85話
「さて、皆さんに集まって頂いたのは他でもありません。再び模擬戦をしようと思いまして」
あれから2年が経過していた。修行は順調に進みそれぞれが成長を果たしていた。その成果を試そうという事で、サーベルグが招集をかけたのだ。
「また模擬戦か。前とは違う所を見せてやるぜ」
ジュレスは14歳になり、身長が伸び155センチくらいになった。スラリと伸びた手足は健康的な色気を醸し出し髪も伸び、肩まで伸びた赤髪を後ろで一つに纏めている。顔のそばかすも消え、前よりも全体的に女性的な雰囲気を出すようになった。言葉使いは相変わらずだったが。
「今回はボクも頑張るよ」
クロは12歳になった。まだまだ年若いし成長期もまだ来ていないが少し身長が伸びその超絶的な美貌には更に磨きがかかっていた。髪の毛にはうっすらと青みがかかり、わずかに魔神化が進行している事を示していた。
「修行の成果を見せるいい機会だな。腕が鳴るぜ」
「そうだね」
「ああ」
そう言いつつも2人は1歩下がる。
「……なあ、なんでオレから距離を置くんだ?」
「ユータ君は男の子大好き♪ だからね!」
脇からコーデリックが抱きつく。当然男性体である。二人とも見た目は殆ど変わっていないがその周りを取り巻く覇気は全く別人と化していた。
「誰のせいで……! 誰のせいでこうなったと……!」
地団駄を踏むユータを冷ややかに見る2人。
「とうとう否定しなくなったね」
「ああ……」
「性癖を歪められたのには同情するが、クロに手を出したら殺すからな?」
平然と言い放つ片目。こちらも見た目は殆ど変わっていない。
「代わりといっては何だがジュレスならいつでも食っていいぞ」
「なあ、お前俺と契約交わしたよな? 絆で結ばれてるんだよな?」
疑惑の目で片目を見つめるジュレス。
「口ではこうやって嫌がっているが内心満更でもないみたいだからな。遠慮せずガバッと行ってしまえ」
「バッ馬鹿! 何を…… 誰がこんなスケコマシ……!!」
顔を真っ赤にして否定するジュレスの言葉に「スケコマシ……」と呟いて落ち込んでいた。
「ジュレスって結構分かりやすいよね~可愛い!」
「お前に可愛いとか言われても嬉しくねえ!」
「まあでも……実際可愛くなったよな、ジュレスは」
「え?」
とジュレスが何を言ってるんだこいつ? と言った感じで声を出し、
「え?」
とユータが何をそんなに驚いてるんだこいつは? と声を出し、
「「「え?」」」
と他のメンバーが何が起こってるんだ? と声を出した。
ジュレスは顔中から湯気を噴き出し赤面し
「な、何恥ずかしい事言ってんだよ……馬鹿」
消え入りそうな声で言う。
「い、いや別にそんなつもりじゃ……」
こちらも顔を真っ赤にしてボソボソと呟く。
「甘酸っぱいねえ~ 青春だねえ~」
とコーデリックがはしゃいで動き回っている。最近のコーデリックは本当に小悪魔と化していた。
「ジュレスが……ジュレスまで遠くに行っちゃったよ……」
クロがぽつんと1人寂しそうに呟いた。
「あのー そろそろ本題に入りたいんですが、よろしいですかねえ皆さん……」
若干呆れを含んだ声でサーベルグが言う。
皆がハッとなり、再び緊張感が戻ってくる。
「さて、今日は模擬戦と言っても二年前のとは違います」
「違うって……どういう事?」
「今度は全力でやります」
サーベルグの言葉に緊迫感が更に増していく。
「その為にこの闘技場に場所を変えました。ここなら全力を出しても被害は出にくいですからね」
「全力か……面白い。魔王皇の全力、ねじ伏せてやろう」
片目が笑い、
「まあこの人数で魔王皇1人に勝てないようでは先が思いやられるしな」
ユータが納得し、
「やってやるぜ!」
ジュレスが気合を入れ、
「負けないよ!」
クロが宣言する。
「あ、ちなみにボクは参加しないから。前も4人でやったんでしょ? だったら今回もそれの方がいいよ。……何よりボクまで参加したら勝負にならないからね」
サラッと言ったが、己の力に対する絶大な自信が伺えた。
「では、初めましょうか。今度はフライングはなしですよ」
サーベルグが始まりを告げ、戦いが始まった。




