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忌み子の世界救世記  作者: 紅月ぐりん
修行編
91/229

82話

ーージュレスの場合



「なるほど。確かにジュレス殿の身体能力は中級魔族程度のレベルにまで達しているようですね。これは驚くべき事です」

 ある程度ジュレスの動きを見ての一言だった。ジュレスが契約によって得た力がどの程度のものなのかを確認したのだ。

「そうなのか?」

「通常契約によって得られるパワーアップというのはそこまで劇的、という程のものではありません。せいぜいランクが1つ上がる程度です。中級魔族が上級魔族になる、といった具合にですね。充分それだけで凄い事なんですがね」

「二段階ランクアップした、という事か?じゃあ」

「より正確に言えば1.5ぐらいですね。もともと貴方は忌み子だったので普通の人間より強い身体と魔力を待ち合わせていたのです。元々の力が1.5。契約によって得た力が1.5。合わせて3という事ですね」

 あまり自分が特別だという意識は無かったがサーベルグが言うならそうなのだろうとジュレスは思った。


「さて、貴方には契約の仕組みを話しておきましょう。どうして契約を交わす事によって力が向上するのか分かりますか?」

「魂の一部を交換する事によって今までの自分になかった新しい領域を得る。それによって器が広がる……そんなとこじゃねえか?」

「流石ジュレス殿。正解です。魂というものは1人でいるよりも複数で集まっていた方がより強くなります。お互いがお互いの力を引き出し合うからです。それを1人の身体の中でやれるようになる。それが契約によって得るパワーアップの仕組みです」

「心を通わす事によって強くなる……」

「そうです。特に人と魔族という関係性はそれが顕著になる。何故か分かりますか?」

「元々お互いがお互いの無い物を持ち合わせている、理想的な関係だからだろ」

 サーベルグはコク、と頷き無言で続きを促す。

「人間は弱い身体と弱い魔力しか持たないが、強い魂を持つ。成長するからな。一方魔族は強い身体と強い魔力を持つ。しかし成人する頃には成長は止まりそれ以上進化する事は無い。種族によって強さが決まるのもそのせいだ。生まれた時から器が固定されているという事だな」

 パチパチパチ、と拍手を送る。

「素晴らしい。そこまで理解しているとは」

「伊達に魔族信仰やってねえよ」



「では、これはどうでしょうかね。魔王皇。魔族の頂点に立つ存在ですが、そうなるためには条件があります。それが何か分かりますか?」

「……持って生まれた才能じゃないのか?」

と言うとサーベルグは首を振り、

「いいえ。魔王皇の中でも戦闘においては最強と呼ばれている竜族の長ディンバーは竜族の中でも最弱と呼ばれるミストドラゴンの出身です。魔王皇になるのに、持って生まれた力は関係ない」

「まさか……契約だっていうのか? 契約を交わした者だけが成長し、元々の自分の限界を超え再現なく強くなると?」

「そうです。魔王皇は全部で5人いますが、その全てが契約を交わしています。それが契約の力の重要さを如実に示しています」

 衝撃の事実にジュレスは黙り込む他はない。



「貴方には契約の重要さを知っておいて頂きたかった。片目殿の為にも。絆を大切にして下さい。そうすれば貴方は、上級魔族レベルにまで上り詰められるかもしれない」

「どういう事だ? 契約にはまだ何かあるって言うのか?」

 契約を交わした者が強くなるという話は知っている。だが、忌み子とはいえ人間が上級魔族レベルにまで強くなるという話は聞いた事がない。

「今は秘密という事にしておきましょう。確実な話ではありませんし。ただ、その可能性があなた達にはある。という事だけ覚えておいて下さい」

「………………」

 納得した訳ではないが、サーベルグに語る意志がない以上は何も言えなかった。



「さて、契約についての話は終わりです。貴方には、他のメンバーとは違う独自の戦い方を覚えて頂きたい。科学に魔法を組み合わせた技術、魔導を使った戦い方を」

「化学と魔法を……つまりそれは、あの時の部隊と同じ戦い方をすると?」

「ええ。彼等は人間でありながら魔王皇の一角であるコーデリックを倒しています。それだけ魔導の力は強力なのです。しかも誰にでも使える。今後女神信仰者との戦いにおいて対策は必須でしょう」

「成程……それなら確かに俺にでも使えそうだな」

「むしろ、貴方が適任だと思いますよ。強力な力という物は使い所を誤ればただ破壊と悲劇を撒き散らすだけです。貴方なら正しく使いこなしてくれるでしょう」


 そうしてジュレスは魔導を使った戦い方の訓練に明け暮れたのだった。

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