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忌み子の世界救世記  作者: 紅月ぐりん
覇道の魔王皇編
199/229

182話

 黒騎士の放った言葉にユータが固まる。

(今、この男は何と言った? 後輩? ならば目の前にいるこいつは先輩という事か? 何の?)

「……どういう事だ?」

 考えても分からなかったのでユータは素直に聞く事にした。黒騎士も素直に返事を返す。



「オレの名はシュドフケル。シュドフケル=フォンデルフ。これはこの世界に来てから得た名だ」

 コーデリックの眉が寄る。フォンデルフ。この単語の意味をコーデリックは知っている。「加護を得し者」という意味だ。魔族が人間と契約を交わす時に、魔族が魔貴族以上の上級魔族だった場合に人間に自分の名を貸し与える事がある。

 かつてコーデリックも大司教に自分の名を与えた事がある。同じようにシュドフケルという魔族が人間(このおとこ)に名を貸し与えたのだろう。


「つまり、君は覇道のシュドフケルから名を貸し与えられた契約者だという事だね?」

「ちょっと違うな」

 黒騎士はチッチッと指を振り言った。

「確かにオレはシュドフケルから名を貸し与えられたが覇道の二つ名がついたのはその後だ。つまり」

 ここで視線を強め、黒騎士は堂々と宣言した。

「かつての暗黒時代地上を平定し帝国を築き上げたのはこのオレだ。つまり、お前達が探し求めていた『真の敵』、天上の支配者はここにいるという訳だ」


 この自称『真の敵』の言葉にコーデリックは困惑する。

「キミは人間だろう? 人間がどうして魔王と呼ばれているんだ?」

「簡単な事さ。誰もオレの素顔を知らなかったからだ」

 そう言うと男は首元までずり下げていたマスクを引き上げた。こうなると瞳以外の部分は鎧によって隠され彼を人間だと判断する外見上の特徴はなくなる。

「素顔を隠して活動する者に皆が付き従ってきたと?」

「ああ、それはシュドフケル当人に備わる能力で操ってたからな」

「能力?」

「人の感情をコントロールする能力さ。洗脳能力みたいなもんだ」

「洗脳能力……その力で地上に干渉し戦争を引き起こさせたのか?」

「そう。表舞台にはオレが立ち裏でシュドフケルが人を操る。つまり二人三脚でやってきたと言う事さ。昔も今もな」

 それはつまり、今現在も二人の協力関係が続いているという事を示唆していた。


「それが後輩呼びにどう繋がるんだ?」

「おっと、そうだった。話がそれちまったな」

 オーバーなリアクションで顔を上に上げ手を当てる。

「つまり、オレはお前と同じように異世界ーー地球から召喚されてきたんだよ。シュドフケルの助っ人として、創世神にな」

 黒騎士の放った言葉にユータは衝撃を受ける。地球……と呟きそれきり黙りこんでしまう。

「創世神……この世界(ネバーランド)を生み出したと言われる神様だね」

「そう。奴こそが全ての元凶だ」

 次々と男の口から語られる驚愕の真実にユータは全くついていけていない。どういう事なんだ……と困惑をただ深めるのみだ。そんな様子を見て男は再び口を開く。


「訳が分からないって面してるな。分かりやすく最初から教えてやるよ」


 そう言って黒騎士は語り始めた。




           ◆




 はるか昔、創世神はこの世界を生み出した。だが当時の地上には今よりも何倍も濃くて強い『魔』が充満し、争いと殺戮にまみれていた。今でこそ地上は地上と呼ばれているが、当時は天空大陸が地上と呼ばれており、地上は魔の蔓延る世界ーー即ち『魔界』と呼ばれていた。


 魔界を平和な世界にする為に創世神は己の卷族を魔界に送りこんだ。それこそが『創世の御子』シュドフケルその人だった。

 シュドフケルは創世神に与えられた心を操る術を持って人を魔族を操りどんどん味方につけていった。しかしそれだけでは不十分だと考えた創世神は異世界から強い魔力を持つ者を助っ人として呼び出した。


 彼はシュドフケルと契約を交わし、鎧で正体を隠しシュドフケル本人と偽って代わりに表舞台に立つようになった。シュドフケル当人にはそこまでの戦闘能力が無かったからだ。こうして自ら前線に立つようになったシュドフケルはますますその支配力を強め遂に全ての国を制覇し地上を平定したのだ。

 



           ◆




「と、いう事さ。理解出来たか? この世界に来る前のオレの名は田中雄二。オレはお前と同じように地球からこの世界に呼び出された存在なんだよ」

「それで、『後輩』って訳か……」

 吐き出すように言ったユータによく出来ました、と言わんばかりにユージはニコニコと笑みを浮かべた。

 だが次の瞬間ユージの顔は阿修羅のように憤怒をたぎらせる。



「だが、残念ながら物語はここで終わらなかったのさ。創世神の裏切りによってな!」

 ユージの怨嗟の声が降魔の間に響き渡るのだった。

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