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忌み子の世界救世記  作者: 紅月ぐりん
覇道の魔王皇編
205/229

188話

 コーデリックは早速己の得た情報をユータに伝える。

「奴が大魔法を事前準備なしで放てる理由が分かったよ。種はあの鎧にある」

「鎧?」

 単に自分の正体を隠す為のものだとユータは考えていたがとうやら違うらしい。

「あの鎧はオリハルコンで出来ている」

「オリハルコン!?」

 ユータが驚きの声を上げると同時にユージの顔が歪んだ。その反応を見るにどうやら本当らしい。しかし、骸骨の意匠が施されたその鎧を構成する黒い金属は歪で妖しい輝きを放ちとてもユータが着けているオリハルコンと同質のものとは思えない。


「オリハルコンは強い魔力耐性を持つ。それはオリハルコンに魔力を吸収し蓄える性質があるからなんだ。奴のオリハルコンが黒いのは闇属性の魔力を吸収し溜め込んでいるから。

 鎧に溜め込んでいる魔力(ストック)を使って魔法を放っているんだよ。だから呪文や魔法陣を使って魔力を増幅させる必要もない」

「じゃあ、鎧に溜め込んでる魔力を全て使い果たせば……」

 そう考えたのだがコーデリックは首を横に振った。

「それは恐らく無理だと思う。これだけ用意周到に待ち構えている敵が一回の戦闘で使い果たすような魔力(ストック)量でおさめているとは考えにくい」

「それじゃあどうすれば……」

 それまで黙って二人の会話を見届けていたユージはここで口を挟んできた。



「へっ、情けねえ野郎だ。契約者(パートナー)がいなきゃ何も出来ねえのか」

「………………?」

 急に不機嫌な顔になって罵ってきたユージにユータは理解が追い付かずポカンとした顔をする。その反応も気に入らなかったのかユージは更に捲し立ててきた。

「『後輩』よ、お前には一目置いてたんだよ。お前がこの世界に呼び出されてから置かれてきた境遇ははっきり言って悲惨だ。オレも散々苦労はしてきたがお前には到底叶わねえ。大した野郎だ、そう思ってたが……」

 一旦口を切ると心底幻滅したような顔でユータを睨んで言った。

「仲間に頼りっきりでおんぶで抱っこの情けねえ玉無し野郎だったとはな!」

 吐き捨てるように言う。だがユータはやはり何をそんなに怒っているのか分からない、といった顔で

「……? それの何がいけないんだ?」

 と聞き返した。その言葉が余程腹に据えかねたのかユージは醜く表情を歪ませると

「救えねえ野郎だ」

 と呟いた。



 ますますユータは訳が分からなくなる。先程この男は全てがどうでも良くなったと言った。残っているのは復讐心だけだと。共感は出来ないが理解は出来る。彼の置かれた状況を思えば無理もない事だった。

 だが、だったら今更改めて何をそんなに怒る必要があるのか。全てに絶望しているのならどうでもいい事ではないか。ましてやユータはユージの敵なのだ。敵に何を期待しているのか。


 ユータには何もかもがちんぷんかんぷんであったがコーデリックには分かった。ユージはユータに嫉妬している。

 似たような境遇でありながらも違う何かが二人の間にはありそれがユージを怒らせているのだと。それが何なのかまでは流石に分からなかったのだが。



「よく分からんが……

 と戸惑いながらもユータが己の思う事を素直に口に出す。

「お前の言う通りオレは情けない奴だ。自分でもそう思うよ。オレがここまで来られたのは仲間がいたからだ。献身的にオレを支え続けてくれた契約者(パートナー)のお陰だ。

 それを誇りに思い感謝する事はあっても恥ずかしい事とは思わない」

 そう言いきった。その口調には気負いも誇張もなくただ当たり前の事を再確認するだけのようだった。そして最後にコーデリックに微笑んだ。

 そんなユータにコーデリックは少し顔を赤らめて気恥ずかしそうにしていた。



 ギリ……! と音が聞こえてきそうなほどに強く歯を食い縛った後自分の感情を押し殺すように低く冷たい声でユージは言った。

「よ~く分かったよ。お前とオレは絶対に相容れないって事が」

 そして全身に殺気を撒き散らせながら肉食獣のように獰猛にユータに襲いかかるのだった。

非リアはつらいよ(ーωー)

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