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忌み子の世界救世記  作者: 紅月ぐりん
魅了の魔王皇編
55/229

49話

 コリーネの案内の元、魔王皇コーデリックに謁見する為に引き続き城の中を移動するクロ達。そんな中片目が口を開いた。


「しかし、こう言っては何だが……魔王が住む城にしては小さいな」

 片目が言った通りコルネリデア城は古く年月を重ねたであろう小さく地味な外観をしていた。中はこまめに掃除されているようで決して汚くはない。調度品の類いも目立たないが高級で実用的な物が置かれていた。


「コーデリック様は無駄な装飾や華美な物は好まれません。道具として実用的な物を好まれます。この城も決して大きくはないし地味ですが住み心地は最高ですよ」

 クロは大きく頷いて同意した。

「確かに……何となく分かる気がする。この城は暖かいんだ。……人の住む温もりが伝わってくるみたい」

「まあ、これだけ魔物達が伸び伸びと居座ってる魔王の居城も珍しいだろうな」

 ジュレスの言葉通り城内には大小様々、種族も様々な魔物達が野放し同然に住み着いていた。



「だが、決して居城として機能してないという訳でもなさそうだな。入り口には強力な結界が張られているし、見えない所には罠も沢山仕掛けられているようだ」

「はい、普段は切られておりますが有事の際にはいつでも発動できるように整備されております」

 今はクロ達客人を迎えるために当然切られているという訳だ。


「それに、ここらに屯している魔物達の中には地味に希少種や伝説種がけっこう混じっているぞ。戦力で言えば下手な国よりもよほど強い」

 片目が指差す先には天空大陸にしか生息していないと言われるブルードラゴンや地下のマグマ地帯に住んでいると言われるレッドドラゴン、見る者に幸福を与えるというカーバンクルや汚れない処女にしか心を開かないと言われるユニコーンなどが低級魔物のスライムやゴブリンなどに混じって普通に闊歩していた。


「そうですね。でも、そんな魔物達にとってもネクロフィルツ様は非常に興味を抱かせる存在のようですね」

 コリーネの言う通り魔物達の視線はクロに集中していた。低級魔物達はクロを覆う加護の魔力に恐れをなしているようだが流石に希少種や伝説種と呼ばれる者達はクロに秘められたある種の魅力に気付いているらしく強い興味を抱いていうようだ。

 カーバンクルが意を決したようにタッと走り出すとたちまちクロの体をかけ登り肩の上に乗った。

 くるる、と甘えるような鳴き声を出してクロの頬に体を剃り寄せてくる。


「あはは、くすぐったいよ」

 ユニコーンもゆっくりと近付いてくるとクロの前で止まり、頭を少し下げる。クロが手を出して撫でるとブルル、と満更でもなさそうに嘶く。クロが魔物達と戯れる光景はまるで神話の1ページを切り取ったかのように美しく峻厳だった。


 しばしその光景に見とれる一行だったがいつまで経っても魔物達がクロから離れる気配がない。困ったコリーネが離れるように言うが魔物達に頑なに離れようとしない。

 困り果てたコリーネがどうしようかと泣きそうになったその時だった。


「あーキミ達。気持ちは分かるんだけどそろそろお客人を離してあげてくれないかな。コリーネが自分の仕事を出来ないし、何よりボクが待ちくたびれちゃったよ」

 声だけで強い魔力を感じさせる魔族の言葉がテレパシーのように全員の頭に響いた。流石に自分達の主の言葉には逆らわなかったようで魔物達は名残惜しそうにクロから離れていった。

「今の声がひょっとして……」

 クロの声に声の主は答えた。

「そうだよ。初めまして。ボクの名はコーデリック=ヴァン=カラコミナ。ヴァンっていうのが魔王皇に付く称号でその後に続くのが治めている国の名前ね。

カラコミナを統治する魔王、コーデリックっていう意味なのさ。よろしくね、救世の天子様」


 やはり声の主はクロ達が会おうとしていた魔王皇コーデリックその人だった。


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