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8話 嘘、調べる本、多すぎ……?

 そして翌日。今日はこの街について色々と調べるために俺たちはある場所へと行った。


「湿気とか大丈夫なのかな」


「知らん。まあ、その辺りは頑張ってはいるだろ。……多分」


 俺たちが来たのは図書館だ。やはり、調べ物と言ったらここしかないだろう。この世界にインターネットなんて便利なものは無いから。


「……正直、期待は出来なさそうですね。普通の本だと、数百年も経てば劣化してしまっているでしょうし」


「この街が何時からあるかは知らねえけど、肝心のものが失われてる可能性があるからなぁ。でも、ここ以外にそういったのがありそうな場所は無いし」


 だが、この風土で紙媒体というのは調べるこちらとしては出来ればやめて欲しかった。紙は携帯性には優れるけど劣化もその分早いのだ。


 勿論、異世界産で素材も違うのでもしかしたら少しは長持ちするかもしれないが。


 それはさておき。俺たちは、図書館の中へと入りその本棚の量を見据える。


 魔王城の禁書庫に比べると一回り二回りほど大きく、その中から目当ての情報を探し当てるのは大分骨が折れそうだ。見方を変えれば、目当ての情報が見つかりやすいとも言えるが。


「すみません。この街の歴史などについて書かれてる本ってありますか?」


「歴史書の類なら、彼方の方に」


 司書にありそうな場所を聞けば、その場所を教えてくれた。そうは言っても、その括りは結構大雑把ではあるが。

 

「……まさか、この辺り一体全部歴史書?」


「みたいだなぁ。こりゃ長期戦になりそうだ」


 そして、その場所を見た美雪は……非常にうんざりした様子の顔をしていた。まあ、仕方がないかもしれない。


 何故か、他の書物よりも明らかに多くのスペースが取られており、その本の量は数え切れない。


 要するに、調べるべき本が多すぎたのだ。魔王城での調べ物の時はいなかった美雪だが、この量の本を調べる苦痛は想像が出来ているのだろう。


「……四人で調べても、日が暮れる」


「まだ朝なんだけどね。目が疲れそう」

 


 なお、うんざりしているのは俺もフィールも同様だ。魔王城では大分苦労したし。


 ……尤も、もう一人は全くそういった様子は見せていないが。


「この程度、別に苦でもないでしょう?」


「俺たちをお前と一緒にしないでくれ。頭の作りが違うんだ」


「海斗くん海斗くん。そもそも種族が違うんだからそれは当たり前じゃあ……」


「……種族、『情報オバケ』」


 ホムンクルスであり情報処理に関しては右に出る者がいないビアンカは、さも当然のようにそんなことを言う。勿論、それに対して色々な言葉が返される。


 だか、それに対する返答で俺たちは手のひらを返さざるを得なかった。


「……なんなら、今回は3人だけで調べますか?」


「すいません調子に乗りました」


「……是非そのお力をお貸しください」


「私如きがごめんなさい」


「……さすがにそれはやり過ぎじゃ無いですかね……?」


 もしもビアンカが手を貸してくれない場合、こちらの負担は恐らく3倍近くなる。この前龍人の里にいた時、俺が1冊の本を読んでいるときに6冊くらい読んでた記憶があるし。


 その時はフィールはいなかったものの、魔王城にいた時の事は記憶にあるのでフィールもその処理能力は実感している。美雪には前雑談のときに話したから一応知っている。


 だから、全力で俺たちは手のひらを返した。それに対してビアンカは呆れていたが、俺たちは必死なのだ。


「……じゃあ、そろそろ探し始めましょうか。どのくらい掛かるか分かりませんし」


 そして、そのビアンカの言葉で俺たちは本の物色を始める。 


 分担は

・俺 ー フィーネの存在する湖「アクアリス」の詳細

・フィール&美雪 ー 水上都市フィーネの成り立ち等

・ビアンカ ー どちらか進んでいなさそうな方の補助

 こんな感じになった。フィール達は2人で1つの担当だが、俺の方が担当する量は多分少ないので妥当だとは思う。手が足りない場合はビアンカが補助してくれるし。


 というわけで、俺は今アクアリスについての書物を読みあさっている。


 既に何冊か読んだが、本の中で一番古いのは凡そ300年前に書かれたものであり今のところ大した情報は出てきていない。 


 ・アクアリスは円の形をした巨大な湖である

・山脈地帯の一角に存在し四方は山脈に囲まれている

・その水には高濃度の魔力が含まれている

・にも関わらず何故か魔物が生息していない


 出てきた情報はこの程度の、本を読む前から知っていた事ばかりだ。こうして並べると不自然極まりない特徴だが、それが何を示すかは全くわからない。


 自然に円形の湖ができるというのはまず無いとは思うが、そもそもこの規模の湖を人為的に作るのは無理だと思う。それ以前にこんなものを作る理由が解らない。


 そして、作られたものならわざわざ山脈地帯に作った理由もだ。ただ湖を作るだけなら、平原にでも作ればよかった筈だ。


 水に魔力が含まれているのは地下水脈にでもその要因となるものがあるのだろう。


 だが、魔力が多い場所には大概魔物が群生している。しかし、この湖には魔物というものがいないという。過去100年単位で現れた記録が無い以上、いないのは事実なのだろう。


 そうして考えると、確かにこの地が不気味なものに思えてくる。


「……謎が多いな」


「そっちは何か分かったの?」


「疑問が増えただけで何も解決してないな。そっちはどうだ?」


 俺がポツリと呟くと、その声に美雪が反応してくる。それに対して、ちょうどいいタイミングだったのでそっちの進展も一応聞いておく。


「……この街が出来たのが、大体1,000年くらい前みたい。それ以外の役立ちそうな情報はまだ」


 俺の質問を聞いたフィールは、残念そうな顔をしながら首を振る。2人で大分多くの本を読んだようで何冊もの本が積み重ねられているが、めぼしい情報は見つかっていないようだ。


「私の方は……この湖の水の魔力濃度についてですね。と言っても、中央が一番濃くて離れれば薄くなるといった感じですけど。多分、湖の中央から水が湧き出してるんでしょうね」


 ビアンカの調べた情報も、然程重要性は無さそうだ。水が湧き出していても、それ自体に何か不気味な点がある訳でもないし。


「……あれ?」


「どうした?」


 そこからもうしばらく経った後。今度はフィールがふとそんな声を上げる。


「……これ。関係があるかは怪しいけど」


「どれどれ……」


 俺がそれを尋ねてみると、フィールは開いていた本の1ページを俺に見せてくる。


 内容は、湖に架けられた橋の崩落についてだった。


 200年ほど前に帝都の方へと通ずる橋が崩落し、暫くの間通行ができなくなり大きな影響が出たと。それだけなら、気にするような事でもない。


 問題は、同じような事が過去に何回も起こっているという事。よく見てみると、大体全ての橋が約3回ずつ崩落していたようである。


「……脆い、のか?」


「そういう訳じゃあ無いと思う。仮にも土魔法で補強されたものみたいだから、こんなに早く崩れはしない……と思う」


 地球と違って、魔法を使って多少なりとも補強されている橋。それに加えて、此処は流れがある訳でもない湖だ。

 

 にも関わらず、この橋は他の場所に比べて崩れるのが妙に早いという事のようだ。


「……pH?いや、そんなんがあるならもっと前から分かってるよなぁ……」


 一瞬、酸性とかアルカリ性とかそういったので溶けてるのかとも思ったが、それならもっと前から気づかれているはずだ。


 だとすると、それは多分無い。しかし、そうなるとこっちの知識じゃもうお手上げだ。


「魔法的な何かですかね……?でも、これに似たような状況は私にも分からないです」


 何時の間にか一緒になってそのページを見ているビアンカもそれは分からないようだ。


 と言うより、知識オバケのビアンカが分からないなら俺ら三人が幾ら悩んでも無意味な気がする。現代知識系ならまだしも、今回はそんな感じじゃあなさそうだし。


「……魔法で補強してる意味あるのかな?」


「……微妙な所ですね。私の記憶が正しければ、崩れるまでの期間が魔力で補強していない場合に近いんですよ。補強した場合としていない場合のデータでもない限りはなんとも言えません」


「差がなかったとして……そんなの事が自然に起こりうるのか?」


「いえ、聞いたことすらないです。人為的なら幾つか手はありますが」


「だが、それなら直接ぶっ壊したほうがよっぽど早い気が……」


「それなんですよね、本当に」


 そして、もしもビアンカの考察が正しくても。そんな事をわざわざやろうとするなら、俺の言った通り橋そのものをぶっ壊してしまったほうが早いのだ。


 だからこれは自然によって、それも未知の現象によって引き起こされているのではないか。


「フィールの嫌な予感も当たってるかもな……。危険かどうかは別だが」


「……でも、まだ危険な予感は続いてる」


「それがなぁ……。これなのか、これじゃない何かなのか。判断つかねえんだよな」


「直ちに被害が出そうなものでも無さそうですけどね」


 だが、それらでも直ぐに何かが起きるわけでも無さそうだ。俺らは明日にここを出るのだから長居はしないのだからそれなら問題は無くなる。


 それに、


「すみません。そろそろ閉館時間になりますので……」


 これ以上調べようにも、気がついたら閉館時間になってしまったためこれ以上調べようがなくなってしまう。


 だから俺たちは大急ぎで本を全て本棚に戻した後図書館を出て行く。何せ、出した本が多すぎたのでチンタラ片付けていたらキリがないのだ。


「まあ、そこそこ収穫はありましたね」


「……多少は」


 今回は、そこそここの街について知ることが出来たので結構収穫はあったと思う。


 だが、フィールはまだ不安そうな顔をしたままだったが。

 

 そして、俺たちは (ビアンカ以外)疲れた目をこすりながら宿屋に戻ったのであった。

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