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4話 お前が原因か……!

 声を上げたのは俺と美雪の二人だ。フィールやビアンカは直接の面識は無いものの、俺たちと関わりがある事は知っているために大分驚いた顔をしていた。


「お、流石に驚くか。なにせ、マンサーナ王国の王女様だからなぁ」


「俺達の場合は、そういう問題じゃねえんだよ……!」


 ブラドは驚いた俺たちの様子に何か勘違いをしている。此奴は依頼者の立場に驚いたのかと思ってるようなのだが、俺が驚いてるのはその人物そのものだ。


「何よ。何かダメな事情でもあるの?」


「無い。無いんだけどな……」


 そもそも、何故王女が帝国領にいるのか。その辺りを質問したいのだが、その前にこいつらの誤解を解いておこうと思う。


「……なあ。美雪が自己紹介した時、俺の恋人以外にもう一つ言った言葉、忘れてはいないよな?」


「……僕とした事が、流れに飲まれて覚えていないだって!?」


「ハイド支部長、それは覚えときましょうよ……。かく言う俺も同じく覚えてないんですが……」


「完全に恋人発言に気を取られてたわね。私もだけど」


「……アホ?」


 そして、その答えを誰も聞いていなかった現実。フィールがつい三人をアホ呼ばわりしても無理は無い。


「あー、うん。美雪、もう一回自己紹介よろしく」


「はーい。私は白井美雪。"王国の勇者"で、海斗くんの恋人だよ」


 そして、そんなアホ三人に対してもう一回自己紹介してもらう。アホにも気づけるように、"王国の勇者"というところを強調しながら。


「……王国の勇者!?」


「5ヶ月位前に異世界から召喚されたっていう、あの!?」


「あああああ!?確かに黒髪に黒目って、前に入ってきた情報そのままじゃあ無いか!そうじゃない容姿の二人が居たから見落としてたのか!?」


 そして、三人はそれを聞いてようやくその事に気付く。正直、今更な感じもするが。


「まあ、そういう訳なんだよな。フィールとビアンカは違うが俺は似たような感じだから、王女とは一応面識もある。……まさか帝国領にいるとは思っても無かったがな」


「って、それさっさと言いなさいよ!なんで隠す必要あるのよ!」


「言ったら騒ぎになるし、俺自体は訳あって一週間も経たないうちに城から出たからなぁ。勇者として世間には知られてねえし、黙ってたほうが色々と動きやすいし」


 シルフィアは俺に怒鳴ってくるものの、俺はそれを受け流す。言葉の通り、俺が城にいた期間は殆どないから顔は知られていない。なら、わざわざ明かす方が面倒事が増える気しかしない。いや、明かしてなくても面倒事が起こっているのだから然程変わらないのか?


「……で、受ける受けないは別にして、だ。なんで王国の王女が帝国領になんかいるんだ?その辺は説明して欲しいんだが」


 そして、俺は未だに驚いているハイドに向けて質問を投げかける。それに対して、ハイドはその理由を語り出した。


「っ、ああ、その理由か。話すと少し長くなるんだけど……なんでも、魔族の新しい、そして重要な情報が入ったらしくてね。それに関して色々と話し合うのが目的らしいんだ。本来なら、既に帝都に到着している筈だったんだけど……道中で、トラブルが発生した」


「トラブル、ですか?」


 ハイドが重々しい言葉を告げる。恐らく、そのトラブルというのがこの護衛依頼が発生した原因なのだろう。元々王国から護衛が出ていた筈なのに、ここで新しく護衛を雇うほどなのだから。


「ああ。道中にあった村、ミイム……王女様がそこに着いた時、その村は襲撃されたんだ。魔王軍幹部、スペディオによって」


「……なんて厄介な」


 ハイドの告げたトラブル。それは、俺たちの旅の目的と全く無関係では無かった。

 

 魔王軍幹部スペディオ。正確には"元"がつくのだが、最高神の一角である破壊神を復活させようとしてると思われる危険因子だ。魔王のジョーカーからも見つけたらぶちのめしてくれとは言われている。


 帰る手段を探す旅とはいえ、破壊神の復活も止めなければいけない。それを復活させようとしている者を、この少ない情報を追って探すべきなのか。非常に、悩むところだ。


「……どうしたんだ?険しい顔してるが」


「相変わらず、面倒な事態になるなーって思っただけだ。まあいい、続けてくれ」


「……?まあ、それでだ。本来の護衛が身を張って時間稼ぎをして王女様を逃し、そしてここフィーネに辿り着いた。……王女様が此処にいる経緯は、ざっとこんなものだ」


 要するに、「帝都目指したけど襲撃されて護衛全滅、でも行かねば!」みたいな感じだろう。……さて、どうしようか。


 王女を護衛するメリットは二つ程ある。一つは、スペディオと遭遇し倒せる可能性が高いこと(……・・)。彼奴らは、デザストラの復活以外に人族と魔族を戦争させようとする動きがあった。そう思うと、王女の殺害は人族を焚きつけるきっかけとしては充分すぎる効果だ。


 二つ目は、例え何も無かったとしても帝城にすんなり入れるであろうという事。帝都に向かう目的は三英雄の残した書物が城にあるからであり、それがスムーズに進むのは大分大きい。


 だが、デメリットも同じ位に有るのが痛いところだ。


 流石に、王女やそこの二人を連れた状態で空を飛ぶ事は出来ない。そうなると、移動の時間は大分増えてしまう。スペディオと遭遇しない可能性を考えるとそのロスは割と大きい。


 そして、王女を護衛するとなると多少なり目立ってしまう。その場合、スペディオを倒したとしても残りの敵、レイアとコルダと名乗る奴らに目を付けられる危険がある。全員をどうにかしない限り危機は去らないのだから、そうなると面倒な事この上ない。


 損得がどちらも多く、決めるのに非常に悩むところである。無意識に目を閉じて長考モードに入る程に。


「……海斗くん、少しいいかな?」


 だが、そんな俺の肩を叩きながら美雪が声を発する。少し、申し訳なさそうな声でだ。


「なんだ?」


「……海斗くんが、この依頼を受けようか悩んでるのは分かってる。だから頼みたいの。……この依頼、受けて貰えないかな?」


 美雪は、悩んでるなら依頼を受けて欲しいと言う。そしてその理由を聞く前に美雪は言葉を続ける。


「……海斗くんが行方不明になってから、その事情を知ってる話し相手にフローレちゃんがいてさ。初めは微妙な空気だったけど、話してる内にだんだん仲良くなっちゃって……」

 

「……そういうことか」


 その内容を聞いて、どうして美雪がその依頼を受けたいかを知る。そしてそれは、損得を考えての答えでは無い。


 友達だから、助けたい。つまりはそういう事だ。軽い考えと言えば、そうかもしれない。


 だがそうして、美雪に恐らくこの世界に来て初めての友達を見捨てさせるのは俺には出来そうに無い。


 夢幻列島に行き、2人と出会い、人との繋がりの重さというものを再認識させられた後では尚更だ。


 それ故に、俺の答えはすぐに決まった。


「……俺はこの依頼受けようと思う。フィールもビアンカも、それでいいよな?」


「構わない」


「勿論ですよ」


 俺は、一応フィールとビアンカに了承を取る。二人ともそれに対して即答して返してくれる。


「……まあ、そういう訳だ。王女護衛依頼、受けてやるよ」


「海斗くん……!」


 俺はハイドの方に向き直りそう告げる。それに応じて美雪は嬉しそうな顔をしていた。


 今思うと、美雪が俺たちについて来てから特にこれといった事はしてやれていなかった。なら、この位は構わないだろう。それでこんな顔をしてくれるなら、それくらいは安いもんだ。


「……すまない。ブラドをサシで倒せる程に強い君がいれば、僕としても非常に助かる」


 そしてブラドは深々と頭を下げてくる。確かに、実力を知っている此奴からしたら俺たちの護衛参加は渡りに船だろう。


「だが、感謝なら美雪にするんだな。……此奴が居なかったら、多分依頼は断ってたしな」


 俺はそんなハイドに向けて、美雪の頭をポンポン叩きながら言う。……そこに一瞬だけ嫉妬の気配を送ってきたフィールとビアンカには空気読めと言いたいところだが、今のところは黙っておく。


「まあ、私に言われても困るけどね。友達だから、傷ついて欲しくないから助ける。ただそれだけの理由だから」


 美雪にとっては、ただそれだけの事だ。もっとも、そのそれだけの理由で決めたことによって助かる者もいるのではあるが。


「……頼もしいのだけれどもそれは置いておいて、よくもまあこんな人前でイチャつけるわね」


「それは同感だ。……それでいてあの底の見えない実力だからなぁ。どうにもならん」


「聞こえてるからな?護衛の道程での嫌がらせを希望するか?」


「「っ、止めろ!!」」


 そして、そんなハイドと美雪を尻目にそんな失礼な事を言っている二人にごくごく僅かな威圧を入れていく。と言っても、背筋がゾワッとする程度のものだ。


「まあ、その辺りは俺の気分次第だな。……で、出発までたったの3日しか無いんだろ?出発時間とか集合場所とか道程とか色々と教えてもらわなきゃいけない情報が多いんだ。出来る限り手短に教えてくれると助かる」

 

「えっ、ええ!教えるわよ!教えるからそのゾワッとするの止めなさいよ!心臓に悪いから!」


「へいへいっと」


 俺はそんな適当な返事をしながら、ブラドやシルフィアから色々と必要な情報を聞いていく。それらを簡単に纏めると

 出発時間時刻 3日後の夜明けと共に

 集合場所 北門の外

 道程 帝都まで一直進 馬車で一ヶ月も掛かる

 こんな感じだ。特に距離が長いのが辛いところである。


「……道中に街とかは無いの?」


「昔はあった。だが、以前にスペディオの襲撃によって壊滅させられて今はただの廃墟だ。……そのせいで、帝都行きは冒険者でも連れて道中で魔物とかを狩って食料調達をしながら進むルートか、東から大きく迂回するルートを選ばなきゃいけねえんだ。後者は安全だが移動期間が2倍近くなるし、前者は距離は短いものの危険が付き纏う。今回は急を要するって事で前者を選ばざるを得なくなっちまったがな」

 

「まあ、移動期間が短い方が俺的には助かるが」

 

 道中に街が無く、物資を補給出来ないのは普通なら危険極まりないだろう。もっとも、空間魔法が使えて食料が保存できる俺にとっては無問題なことだ。


「楽観的ね。最悪の場合食べるものが無くな……ああ、そういう事。空間魔法持ちだったわね、あんた」


「そういう事だ。まあ、1ヶ月の間全員分の食事を出せるほど備蓄は無いと思うが」


 なお、今シルフィアに言ったことは真っ赤な嘘だったりする。先日夢幻列島に行った時に襲ってきた魔物を返り討ちにした時に大分貯蓄は増えているのだ。あの時は好戦的な奴が増えまくってて大分辛かった。


 なお、そんな嘘をついた意味はあまり無い。空間魔法の標準的な容量が分からないとか、食べれるには食べれるものの地上には無いものばかりだから事情を知らない此奴らに出すのは気がひけるとかそれくらいのものだ。


「まあ、馬車に結構な量は積み込めるし、通る人が少ねえなら魔物は割と生息してる。だから食料問題はほぼ無いに等しい。心配は要らねえよ」


「……ぁ」


 だが、シルフィアの言っている最悪の事態はまず起こらないから空間魔法の出番は無い……とブラドは言った。だが、それに対して俺たち以外には聞こえないほど小さな声をビアンカが漏らしていたが。


「どうした?」


「いえ、何でも無いです……」


 その顔は、誰に対してかは定かではないが何処か申し訳なさそうな顔であった。此処では聞かないほうがいい予感がしたので、それ以上の追求は今の所は止めておくが。


「まあ、それならいいが。……で、事前に知っとかなきゃいけなさそうな事は大体分かったから、俺達はそろそろ帰らせてもらうぞ」

 

「ああ、構わない。今回の件は本当に感謝する」


「魔族からの襲撃があった時は俺たちだけじゃ辛いからな。存分に頼らせて貰うぜ」


「勿論、私達も全力は尽くすけどね」


 俺はそう言いつつ部屋の出口へと向かっていく。三人もその俺の後について来ている。


「では、三日後にまた会いましょう」


「……そっちも準備、忘れずに」


「じゃあ、またね」


 そして、俺たちは大分長かった依頼の説明を終えて、ギルドを後にしようとしたのだった。


 

 

「……すまん。本題の宿屋探し忘れてた」


「あんた何やってんのよ……ほら、オススメの場所幾つか書いたから好きな所選びなさい」


「ああ、ありがとう……」


 ……あくまで「しようとした」であり宿屋の場所を聞き忘れていたためにもう一度ギルドに戻る羽目にはなってしまったのだが。

2章で存在を出してから、ようやく物語に絡んできたスペディオ君。果たして、何時になったら姿を見せれるのだろうか。

もっとも、姿を見せたところで海斗達に勝てるかと言ったら……。

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