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忌み子の世界救世記  作者: 紅月ぐりん
魅了の魔王皇編
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53話

 クロ達がコルネリデア城で暮らすようになってからおよそ1ヶ月が過ぎた。穏やかな陽射しが窓から射し込み柔らかな風がカーテンを靡かせる。クロは部屋を出る事にした。

 廊下を歩いていると奥からコリーネがやってきた。


「おはようございますクロ様。今日もいい天気ですよ。散歩には絶好の日和です」

「おはようコリーネ。それならちょっと出かけてこようかな」

 それならば、とコリーネは懐からバスケットを取り出す。手渡され中を見てみるとサンドイッチと果実のジュースが入っていた。

「うわあ、美味しそうだね。コリーネが作ったの?」

「いえ、厨房からくすねてきました」

 そう言ってコリーネは悪戯っぽく笑う。

「え、いいのかな……?」

「大丈夫ですよ。元々クロ様に召し上がって頂こうと作っていたみたいですから。クロ様が持っていかないのなら私が代わりに頂きますよ」

 クロはクスッと笑い、

「そっか、それなら頂くね。ありがとう」

 と言って再び歩き出した。


 城を出て外を探索するのが最近のクロの楽しみだった。この島には色んな魔物、色んな種族がいる。更に言うと様々な珍種希少種がいる。城の中では見ない珍しい魔物を探すのが楽しかった。

 そんな訳で今日もまた新たな出会いを求めて散策を続けていた。


 しばらく歩き続けたが珍しい魔物を見つける事は出来なかった。そろそろ日も登ってきたし足も疲れた。クロは丘の上に上がると手頃な木の下に座り込み、バスケットを開け昼食を取る事にした。



 蓋を開けると甘いジュースの香りが鼻腔を擽る。サンドイッチの具材は卵やハム、ツナやサラダなど多岐に渡った。見ているだけでお腹が空いてくる。クロはサンドイッチを1つ手に取ると口に頬張った。

 料理長が腕を奮った自慢の一品はクロに至福のひと時を過ごさせた。3つ程平らげたがまだ半分も減っていない。1人で食べるには少し量が多いようだ。誰かと一緒に食べる事を想定して多めに作ってくてたのかもしれない。だが今はクロ1人だ。


 そんな事を考えていると見知った姿が見えた。

「ジュレス」

 そこにいたのはジュレスだった。ジュレスはニコリと笑うと無言でクロの目の前までやってきた。じ~っとクロを見ている。

「ちょうど良かった。サンドイッチがあるんだけど1人で食べるには量が多くて……ジュレスも食べる?」

 バスケットの中からサンドイッチを1つ出してジュレスに手渡すとジュレスはしばし手に取ったそれを不思議そうに見つめた後すんすんと匂いを嗅ぎ目をしばたかせている。


「?」


 この時になってクロは何か変だ。と思い始めた。

 いつものジュレスならクロを目にしたらすぐに声をかけてくる筈だ。それが今日はずっと黙ったままだ。おまけに目の前のサンドイッチに対して食べられるものかどうか逡巡しているように見える。


「あの……食べないの?」

 声をかけるとジュレスは意を決したようにパクッと一口で平らげてしまった。

(今、口がとんでもなく開いたような……)

 見間違えでなければ頬のあたりまで口が裂けたように見えたのだが。ジュレスは確か魔族と人の混血だった筈だが髪の色が赤いが見た目は普通の人間だし食事の時は普通に食べていた筈なのだがーー


 どうも今目の前にいるジュレスはいつもと違う気がしてならない。



 じーーっと観察している間にも味を占めたのかジュレス?は次々と残りのサンドイッチを平らげていく。とても美味しそうで嬉しそうだ。やがて全部食べ終わると再びクロをじっと見ている。

「美味しかった?」

 と聞くと嬉しそうに頷くが、やはり喋らない。

「ねえ、今日はどうしたの? 全然喋らないし……何かいつもと違うよ」

 クロがそう尋ねると、ジュレスは更に近づいてじっとクロの顔を見つめてくる。




 そして次の瞬間、クロの唇に柔らかいものが触れた。

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