表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忌み子の世界救世記  作者: 紅月ぐりん
邂逅編
216/229

199話

 創世の御子計画が企てられ実行されるまでも様々な試行錯誤があった。

 地上にそのまま人類を繁栄させるには魔の濃度が濃すぎた為にまず人間が安全に暮らせる場所を確保する必要があった。魔は低い場所に沈澱する性質があったので地上の一部を宙に浮かせて一つの大陸を作った。空中なら地上に比べて魔の濃度は薄くすむ。


 次に魔に適応した魔を浄化する生物を生み出した。即ち魔物だ。魔が蔓延る地上においてこの生物の存在は必要不可欠だった。いずれ人類が天空大陸から降りて地上に暮らす為の土壌を整える為に。

 しかし、彼の故郷には魔物は存在しない。だから、用が済んだらいずれは処分する予定だった。だが地上に魔物を放ち時間が経過し独自に進化を遂げて高い知性を持った魔族が生まれても尚地上は人類が暮らすには危険な魔の濃度を保っていた。一向に地上から魔が消え去る気配はなかった。



 彼は一先ず魔を完全に消し去る事は諦めて、人類が魔に適応し地上で暮らせるようになる事を優先させた。その中で魔については改めてゆっくり研究を重ねていけばいいと。魔物についても魔が完全に地上から消え去るまでは処分するのを待つ事にした。

 魔の蔓延る世界で魔物の存在は必要不可欠だ。だから、人類が魔に適応する為には魔物との共存が必要だった。そう考えた彼は地上から一部の魔族を拾い上げ天空大陸へと向かい入れた。ここから人と魔族の繋がりが生まれ始めた。



 そうして人と魔族が繋がり始め馴染んだ頃に創世の御子計画は開始された。目的は地上から魔を根絶する事、ではなく、地上を人類が住める環境に整える事だった。魔族との共存の中で人類は魔を取り込み浄化する方法を覚えた。この時代の人類は今のように直接体に魔を取り込めなかった為に物に魔を定着させる術を使っていた。即ち魔術だ。

 魔術の登場により人類はその文化も戦闘能力も発展させる事になり、危険な地上においても多少は活動できるようになっていた。


 彼は地上に自らの手のかかった配下を送り込み、世界を統一させる事にした。当時の地上では魔の影響で常に戦乱が起きており安全に人類が暮らせる場所ではなかったからだ。それが、創世の御子計画の目的だった。そうして少しでも状況を改善させて人類を地上に送り込みやがては完全に魔に適応させる。それからゆっくりと魔を解析研究し完全に撲滅する方法を探す。

 それが、彼の描いたシナリオだった。



 そうして計画は始まった。彼は特別な肉体に特別な魂を入れた特別な魔族を生み出した。彼の持つ科学技術は魂(の一部)を操るまでに発展していたのだ。そうして生み出された魔族は見目麗しい肉体と美しく澄んだ魂を併せ持ち周囲の者達をたちまち虜にしていった。それはもはや魅惑を通り越して支配の域に達する程だった。

 しかし人心掌握と支配を優先して作り出したこの個体には戦闘能力が無かった。そこで彼は強大な魔力と高い戦闘能力を持った者を助っ人として異世界から呼び出す事にした。

 それが過去の地球出身者になったのは故意ではない。彼の知っている中で濃い魔に適応した種は地球にしか存在しなかっただけの話だ。……だけどどこかで願望もあったのかもしれない。故郷に帰れないならせめて故郷に住む者に会いたいと。



 この時点で彼の行動には矛盾が生じていた。過去の時空から人を召喚できるのなら自らを過去に送り込めばいいだけの話だった筈だ。しかしそうはならなかった。彼の中で諦め捨て去った筈の魔の解読撲滅というかつての夢がまだ残っていたのかもしれない。



 ともあれ、過去の地球から呼び出した協力者を得て創世の御子は順調にその支配を伸ばしていった。しかし徐徐(じょじょ)に計画は彼の描いていたレールから外れ始めていった。





 少しずつ、けれど確実に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ