69話
ユニコーンの背に跨りカーバンクルを肩に乗せて移動していると、視界に変化が訪れた。
「あ、あれは……」
積まれたレンガによって構成された大きな壁が見える。
「マガミネシアは周囲を頑丈な壁で覆われた城塞国家なんだ。ここはその末端部分ということだね」
更に進むと入口付近は大きな門となっており、状況に応じて自在に開閉できるようになっているようだ。門の前には門番であろう2匹の魔物が配置されこちらを監視するように注意深く視線を向けていた。
「止まれ!」
声をかけてきたのはリザードマンだ。身長は150~160センチ程で成人男性の平均身長より頭一つ分小さいくらいだ。全身を硬い鱗で覆われておりその上に革鎧を着込み、腰に曲刀を差している。右腕には丸いバックラーを着けていた。
「どこの国の者だ? 何用で我が国に入ろうというのか」
声をかけてきたリザードマンにふふ、と笑いコーデリックは声をかける。
「ひどいなあ。ボクの事忘れちゃったのかい?あんなに深く愛しあったのに」
最初は胡乱げに見ていたが相手がコーデリックだと気付くと途端にうろたえ出した。
「コ、コーデリック様!?」
「そうだよジョニー。懐かしいねえ。キミはとにかく小さい男の子が好きで、交わう時も頑なに男性体をせがんだっけ」
その場の全員がうわあ……と思いながらも黙っていた。だがリザードマンの相方は我慢出来なかったようで、
「お前……時々変な目で見てくると思ったらそういう事だったのか」
と汚物を見るような目で相方を見つめていた。
「ば、バカ野郎! 成長した奴と鱗の生えた奴に用はねえ!」
再びうわあ……と全力で引く空気になり相方のリザードマンは至極真面目な顔で
「上に掛け合ってお前は首にしてもらう」と宣言すると顔を真っ青にして
「や、止めてくれ! うちには俺の帰りを待っている妻と子供達が……」
「テメエはホモだろうが!! 見え透いた嘘をつくな!」
などと喧嘩をし始めた。
「今のうちに通っちゃおうか」
「いいのかな……」
「ヘーキヘーキ」
門番が喧嘩をしているうちに通ってしまう事にする。先頭を歩いていたユータがブツブツ言いながらクロやジュレスの方をチラチラ見ている。
「そんなにいいものなのか……」
「悪いけどユータ兄さん、離れて歩いてくんね?」
などとジュレスが言ってクロの肩を掴むとユータから距離を取るように後ろに下がった。
ガーン! と背後に擬音が出そうな勢いでショックを受けるユータ。
「よく考えてみるとこのパーティーは男性化したコーデリックを含めれば半分以上がショタだし、ユータがそういう趣味に目覚めたとしても問題は無いな」
「いや問題大ありだろ」
ジュレスがツッコミを入れた。
「なーんだ! やっぱり男の子が好きなんだね? じゃあこれからはずっと男性体でいてあげるよ」
等と言って男性体に変化し腕を絡める。
「だから違うって! オレはノーマルだって! まだ!」
と抗議しているが前の時とは違って腕を振り払おうとはしていない。
「時間の問題だな……哀れな奴だ」
「だから『まだ』ってなんなの……」
「淫乱勇者め……」
三者三様の冷たい視線を送っていた。
「もぉ、そんなに冷たい態度取らないの! ジュレスも命の恩人がショタコンだからって嫉妬しないの」
めっ! と叱るようにコーデリックが言うが2人は頑なに認めようはしなかった。
「オレはショタコンじゃない!!」
「だ、誰が嫉妬なんてするか!」
だが言葉に出されて意識してしまったのか2人は互いに目を見合わせて
「な、何見てんだよ」
「い、いや別に……」
などと気まずそうにしている。2人とも若干顔が赤い。
「ふふ、ボクは別に3Pでも2号さんでも全然構わないからね。シたくなったらいつでもどうぞ」
「「誰がやるか!!」」
綺麗に2人の声がハモるのだった。
「ねえ、片目。さっきから全然置いてきぼりなんだけど……」
「クロ、お前だけは綺麗なままでいてくれ。私が汚すまでは」
クロは片目からも距離を取り、最後尾まで下がっていった。ガーンという擬音が聞こえたような気がしたが無視した。
「なんかおかしいよ、このパーティー……」
クロは1人嘆くのだった。




