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1話 出発の刻

五章の初めだというのに少し短いです。

「……ちょっと先行っててくれ。直ぐ追いつくから」


 龍人の里の外。帝国領へ向けて出発する前に俺は3人に言う。それに対して三人は疑問の声を上げる。


「え?一体如何したの?」


「何かやり残した事でも?」


「……他の奴らの気配は感じないけど」


 フィールだけは他の気配を探っているらしいが、それは感じていないようだ。まあ、気配に関するという事だというのは合っているのだが。それが知らなきゃ分からない距離だというだけで。 


「まあ、こっちの事情だ。直ぐに終わるから、先に行っててくれ(・・・・・・・・)


 だが、それはフィールには悟らせたくはない。今回の一件で龍人への嫌悪は高まっている筈だから、集まっている三人の龍人に関して知られるとどうなるか分からない。


 だから、俺は若干強めに言葉を告げる。それ以上は追求するなと。


 『ビアンカ、美雪。お前らからも頼む。特に、フィールに知られると厄介な案件だからな』


 『ああ、そういう事ですか』


 『分かったよ。でも、早めに済ませてね?』


 そして外堀も埋めるために、ビアンカと美雪には念話で事情を軽くだが伝える。二人ともそれで大体察したようで、フィールを説得しにかかる。


「行きましょう。何かあったとしても、この辺の奴らがカイト様をどうこう出来るわけでも無いですし」


「それに直ぐに終わらせるって言ってるんだから、そこまで心配する必要は無いって」


「……なんか仕組まれてる気もするけど、まあ分かった。じゃあ、先に行かせてもらう」


 フィールはその二人の様子に眉を潜めながらも諦めた様子で飛び立つ。それに続いて二人も飛行板を取り出して宙に浮かぶ。


 そして、三人の姿が見えなくなった後。俺は相当遠くでヒソヒソしている三人に対して魔法を発動させる。


「呼び寄せよ、『サモン』」


 俺のその声と共に、遠くにいた三人……ランド、カエルム、フランの三人が俺の視界内へと転移してくる。無理やりテレポートさせたのだから当然だが。


「「「!?」」」


 三人は視界が急変したことに、そしてその目の前に俺がいる事に驚愕の表情を浮かべる。だが、俺はそれを無視して三人に問いかける。


「で、何しに来た?あの日、俺たちが戦ってる間に、フランの能力については聞こえた。それを使って、何をしていた?」


 知らなければ他の気配と混ざって判別がつかなかっただろうが、その力について知っていれば話は別だ。だから、事前にサーチで調べてみたらランドとカエルムを含めた三人で盗聴していた事が判明した為にここに呼び寄せた。


 そしてその問い掛けに対して答えたのはフランだった。まるで、今にも泣きそうな声で、泣きそうな顔をしながら。


「……あの事件を経て、フィールが私達にどれだけ怒ったか。どれだけ恨んだか。それは、嫌という程分かった。……でも。それでも、諦めきれなかった」


「諦めきれなかった?」


「うん。……今でも、時々夢に見るの。6年前の、笑顔を見せていたフィールの姿を。あんな事件が起こらないで、楽しく暮らしてる幻を。もう戻れるはずないのに、そんな未来を諦められなかった」


 起こり得ない未来。そして、自らが絶った未来。しかし、フランはそれを望んでいる。それがもう、決して届かないものだと分かった上で。


「……俺もカエルムも、同じ気持ちを持ってた。だから、未練がましくあんな所にいたんだ。何かが出来るわけでもねえが、そのままフィールが行くのを見過ごしたらもう二度と会うことはないと思ったからな」

 

 だが、屋敷で言ってたことをフランが伝え、直接見送るのは精神を逆撫でするだけだと思い、遠くで聞いていたのだと。それくらいしか、出来ることがなかったと。


 俺はその声を聞き、その後冷たく言い放つ。


「……お前らも既に感じているとは思うが、もう全部手遅れだ。6年前の惨劇も、ついこの前の惨劇も、もう決して消えることは無い現実だよ。誰がなんと言おうともな」


「……っ」


 フランが、それを聞いて拳を握り締める。分かっていても、それを言われると心は揺さぶられる。それほどに余裕がないということだが、俺は言葉を続けていく。


「ランドの言う通り、今日ここを離れたらもう二度と会うことは無いだろう。……だけど。また何か悲劇が起きた時に、お前らが命を懸けて想いを伝えれば。少しくらいは、フィールの心に届くかもしれないな」


「……命の懸けて、か」


 完全には戻れなくても、少しだけならどうにかなるかもしれないと。だが、その少しには大きすぎる代償が必要だとも伝える。


「6年間、フィールは生と死の間を彷徨い続けてたんだ。その元凶達が命を懸けない限り、想いなんて届く訳が無いだろ」


 それは俺の予想だが、間違ってはいないと思う。それほどまでにフィールの傷は深いのだから。


「まあ、ここからはお前らの問題だ。俺が首を突っ込むことも出来ないし、突っ込んだ所で意味はない。精々悩んで、答えを出すといい。……俺はそろそろ出ないと彼奴らを見失うからもう行かせてもらうけどな」


 俺はそれだけ言い残すと、空へと飛び立ちフィール達が飛び去って行った方向へと飛び立つ。そろそろ気配が途切れそうで、かなり急がないと追いつけなくなるのは時間の問題だった。


「……俺たちがどうにかしなきゃいけない、か。確かにその通りだな。これは、俺たちの問題だしな」


「だが、今の儂達にそれを成せるだけの力は無い。……フィール達には届かなくとも、力はつけねばならんようだな」

 

「そう、ですね。今の私たちは、何も出来ないくらい非力だから……」


 だが、三人の姿が見えなくなる直前。そんな三人の呟きは、俺の耳にはっきりと届いていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「はあ、よーやく追いついた」


「大分時間掛かりましたね。……まあ、私達も結構速度出してたので仕方ないかもしれませんが」


 結局、直ぐに追いつくなどと言っておきながら追いつくのに1時間近くを要した。全力で飛んでたもののフィール達が大分早くなかなか距離が縮まらなかったのが主な理由だ。


「……ここから、大体10日位は掛かる。だから、体力は温存していかないと」

 

「まあ、確かに国境跨ぐからなぁ……。もっとも、さっきまでの飛行で温存も何も無いくらいに疲れたが」


「出発初日から気が緩んでますね。まあ、いつもの事なんですが」


「確かに。でも、魔物も勝手に避けてくし問題は無いけどね」


 もっとも、体力が減っても魔物と戦うわけでも無いのでほぼほぼ問題は無いのだが。それに、戦うことになったとしてもこの辺の魔物ならどうとでもあしらえる。


「所でフィール。その四枚羽(・・・)は何か意味あるのか?飛ぶだけなら前と同じでいいとも思うんだが」


 俺は話題を変えてフィールについて聞いてみる。今は部分龍化して飛んでいるのだが、その姿は先日見せていた四枚羽の姿だ。翼が一対増えただけなのだが、その違いが微妙に気になった。


「……分からない。寧ろ、今まで通りの二枚羽の顕現ができなくなった。理由は分からないけど」


 だが、その意味は本人すらも分からないと言う。今まで通りやろうとしても、如何してもこうなってしまうと。


 しかし、それに対してビアンカが口を挟んだ。


「単純に位が上がっただけじゃないですか?事例が無いので詳しくは分かりませんが」


 位が上がった。ビアンカはそう言ったものの、どういう事かが分からない。なので、俺はビアンカに聞いてみる。


「どういう事だ?」


「四枚羽の龍……それに適合するのは、確か最高位に位置する龍だけだと聞いたことがあります。だから、フィールさんが強くなったことでその位に押し上げられたのだと思います」


 最高位の龍。俺が知っている中だと、夢幻列島で相手したミラージュドラグーンがそれに当たる。確かに彼奴は四枚の翼を持っていたが、それにそんな意味があるというのは知らなかったな。


「……初めて聞いた」


「そういう事例は無かったようですからね。龍人でその境地に至ったのはフィールさんが初めてかもしれませんね」


「……嬉しいやら、悲しいやら」


 未知の領域に足を突っ込んだ事を改めて自覚させられ複雑な表情を浮かべる。だが、そこには言葉とは違い悲しいという感情は微塵も感じない。


 それに関しては、夢幻列島で俺と会ってから既に吹っ切った話だ。化け物だから、彼処でも生き延びてこれた。拒絶されるのは別にしても、化け物扱いされる事に関しては特に何も感じないのだろう。俺も同意だが。


「まあ、違いは何かしら有りそうだし……そこら辺はおいおい調べたほうがよさそうか?ステータスを見たところで変化は無かったけど他の部分で変化はあるかもだし」


 なお、フィールが治ってから鑑定でステータスを覗いて見たものの、三ヶ月前と比べて色々と強くなった以外特に情報は無かった。スキルの欄も、レベルの変化を除けば追加されたものは見当たらなかった。よって、その辺りは手探りで探していくしかない。


「……うん。特にあの闇……強力だけど、諸刃の刃になるあの力は、しっかりと知らないと」


「それと、あの言葉……魂への命令と言ったらいいのでしょうか?それに関しても、フィールさん以外には出来ませんでしたからね。それも何かしら関係があるでしょう」


 あの日見た力の大半はフィールは使えるようになったものの、その本質が分からないままだ。それが分からない武器は、いざという時に自らに牙を向けかねない。


「ですが。……移動中に悩んでも仕方がないですけどね。どうこうできる訳でもないですし」


「それはそうだが、そういうのは言わないお約束だろ」


「……でも、それが私達の普通」


「そんな普通本当はダメなんだけどね」


 だがそれに対してビアンカが放った言葉は身も蓋も無い言葉だった。しかも、事実だから何とも言えないおまけ付きで。そのせいで、緊迫感というものは一切無くなった。だが、そのおかげで空気が和らいだともいえるが。


「……でも、言ってみたのはいいのですが。それ言ってしまうと話題が無くなってしまいましたね」


「お前がそれを言うか。で、マジで話題無くなったじゃねえかよ」


「……アクロバティック飛行でもして盛り上げる?ミユキが」


「ちょ、ちょっと!?私そんなの……あ、出来るかも」


 突然話題を振られた美雪は戸惑いながらも、飛行板からまるで体操のフィニッシュみたいな飛び上がり方でジャンプし、そのまま寸分違わず飛行板に着地する。

 

 それに対して、俺たち観客3人からは一応の拍手が贈られる。技術的には俺らでも出来そうな気はするが、それをあの流れからできるその精神は素直に凄いと思えた。此奴も大分ズレてきたなとも感じてしまっているが。


「……やっぱり日本にいた時とは感覚が違うなぁ」


「そんな今更な」


 だが、その辺は本人が一番気づいていない様子であった。まあ、俺だって似たようなものかも知れないけど。


 そして、そんなこんなで旅路とは思えない程騒ぎながら適当に空を飛び続け、その日は終わり。


 次の日も、そのまた次の日も同じように飛び続けあっという間に10日が経過。魔物すら来ないため何事も無かった。


「ようやく着いたか。水上都市フィーネ」


「……綺麗」


「美しいですね……いささか不便そうな気もしますけど」


「ベネチアみたいなのを予想してたけど、大分違うね。でも、私はこっちの方が好きかな」


 帝国領に来て初めての街、水上都市フィーネに到着した。

帝国編スタート。今回の章は、前章とは違ってシリアスな雰囲気にはあまりならないとは思います。精々、最後の方だけの予定です。

基本的に、ネタ多めの章のつもりなので。

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