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忌み子の世界救世記  作者: 紅月ぐりん
練武の魔王皇編
182/229

165話

 総数二十隻の飛行船団は編隊を組んでどんどん高度を上昇させていく。その編隊の構成は巨大な円を描く形だった。二十隻もの飛行船が空中で円を描く光景は壮麗で鮮麗な印象を見る者に与えた。



「ふん、下らんな」

 侮蔑するような声で言い放ったのはディンバーだった。天空大陸に空く大穴、そこに集まる竜族の群れの中央に居座り眼下の飛行船団を見下ろしていた。全長20メートルはあろうかという竜族の中でも一際大きな体躯を誇る黒竜に跨がり全軍の指揮をとっていたディンバーは連合国軍の見せた華麗な編隊をこき下ろした。


 あんな所で円状に布陣を組んだ所で何にもならない。見せかけだけの装飾など実務主義のディンバーにとって最も忌み嫌うものだった。

 「戦を勝利に導くのは純粋な力と戦術よ! 見かけの華々しさなど何の役にも立たぬ事を奴等に教えてやれ!!」

 ディンバーの号令の元に竜族が飛行船団の元に殺到していく。炎を吐き出すレッドドラゴン、氷を繰り出すブルードラゴン、風を操るグリーンドラゴン、雷を放つイエロードラゴン等の遠距離攻撃が次々と放たれ飛行船団に向かっていく。


 だが、これらの(つぶて)は飛行船に当たる前に何かに遮られ弾かれた。

「!? 結界か。小癪な真似を」

 よく見ると飛行船団の塊を覆うようにうっすらと魔力の防壁が張られていた。この結界で竜族達の遠距離攻撃を防いだのは自明の理だった。

「ならば、直接潰してやるだけの事だ」

 ディンバーは竜達に接近しての直接攻撃を加えるように指令を与えた。竜族の武器は遠距離攻撃だけではない。鋭い牙に爪、鋼鉄よりも固い皮膚や大きな体も竜族が誇る立派な武器だ。



 竜族がどんどん接近していく中、飛行船団はこれといった動きを見せなかった。その静けさにディンバーは疑念を抱いた。


 どんなに沢山の兵を乗せようと船の上からでは遠距離攻撃しか出来ない。接近して戦うにも竜族が船の上に居なければならないのだ。勿論竜族からしてみれば馬鹿正直に船に乗っているであろう連合国軍の兵達と勝負する必要はない。船体を傷付けて飛行不能にしてしまえばいいだけの話なのだから。

 つまり連合国軍が取れる対処は竜族が接近してくる前に遠距離攻撃で沈める事のみの筈だった。しかし全くその動きが見えない。



 しばし戦況を見守っていたディンバーだったが、突如として(ほどばし)る閃光に目を塞がれた。

「!? 何だ?」

 空中の何もなかった空間に巨大な魔法陣が現れる。そして、その魔法陣から次々と連合国軍であろう兵が湧いて出てきた。魔法陣の広さは何キロメートルにも及び、転移と結界の二つの機能を備えている様だった。この時になって(ようや)くディンバーは飛行船団が円状に布陣を引いていた理由に思い至った。

「超絶魔法か……! どうやら、(オレ)は敵を侮っていたようだな」

 接近戦が出来ないという弱点を空中に魔法陣を引き足場とする事で補ったのだ。魔法陣の結界は竜族の遠距離攻撃を防ぐ。何よりも魔法陣の転移機能は飛行船に乗せ切れなかった多数の兵を戦場に送り出す事が出来る。


 全く以て見事な戦術と言う他は無かった。この魔法陣を解除させるには飛行船に居るであろう術者を倒す以外に無い。どのみち敵の思惑通りに接近して戦うしかないのだ。竜族が持っていたアドバンテージを無くされ完全に互角の状況にまで持っていかれた。

 まんまと出し抜かれた悔しさと、思いの他手強い相手だったという喜びを顔に滲ませディンバーは笑った。



「ふん……、だがこれで(ようや)く五分の戦いになったというだけの事。勝負はこれからだ」

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