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無能力者の英雄記  作者: 遠山 麟吏
選抜戦編―1
1/16

才能無き天才

弱者は強者に勝てない。

負けは負け。


それに対しての異論は無い。

だからと言って、努力は才能に勝てないという言葉には納得がいかない。それは、努力した者を。天才を、才能を、それらを侮辱していることになる。


西暦3500年、四月一日。100年戦争―即ち第四次世界大戦に終止符が打たれた。


それから更に100年。今では開催120年目を迎える世界一の大会


[天剣祭]が、行われていた。

この大会は、魔法士、剣士、魔剣士が己の武を競い、勝利の頂を目指すものである。


ルールはシンプル。

一、如何なる怪我についても、運営は一切の責任を負わない。


これだけである。イカサマもし放題なのだ。故に、勝利の頂に立った者でも、その栄光を手にするためには傷を負ってきた。


しかし、去年の大会でその常識は覆された。

無傷、不敗、完全勝利。その人物を人々は[絶対王者]―[ミスター・パーフェクト]と呼んだ。その人物は今年も参加している。その人物の名前は、[グレン・ヘル・ガルドス]という。これは、彼が最強になる前の話し。これは、昔の話し。だから、どうとでもできる話し。それでは皆様、ご静聴―


**


みんながこの学園、[私立・青藍学園]の二年生に進級した頃、俺はまだ一年生だった。簡単に言えば留年である。その理由はよく理解していた。単位の不足。それだけだ。この学園では、生徒個人の個性を伸ばすことを主として指導している。しかし、俺は個性と呼べる物が無い。強いて言うならば、俺の実家の剣の流派[炎戒流]くらいだろうか。しかし今時、魔剣士ではなくただの剣士である俺に、この学園は教育と呼べる物をしてこなかった。魔力不足により、実技の授業は強制的に見学させられた。勿論不満を言うつもりなど無い。事実だから。真実だから。紛れも無い、現実だから。

故に俺は見学した。見て学んだ。

しかし、見学によって単位が落とされるとは知らなかった。

その結果が[留年]である。どうしてこんなことになったのか。しかし、やはり不満を言うつもりなど無い。仕方の無いことだから。などと愚考していると、新理事長[東堂・雅音]から呼び出しを受けた。「はぁー」とため息をつき、俺は寮の自室から出て行った。


**


理事長室に入ると、そこには理事長がいた。正確にはもう1人。

「紹介しよう。君のルームメイトである―ニーナ・ヴァレンタインだ。」と、雅音は言った。赤を基調とした着物に身を包み、艶やかな黒髪から連想される大和撫子などとはほど遠い。横暴かつ粗暴な振る舞いに初対面ならばまずドン引きだろうが、少なくとも俺は彼女と顔見知りだ。「ハァ?」と、俺が疑問を投げかけようとしたのとほぼ同時―。

「な、、、なんでですか!?理事長!私はこんな奴と同室なんて聞いてません!!」

こっちのセリフだ。しかし俺はその言葉を押し殺す。下手に口にすれば、きっと―。馬鹿にされるに決まっている。「無能が口を挟むな」と。

「はっ!!知るか、んなもん。嫌なら帰って貰って結構だ」雅音は馬鹿にしたように、ニーナに言った。「むぅ、、、!そこのあなたはどうなのよ!!」矛先がこちらへ向く。「いや、、、どうって言われても。ルームメイトっていうことは俺の部屋なんだし、元々俺が暮らしてたから、、、。あの、、、その、えぇと」ほぼ一年ぶりくらいだろうか。誰かと会話したのは。故に、うまく言葉が出ない。喉が喋るのを拒否している。


「面倒くせぇ。グレンが勝ったら同室。ニーナが勝ったら別の部屋を用意する。しかしこれだとグレンにメリットが無い。だからお前には、勝ったら進級に必要な単位の半分をやろう。つー訳で、試合だ!!1時間後に第四試験場な〜」と、それだけ言って雅音は俺らを追い出した。


**



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