


 それは……


「久しぶり、だね」


「……んん?」


 

 こういうことを考えていると、別の厄介ごとが舞い込んでいたりする事もあるということを。

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