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7話 フローレの想い人

遅いっ!短いっ!重要じゃないっ!

そんな、作者としてもどうかと思う回です。

 フローレには、別の想い人がいる。美雪は、はっきりとそう言い切った。


 その答えは、フローレの反応を見ればはっきりと分かる。


 顔を赤面させ、口をパクパクさせているのを見れば、正解だというのは一目瞭然だ。


「まあ、誰が好きなのかまでは分からないけどね。そもそも、私達が知ってる相手かすら分からないし」


「ぃ、いえ……多分……いや、絶対に、この場にいる全員が知ってる相手です……」


 フローレは、そんな事を赤い顔のまま言った。……だが、その言葉は何か引っかかる。


 この場にいる全員ということは、フィールやビアンカも含まれるのだろう。


 しかし、フローレが知っていてそれで且つフィール達が知っている相手。そんな相手など、果たしているだろ……あ。


「……いや、そんな筈は無いよな……?だって、アレがそんなにモテる訳が……でもなぁ……それ言ったら俺もか……?」


 そこまで考えて、俺はその候補が四人ほどいることに気づく。そして、何故か俺の脳裏にはその中でも一番無さそうな者の顔が張り付いて離れようとしない。第一、フローレがアレに恋していたら……面倒なことになる。


「……もしかして、誰かわかっちゃいました?」


「……確証もないし、アレじゃ無いと思ってるし無いと思いたい。でも、それな気がしてならない」


「え?海斗くん、今ので分かったの?」


「寧ろ、お前は気付かなきゃいけない方だと思うんだけどな……」


 美雪は、その相手に気付いた様子の俺に驚いているようだが……此奴は、少なくとも俺の次に気付かなきゃいけない奴なんだが。


「まずフィールとビアンカが知ってて、フローレも知ってる相手っていうのは少ない。絶対になんて言える相手なら尚更な。……そうなると、男の場合は四人しかいねえんだよ」


「それは……カイト様と同じ世界にいた方達ですか?」


「その通り。忍、晶、剛田、あと春日部。お前らが会ったのはこの四人だけだ。で、多分この中の誰かだとは思ったんだが……」


 俺が今言った通り、挙げられる候補は全員クラスメイトの奴らだ。だから、できれば美雪にも気付いて欲しかった。おまけに、そのうち2人は幼なじみなんだから。


「……何故か、根拠も何もない上に一番影薄い彼奴()の顔がはっきりと浮かんでくるんだよな」

 

 だが、その中でイケメン系の晶と春日部、存在感が多少大きい剛田を差し置いて、影が薄くパッとしない忍が今回の答えなのではないかという予感がしている。


「……そう、です。私の想い人は……シノブさん、です」


「ええっ!!?」


「……やっぱりかぁ」


そして、その予感は的中していた。


 それに対して、美雪は目に見えて驚き、フィールとビアンカも僅かに驚いた様子を見せている。


 なお、一方の俺はその厄介さに頭を抑えていた。

 

 ウルブスで、忍に色々言われて俺が言い返したことにこんな事があった。


「お前は好きなやついねえのかよ?」と。


 そして、忍はそれに対して、好きなやつがいると言っていた。


 勿論、それはフローレではない。俺の幼なじみの百華だった。それも、中二位の頃から好きなのだという。


 三角関係。まさしく、そんな状態だろうか。まだ両者とも告白はしていないが……もしした時は、色々と厄介な事になるに違いない。


「ほ、本当なの?いや、寧ろアレの何処が好きになったの?」


 しかし、そんな事を知らない美雪は何故忍を好きになったかをフローレに聞いている。……知らないって、幸せなんだな。


「え、ええっと……皆さんがカイトさんを助けに行くために修行してるのを見て……それに、見惚れてしまったのが好きになったきっかけです」


「ほうほう、それでそれで?」

 

「来る日も来る日も、カイトさんが生きていることを信じて修行している姿を見るたびに私の心が高鳴ってゆき……夜中、誰もが寝静まっているときにバルス団長と二人で特訓しているのを見たときに完全に落とされてしまいました」


「えっ、忍くんそんな事してたの?」


「はい。ミユキさん達がダンジョンに日帰りで行き始めた頃あたりから」


「そうだったのか。……そういや、一番体力が無いはずの彼奴なのに割とバテないなと思ったのはそれもあったのか?」


 前に、俺は忍と晶に鍛えてくれと頼まれ、少しの間ではあったが鍛えてた事があった。その時はあまり気にはしなかったが、それならば少しは納得はいく。


 忍のステータスは、素早さ超特化他低めという極端なものだった。全てが高い晶がいた為気付けなかったが、あのステータスでは普通だったらまず体力が持たないだろう。


 まあ、実力が伴っていたかどうかは別の話だが。と言っても、対人を繰り返していた忍と対魔物を繰り返していた俺じゃあ根本が違うのではあるが。もしもステータスが同じな状態でタイマンをやったらどうなることやら。……こんどステ弄ってやってみようかな?


 それはさておき。フローレは、そんな忍の影の努力を見て完全に惚れてしまったという。それが嘘ではないことは、その顔を見れば明らかだ。


 仮にも、ハーレム作ってるとか言われている俺だ。その程度なら、まだ判別は可能できる。


 そうなると、忍の恋は果てしてどうなることやら……。あいつが俺みたいなルートを辿るとも思えないから、きっとどっちか1人を選ぶ事になるが……。


 『……ああ、そういう事?』


 『?何がだ?』


 と、そんな事を悩んでいると。フィールが、唐突に念話で話しかけてくる。なぜに念話?と聞きたくもなったがまずはその内容を聞き返す。


 『……フローレの想い人の、シノブ。確か、好きな人がいた気がする』


 『あれ?お前それ何処で……ああ、そうか。お前盗み聞きしてたなそう言えば』


 フィールだけは、俺が悩んでいた理由に気がついたようであった。記憶を辿ってみれば、あのときフィールは話を盗み聞きしていた。何処からかを聞いてはいなかったが、そのあたりも聞いてしまったのだろう。


 『で、念話な理由は……それなら察しはつくか。大方、彼方の雰囲気を壊さないためだろ?』


 『うん。……あの雰囲気で、そんな事をいうのはちょっと』


 『激しく同意だな』


 流石のフィールでも、恋話で盛り上がっている二人に水を差すのは何処か気が引けたようだ。


 なお、現実を知らないビアンカは今しがた彼方の会話に入ったところで、俺たちの念話には気づいていない。まあ、どっちでもいいのだが。


 『……ちなみに、カイトはどっち派?』


 『んな事言われても。……まあ、俺的には親友の望み通り、百華派の方かな』


 『……なるほど。ちなみに、私はどっちでもいい』


 『関わり薄いもんなぁ』


 そんな感じで、向こう三人が恋話で盛り上がっている中俺とフィールの二人は念話で大した意味のない会話を続けていく。ただの時間潰しだが、それはそれで楽しかった。


「……そう言えば、カイトさん達は試練?というものを探し回っていると聞きましたが……そんなものが、この帝国に存在するんですか?」


 だが、それで大分時間が過ぎた頃、唐突にフローレが話題を変える。今までの話とは一変変わって大分真面目な内容の話へとだ。


「いや、無い。俺たちが帝国にいるのはそれとは別件だ。まあ、重要性が高いものではあるが」


「……それは、聞いても良いことなのですか?」


 フローレは、俺たちが試練をクリアするために帝国に来たと思っていたようだが……。今回の俺たちの目的は帝城にあると思われる破壊神デザストラについての情報を探すためだ。


 スペディオ達を止めることが出来なかった場合現れる最凶災厄の敵。その強さは予想がつかない。俺が手も足も出なかったアウィスでさえ、同等の強さを持つ英雄二人とともに戦った末に封印するのが限界だったのだから。


「……遅かれ少なかれ伝えなきゃいけない事だからな。全部教えるさ。それを知って、如何するかはお前に任せるけどな」


 俺は、そう言った後フローレに今の旅の目的を伝えていく。


 世界を滅ぼしかけた破壊神の情報がある事を。


 それは、スペディオ達が復活させようとしている邪神の事だが、本質は邪神なんかではなく全ての神を統べる最高神に位置する事を。


 そして、俺たちが探していた試練は、その破壊神に対抗するための力を付けるためのものだと言うことを。


 そのほかにも色々手に入れた情報はあったが、俺はそれは全て余すことなく伝えた。

 

 それを聞いたフローレは、物凄く顔を引きつらせていた。何せ、一つ行動を間違えるだけで自分達の生きている世界が滅ぶ道に進みかねないのだから。


「これが、今まで俺たちが集めた情報の全てだ。何時までも彼奴らに隠しとくことは出来ないが、伝えるタイミングとかはお前が決めてくれ」


「……そんなこと言われても。こんな相手、どうすればいいんですか」


 フローレの口から出た言葉は、最早諦めに近いような声。だが、俺はその言葉を否定する。


「確かに、そんな奴が復活したら勝てる自信は無い。……だが、まだそいつは復活してはいないんだ。それを復活させようとしてるのは今の所三人だけ。そいつらさえ止めれば、復活は防げるんだ。諦めるのはまだ早いと思うぞ」


 あくまで、世界が滅ぶのはその神が復活した時。そして、その神は未だ封印されたままなのだ。それさえ止めれば、この世界も地球も滅ぶことは無いのだから。


「破壊神やその配下には勝てなくてもだ。スペディオ達なら、遭遇できれば俺たちでも倒すことは出来る。だからそんな顔するなって」


 スペディオ達なら、恐らく勝つのは容易だ。そしてそれを倒せば心配する事はもう無くなる。


 俺は、そうフローレに伝える。それを聞いたフローレの顔はまだ引き攣ってはいたが、心なしかマシなものにはなっていた。


「……大分長い事話してたな。もう日が暮れてるみたいだし」


「え、ええ……そうですね。カイトさん達は、これからどうするんですか?」


 そんな話をして気がつけば、外はすでに暗くなり始めていた。街灯なんてない世界なのだから、そう時間が経たないうちに外は真っ暗闇になることだろう。


「流石に、そろそろ宿に戻るつもりだ。……じゃあ、2日後にまた会おう」


「またね、フローレちゃん」


「ええ、それではまた」


 だから俺たちは、話もちょうど終わった所だったので屋敷を後にする。フローレともそこで別れるが、どうせ二日後には会うことになるのであっさりとした挨拶しかお互いにしなかったが。


「……フローレさん、人としての器はいいと思うんですけど……あれ、王女としてはどうなんですかね?」


「少なくとも、威厳は無いな。……でも、民衆からは慕われるいい王女だとは思うぞ?」


「……本人への負担が大きそう」


 そして宿へ向かう道中、ビアンカとフィールからみたフローレの印象を聞かされる。


 2人としては、「慕われるけども疲労が溜まりそう」という印象を受けたようである。……すごい、不名誉な印象な気がする。


 だが、それを否定しようとした際に、美雪から「そういえば3日連続で徹夜してた時も有ったよ」と聞かされ、否定する余地はなくなってしまったのだが。

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