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忌み子の世界救世記  作者: 紅月ぐりん
覇道の魔王皇編
208/229

191話

 ゴゴゴゴゴ……と降魔の間が揺れ動く。ユータとコーデリックは倒れないように姿勢を保つのが精一杯だった。



 目に見える程に凝縮された濃度の濃い魔力がユージへと集められていく。それは、到底人間個人が持ち得る魔力の量では無かった。

「何ていう魔力量なんだ……!」

 かつて神魔戦争の最終決戦の際にマードリックが行った魔獣吸身。身の丈数十メートルの怪物に変身したマードリックは女神の力を宿したクロによって浄化された。

 今ユージに集められている魔力の量はあの時のマードリックを超越していた。



「くっくっく。どうだ? この力は。核と並び長年研究開発してきた切り札だ」

「バカな! その状態で意識を保てるなんて!」

 コーデリックは衝撃を隠せない。

(これだけの魔力が一個人の体に集まれば精神が崩壊してしかるべきなのに……)

 疑問に思ったが、すぐに理由が分かった。

「そうか! 直接体に取り込むのではなくて、(オリハルコン)に……!」

「そうだ。オリハルコンに取り込めば直接肉体に影響を及ぼさずに圧倒的な力を手に入れられる。魔獣吸身の強力だがコントロール出来ないという欠点を克服した最強最後の変身だ」

 そう言うとユージは指先から魔力を解き放つ。圧倒的な力が暴れ狂い全てを薙ぎ払う。

「「うわああああああ!!」」



 直接当たる事は無かったがエネルギーの余波を受けて二人は吹っ飛んだ。

「ぐうぅ……」

 ユータは力を振り絞り立ち上がる。壁に巨大な穴が開きその直線上にあるものは全て吹き飛び空が覗いていた。そのあまりの威力にユータは顔を青ざめさせる。

 大魔法どころか極大魔法レベルの力だった。これを事前動作なしに放ってくるような怪物と戦えというのか。しかも、魔獣吸身の時とは違い敵には確かな知性と理性があるのだ。

 どうしようもない。一瞬そういう思いが心に浮かんでくるが弱音を振り切りユータは戦う姿勢を取る。



「実際、この後に及んでもまだ希望を失わないその精神力は大したものだよ。ユータ。確かにお前はオレなんかより遥かに大きな器の持ち主なのだろう」

そう言いながらもユージの顔は怒りと憎しみに満ちており、容赦なく追撃を放った。

「危ないッ!」

コーデリックがユータを突き飛ばし何とか攻撃を回避する。

「………………」

 ユージは目を細める。この魔族は先程から自分の身を守るという発想が欠如しているのではないかと思わさせるような献身ぶりを見せている。ユータさえ守れればそれでいいと言わんばかりだ。

 ユータの方もそんなコーデリックを全面的に信頼し全てを委ねるかのような振る舞いを見せている。そしてそれが結果的に二人の力を何倍にも高めている。

 正に契約者(パートナー)の理想像とも言うべき姿だった。



「いいだろう。ならば、その絆ごと全てを消し去ってやる」

 ユージは両手に魔力を溜める。左手に炎、右手に風。二つの異なる魔力を合わせ、一つに。恐るべき事に、多少の時間をかけただけでユージは超絶魔法を生み出してしまった。そのまま呪文の詠唱も行わず解き放つ。

 荒れ狂う炎の竜巻が吹き荒れ全てを蹂躙する。流石にそのままぶつけると降魔の間が吹き飛んでしまうのでコントロールして範囲を限定する。範囲が狭められた分威力は更に跳ね上がる。どうあがいても二人が焼き焦げるのは必然と思われた。



 しかし。

 炎が吹き荒れ消え去ったその後にユージの目に飛びこんできたのは焼き焦げるどころかほぼ無傷のユータの姿だった。

「バカな……!?」

 これには流石にユージも驚かされた。ユージの驚く顔を見てユータもまた驚く。ユータ自身どう考えても助かりようもない威力の攻撃だったのだ。

「……? どうしてオレは……」

 茫然とするユータの目に映った光景、それは……



「コーデリック……?」

 全身が炭化しぴくりとも動かないコーデリックの姿だった。

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