68話
一晩中こってりとコーデリックに絞り取られたユータは大事な何かを失ったように打ちひしがれ生気を失っていた。
「大事な……大事な何かを失った気がする……」
「ひどーい! ユータ君だって楽しんでたくせに!」
プンプンと頬を膨らませてコーデリックは抗議した。
実際はコーデリックにただただ翻弄され踊らされていたようなものだが。
「それにしても……どうしたの? 急にその……エ……するなんて」
恥ずかしくてきちんと言えないクロだった。コルネリデア城で暮らしていた時はそういう事をしてるようには見えなかったのだが、何故急に『そういうこと』をし始めたのか。
ポリポリと頬をかいてコーデリックはウ〜ンと唸り
「それがねえ……どうにも最近その……したくて堪らなくなってね。ずっと我慢してたんだけど、遂に耐えられなくなって……ユータ君の童貞頂いちゃいました☆」
「止めろ! 言うな!」
顔を真っ赤にしてユータは叫ぶがコーデリックはどこ吹く風であった。
「恥ずかしがる事ないじゃん~昨夜はあんなに燃え上がったのに」
「だから言うなと言ってる!」
「あーハイハイご馳走様ご馳走様。それで? 何で急に発情しちゃったワケ?」
2人のやり取りを無視しジュレスが本題に切り込んだ。
「なんかクロに助けられて復活してから淫魔としての本能が呼び覚まされてきた気がするんだよね。なんだか身体の調子もいいし……なんか持て余してる感じだね」
「クロを通して魔神の強大な魔力を注ぎ込まれて力が増したんじゃないか?」
と片目が言う。その言葉を受けてクロが嬉しそうに提案する。
「じゃあぼくが沢山回復魔法をし続ければ皆強くなれるんじゃ」
「「「駄目!!」」」
全員にダメ出しを食らってしまう。
「忘れたのかいクロ? キミはあの時も無茶をしすぎて一週間も寝込む羽目になったんだ。もう2度とあんな無茶をしちゃ駄目だからね!」
「回復魔法は使用者の寿命を削る諸刃の剣なんだ。多用すればその分だけ確実に死に近付くんだぞ」
片目とコーデリックの2人に怒られるがクロは口を尖らせて言った。
「……でも、嫌なんだよ。何もできずに、ただ守られるだけなんて」
クロがそう口にした瞬間ジュレスの表情が強く歪んだが、その事に気付いていたのは片目一人だけだった。片目は何を言う事も無く沈黙を貫いた。
「とにかく、出発しよう。もうマガミネシア領へ入ってる筈だ。首都メクノボリスはもう近い」
「そうそう、早く出発しよ! 早く街についてフカフカのベッドでしたいし♪」
「……オレは付き合わんからな!///」
腕に絡み付いてくるコーデリックにユータはあくまで拒否を貫く。
「あ、もしかして同性相手の方が良かった? じゃあ次からはお尻で」
「やめろぉ!! オレはまだノーマルでいたいんだ!」
いちゃいちゃしながら(という風にしか傍からは見えない)歩いていく2人を見ながらクロがボソッと呟いた。
「『まだ』って事はいずれはするつもりがあるのかな?」
「言葉のアヤだろ。ほっとけ」
ジュレスが興味なさげに呟いた。
「まあ、おそらくロクに経験もない初心な青年が百戦錬磨の淫魔族の王を跳ね避けようなどまず無理だろうな」
「え、じゃあユータお兄さんはいずれ……」
クロが尋ねると片目は無言で合掌した。
「いやーー久しぶりにしたらなんかヤミツキになっちゃいそうだよ。クロに手を出せる訳もないし、いたいけな少年を虐めるのも可哀想だから、当分の間はユータ君に相手して貰うから♪」
「オレはやらんと言ってるだろう! 男体化して片目にでも相手してもらえ!!」
「私はクロ以外と肌を重ねるつもりはないぞ」
平然と言い切る片目にその場の全員が本気で引いているが当人は全くお構い無しだった。
「お前……マジだったのか、ヒカル=デンブ計画」
呆れて言うジュレスにあくまで真顔で片目は言う。
「おかげで将来の指標ができた」
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"! 俺の余計な言葉のせいでクロの将来が! 汚される!」
ぞわり、と全身に何故か寒気を覚えて仕方の無いクロだった。
リア充は速やかに爆発して下さい(O゜皿゜O)




