学園案内Ⅱ
結局、グレンの気持ちの真意はニーナにはわからない。しかし、彼は自分よりも。圧倒的に強い気持ちで[天剣祭]に臨んでいるのは事実。あのー最強の刀で。けれども彼はきっと。弱者として相手にされるのだろう。それもそのはず。なぜなら。
なぜならー誰一人として彼ーグレンの力を知らないのだから。故に彼はきっと。勝つ。勝ち上がる。天剣祭の本戦に出る。ならば自分はもう一度彼とその武の頂を決める決勝の場で、刀を交えると秘かに誓った。
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かなり広い施設内を案内し終えた頃、辺りは既に茜色に染まっていた。一歩前を歩くグレンの背中をニーナは黙って追いかける。しばらく歩くと、とある部屋の前に着く。
[000]と書かれた表札。その下には恐らくグレンの名前が書かれたネームプレートがあるはずだ。ーというのも。そのネームプレートがあるべき場所は、真っ黒に落書きされていて名前が読み取れなくなっていたから。それが、グレンのこの学園での扱い。
いないものー存在しない物として。だから部屋番号は[000]なのだ。
「まぁ、中は普通だから大丈夫だよ」グレンはそう言ってドアを開ける。
「へぇー。綺麗なのね」正直、期待はしていなかったのか、ニーナはそう口に出す。もちろんグレンもきっとその心中を察して何も言わない。
「あぁ、ニーナ。君には見せておかなきゃね。ー来い、絶剣―」
彼は室内で絶剣を呼ぶ。そして。
「戻って良いよ」グレンのその言葉に反応したのか、光りだす。それも一瞬。ニーナが再び目を開けた時、そこに絶剣は無く―代わりにグレンと同い年であろう青年が立っていた。
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