70話
マガミネシア領内へ入り外壁を潜り首都メグロボリスへと向かう。
「外壁を抜ければすぐに居住区だと思ったらそんな事ねえな」
ジュレスが遠くを見ながら呟く。視界に広がるのは今までとさほど変わらぬ森林地帯だった。森林地帯を抜けるとだだっ広い平野が広がり延々と畑が続いている。所々に農家の人間や魔族がいて畑仕事をしている。
「ここはまだ外壁に近い外側の部分だしね。都市部はもっと内部まで行かないと」
「見る限り普通に人と魔族が共存して暮らしているんだな。いい国だ」
「ボク達もベッドの上では共存「もうそのネタはいいから」
途中で遮られて多少ムッとなったコーデリックだったが気を取り直して解説を続けた。
「この国は肥沃な大地に温暖な気候、堅固な防壁とあらゆる物が揃ってる。理想を絵に書いたような国だよ。都市部は世界でも類を見ない程に発展した大都市だよ」
「楽しみだなあ。早く見たいよ」
まだ見ぬ大都市をワクワクしながら待ち侘びるクロだった。
その後もクロ達は何重にも施された防壁と門を潜り内部へと進んでいった。最初の門を抜けたからなのか特に見とがめられる事も無く抜ける事ができた。
やがて、今までの防壁とは一線を画す高度な技術で作られたと思われる巨大な建造物が姿を現した。
「これは、この防壁は……! 科学技術が使われているのか」
「そう、この間の敵のように科学技術に魔法を組み合わせた特殊な技術で作られている。『絶対防壁』と呼ばれてて、悪意を持った者はこの内部へ入れないし、あらゆる攻撃を想定した防御が成されてる。大魔法どころか極大魔法すら跳ね除ける力があるらしいよ」
「馬鹿な……ではこの世界にはオレが来る前から高度な技術があったというのか」
「そういう事だね。キミがうちに攻め込んで来た時ボクは一瞬で首輪を爆弾だと気付いて抜き取ったでしょ? ボクは知っていたんだ。そういう『機械』がこの世に存在する事を。」
「そういえば……アレは下手に刺激を与えればそれだけで爆発する。構造を知っていなければとてもあんな解除の仕方はできない」
ユータが驚愕するように言う。コーデリックはウンウンと頷き、
「ボクの大親友が昔からよく研究を進めていてね。実験によく付き合わされたから」
「その大親友って……」
クロが尋ねるとコーデリックはニコッと笑い言った。
「この国を統治する魔王皇が1人、謀略のサーベルグその人さ」
絶対防壁をを潜るとそこには高度に発展した大都市、メグロボリスが姿を現した。
「うわあ~すっごい! 人がいっぱいだ」
「あれも、これも、ほとんど故郷と大差ない技術だ……」
喜ぶクロと驚くユータ。
「まあ、こんな技術は世界でもこことザンツバルケルくらいだろ。機械が使われてるのなんて世界でもほんの一部分だけだよ」
「そうだね。この世界では国力がそのまま技術力に直結してる。一部の超大国と特権階級くらいだよ。こんな景色を見れるのは」
「それだけ貧富の差、階級の差が激しいという事だな。持つ者に一極集中し、持たざる者には何ももたらされない」
「そういう極端な差を埋める為にも活動してるんだがな。俺達魔族信仰者は」
「共産主義という事か」
「キョーサン主義?」
聞きなれない単語にジュレスが聞き返す。
「財産や資源を共有しようという考え方だ」
「へえ、それはいい考え方だね」
「それはどうかな」
感心するように言うクロだったがユータはあまり良い顔はしていなかった。彼の故郷では決して共産主義が世界に平穏をもたらしているとは言い難いからだ。色んな考え方があり、それぞれが正義を主張し反目しあっている。
「まあオレの故郷の事はいい。今は目の前の光景を楽しもう」
「うん、そうだね」
ユータの言葉に賛同し、大都市に1歩を踏み出すクロ達だった。




