164話
クロ達を乗せた飛行船は地上から離れ、どんどんその高度を上げていった。マガミネシアを出立した十隻の飛行船に途中から次々と別の国から飛んできた飛行船が合流していき、最終的にその数は二十隻に及んだ。
飛行船にも微妙にサイズのばらつきがあり小さいのでも500メートル大きいのは1000メートルにも達した。
この飛行船は外部からのコントロールによる完全自動操縦であった為に乗組員はおらず操作の為の機械も設置されていない。最大限に兵器や兵士を搭載できる仕様になっていた。ベオルーフはこの基本的な設計思想を受け継ぎ補強する形で改造を施していた。
一つの飛行船に乗り込める人員は大体3000~5000。総計で約80000の軍勢となっていた。
飛行船群は隊列を組みながら上空へと登り続けていく。目指す目的地は当然天空大陸なのであるが、どこからでも上陸できるという訳ではない。
天空大陸は文字通り天空に浮かぶ大陸ではあるのだが、大地がそのままの形で宙に浮かんでいる訳ではない。地面の下に固い岩の層がありそれが宙に浮かぶ大陸の地盤となって大地を支えているのだ。
その岩の層もなだらかに続いている訳ではなく、地上にある山脈をそのままひっくり返したように凹凸がある。下手に接触してしまえば飛行船に穴が空いてしまうのだ。なのでクロ達が向かっているのは天空大陸のど真ん中にぽっかりと口を大きく広げている大穴である。そこが安全に天空大陸に上陸できる入り口という訳である。
当然敵もそこに待ち構えていた。
「居た……奴等だ」
片目が言った「奴等」とは竜族の事である。天空大陸に空いた穴の周辺に小さな黒い点が密集している。それは羽虫の群れを連想させた。しかしその小さな虫に見える一つ一つが巨大な体躯と強大な力を誇る竜である。
それは最早黒い霧と読んで差し支え無いほどに密集し、かつ広範囲に渡って広がっていた。いったいどれだけの数がいるのか、想像も及ばぬ程だった。
「なんつー数だよ……竜族ってこんなに数が多かったのか?」
「いや……」
と片目がかぶりを振った。
「少なくとも昔はこんな多くなかった。全ての種を合わせても精々数千匹といった所だった筈だ」
「じゃああれはどう説明するんだよ。どう見たって万単位は居るぜ」
片目はしばし瞑目していたがやがて考えが纏まったのか口を開いた。
「そもそも、天空大陸に住む竜はブルードラゴンを始めとするごく一部の種だけで殆どは地上に棲息していた筈なんだ……多分、ディンバーが天上の支配者の元に下った際に竜族は天空大陸に移り住んだんじゃないか? そしてその数を増やしていったんだろう」
天空大陸がどういう所なのか片目には全然分からないが、竜族にとって住みやすく繁殖に適していた場所なのだとしたら考えられない事もない。或いはサーベルグが語っていた古代の超科学でも使ったのかもしれない。
何れにせよそれは今考えるべき事では無い。今考えるべき事は、目の前に広がる膨大な竜の群れをどうやって潜り抜けるか、である。
竜の群れが段々接近しその姿も大きくなってくる。全世界の命運をかけた決戦はすぐそこまで迫ってきていた。
飛行船の大きさを100メートルから500メートルに変更しました。幾らなんでも搭乗する人員の数に対してサイズが小さすぎたのでf(^ー^;




