表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忌み子の世界救世記  作者: 紅月ぐりん
覇道の魔王皇編
197/229

180話

 ここで時間はしばらく前に遡る。

 サーベルグの計略にディンバーがまんまと嵌まりコピーの変身したニセクロにディンバーが引き付けられている間にクロとユータとコーデリック、そして十数人の腕利きの護衛を乗せた小型飛空挺は天空大陸の大穴を抜けて天空の塔へと向かっていた。


 大穴に上から蓋を被せるかのようにかかる幾重ものアーチは半球状を形作り、そのアーチの中心部分となる位置には天空の塔へと入る為の進入口が開いていた。その穴を潜ってクロ達は無事天空の塔へと進入を果たしたのである。


 進入口を登るとそこは整備された飛行船や機動兵器らしきものが置かれた格納庫になっていた。かなり大きな部屋で内部に設置されていた巡回ロボットが襲いかかってきたが護衛達によってあっと言う間に駆逐された。



 部屋を出ると護衛達を先陣に上への階段を探して先へ進んでいく。護衛達の役目は当然クロの護衛なのではあるが、それ以上に敵の大将にたどり着くまでにクロ達の消耗を抑えるという役割もあった。消耗した状態で「真の敵」と対峙するという事はそのまま敗北を意味しているのだ。少なくともサーベルグはそう考えた。


 途中で負傷した兵はその場に留まる。着いていっても足手まといになるからである。かといって回復魔法を回す余裕はない。彼等護衛はあくまでクロ達メインメンバーを活かす為の「使い捨て」なのだ。とはいえ、彼等も世界中から選りすぐれられた精鋭中の精鋭であり、そう簡単に死ぬような連中ではない。

 負傷してはいてもその場に留まり敵の目を引き付け尚且つ自身も生き残る程度の芸当はこなせるのだ。



 とはいえ、天空の塔は相当な広さであり罠も満載、巡回しているロボットも上に上るにつれてどんどん性能が上がっていく。核の発射装置を探しながら探索を続け三段に分かれている塔の二段目にたどり着く頃には護衛の数は半減し三段目にたどり着く頃には全滅していた。



「無念です……。お役に立てず申し訳ありません」



 負傷した肩を押さえ詫びたのは護衛団のリーダーであった。護衛団を纏めるだけの事はあり相当の実力者だったのだが、それもここが限界だった。

「気にするな。あんた達は充分働いてくれた。おかげでここまで消耗なして来させて貰ったからな」

「そうそう。後はボク達に任せて自分が生き残る事を考えて」

「治療してあげられたらいいんだけど……ごめんね。死なないで」

 三人はそうリーダーに声をかけて更に先に進んでいった。遠くなっていく彼等の背を見ながらリーダーは彼等が護衛(まもる)対象で良かったと感じていた。






              ◆






 天空の塔最上階にある『降魔の間』。そこには二人の人影があった。大きい影と小さい影が。

 大きい影がぼそりと呟いた。

「どうやらそろそろオレの出番らしいな。このままだとここまで来られちまう。殲滅してくらあ」

 何でもないように言うがその声には絶大な自信が込められているようだった。大きい影とは対称的に小さい影は不安を隠せないようで、心配そうに大きい影に声をかける。

「死なないよね? ここに戻ってくるよね?」

 その言葉には、相手の事を心配しているように見えて実は自分が独りになるのが嫌だ、という想いが込められていた。

「当たり前だ。オレを誰だと思ってやがる。天下のシュドフケル様だぞ? あっという間に皆殺しにしてきてやるさ」

 そう言って大きい影は扉を開け部屋を出ていく。



「僕を独りにしないでね、ユージ……」

 部屋に一人残された小さい陰の言葉が部屋に響くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ