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忌み子の世界救世記  作者: 紅月ぐりん
邂逅編
212/229

195話

 ここで再び時間は遡る。

 ユージとの戦闘の最中クロが転移魔法陣によって別の場所へ飛ばされた時まで。



「ここは……?」

 キョロキョロと辺りを見渡す。四方を厚い壁に覆われた狭い空間。広さは精々3~4平方メートル程度しかない、牢獄と言っても差し支えない小部屋。しかも、本物の牢獄とは違い出入り口がない。空気穴すらあるかどうか怪しかった。


 流石にクロも額に汗を滲ませる。いかにクロが高い魔力を持ちあらゆる攻撃を防ぐ体の持ち主であったとしても生き物である事には変わりない。

 呼吸や食事、水分の摂取など、生物がその生命を維持すら為に必要なこれらの事項を実行する事が出来なければ待っているのは死だ。

 そしてクロの死は新たな魔神の誕生と同義であり、魔神の誕生は即ち世界の破滅を意味する。



 クロは深呼吸して魔力を溜めると、覚悟を決めて目の前の壁に向かって解き放った。自身が魔神の力を借りずに行使できる範囲の中で上限ぎりぎりの魔力を。


 しかし。


 クロの放った魔力は壁に空しく弾かれ消えるだけだった。次にクロは、これも駄目で元々という気持ちで壁を素手で殴りつけた。

 が、やはりこれも破壊するには至らなかった。どうもこの壁、というよりこの天空の塔を構成している物質は非常に頑強に出来ているようだった。



 クロはひとまず自力での脱出を諦めた。下手に脱出しようとすれば魔神の力を引き出す事になりかねないからだ。そしてもう今のクロはいつ魔神になってもおかしくない程に魂を削り取られていた。

 世界の命運を懸けてまで自力の脱出に拘る意味はどこにもない。とりあえずクロが次に考えたのは他力による脱出、要するに誰かに助けて貰う事だった。



 クロは緊急連絡用に持たされていた通信装置を手に取り、サーベルグとの通信を試みた。サーベルグならばこの状況から脱出する方法を見つけ出してくれるかもしれない。

 そう思っての行動だったが、無情にもクロの声に応える者は誰もおらず、薄暗く狭い空間に一人クロの声だけが空しく響くだけだった。



 いよいよ打つ手が無くなったかと思われたその時、クロの精神(こころ)に直接語りかけるように何者かの声が響いてきた。




『そこから出してあげようか?』

 と。



 この謎の声に対してクロはすぐに返事を返す事が出来なかった。相手の正体も目的も分からないのに下手に動く訳にはいかなかったからだ。

 するとまるでそういうクロの思考を読み取ったかのように謎の声は正体と目的を告げた。



『僕は創世神。ユージから聞いたと思うけどこの世界を産み出した張本人さ。ここから出してあげるかわりに、少し僕の話に付き合って貰いたいんだが、どうかな?』


 しばし考えた後にクロは頷いたのだった。

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