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忌み子の世界救世記  作者: 紅月ぐりん
叡智の魔王皇編
171/229

156話

「流石のあんたも、二つ目の策の本当の狙いまでは分からなかったみたいだな」

 地面に這いつくばり片目達を見るベオルーフにジュレス(片目)は語りかけた。同時にジュレスとコーデリックは合体を解いた。あまり長時間同化していると元に戻れなくなる危険性があったからだ。

「どういう……事だ」

「俺達の本当の狙いは床を破壊する事じゃなくて、床に施された魔術を狂わせる事にあった」

 ベオルーフが最初に形態を変化させた時に既にジュレスは床に魔術的な回路が組み込まれている事に気が付いていた。

「だけど、あれだけ用意周到に戦いの準備をしていたあんたが何も対策をしていない筈がないって思った。だから、床を破壊するんじゃなくて床に張り巡らされた回路を書き換える事を考えたんだ」

「床への攻撃は……その為のカモフラージュか」

「そういう事だ」

 そうしてまんまとベオルーフは罠にはまり敗北を喫する事になったのだ。



「今度はぼく達が質問する番だよ」

 そう語りかけたのはクロだった。

「クロ! 呪縛が解けたのか!」

「うん。多分ジュレス達がこの人に致命傷を与えたから」

 自由になったクロは改めてベオルーフに問う。

「それで、貴方の狙いは何だったの? 何の為にこんな手の込んだ芝居を……手を抜くような真似までして」

「手を抜いてたって……まあ確かにあの機械兵やパワードスーツには肩透かしを食らったけど」

 ユータが頬をポリポリと掻いた。

「それもあるけどそれだけじゃない。今の戦いだってこの人は全力を出してなかったよ」

「「何だって!?」」

 片目とユータは驚きの声を上げるがジュレスとコーデリックは気がついていたようで涼しい顔をしていた。

「そりゃそうだろ。こいつ基本的に体術と機械頼りで一切魔法攻撃を仕掛けて来なかったんだぜ。確か極大どころか超絶魔法まで使えるって話だっただろ」

「それに魔術だって床の仕掛けとクロに向けたの以外は使ってなかったしね。魔術は色んな幅広い使い方があるんだから他にもいくらでもやりようはあった筈だよ」

「「た、確かに……」」

 あまり頭の良くない二人は指摘を受けてズーンと沈んでいく。ベオルーフはしばし黙り込んでいたがやがておずおずと口を開いた。



「全ては……パフォーマンスだ」

「パフォーマンス?」

 オウム返しにクロが問うとベオルーフはこくりと頷いた。

「救世の天子=女神の救い手とその仲間達の活躍によって女神信仰者の過ちは表になり、正される事になった。だが、当然そうなれば黙っていない連中がいる」

「テロリスト……だね」

「そうだ。長年女神信仰者によって虐げられてきた者達の恨みや怒りが噴き出してくるのは目に見えていた。まだテロ活動で収まっている内はいい。だが、そう遠くない内に大きな勢力となってあらゆる国を巻き込んだ戦争になるのは必然」

 この言葉でクロはベオルーフの言いたい事に気がついた。

「まさか、戦争を起こしたのは女神信仰の被害者達の鬱憤晴らしをさせる為に……?」


 そう。それこそがベオルーフの目的だった。自らが旗印となり魔族優先主義者や女神信仰者に恨みを持つ者をかき集め処分する為に。

「いずれ起こる戦争ならば、起こしてしまえばいいのだ。自らコントロールして被害を最小に押し止め、不穏分子は消す。そして、度重なる戦争に民の心は疲れ休息と平和を求める」

「そうか、だから全世界への宣戦布告、侵略という大掛かりな計画を練って起きながら戦力が大した事が無かったのか。おまけに飛行船、機械兵、パワードスーツと見た目の派手さと衝撃はこれ以上ないほどに大きかった」

 ジュレスが納得の声を上げる。全ては綿密に計画された出来レースだったのだ。



「俺達に倒されるのも計画の内だったのか? だから全力で戦う事もしなかった」

「全力で戦ったさ」

 そう言ってジュレスの言葉を否定して。

「戦い方に縛りを加えたのは事実だが」

「そう。そこだけが不可解なんだ。力を押さえているのに片目達を全滅させかねかない勢いで攻めていた。それは何故なの?」

「お前達に知っておいて貰いたかった。自らより強い相手だろうと戦い方次第でいくらでも立ち向かえる手段があるのだと言う事を」

「それは……確かに認めざるを得ないな」

 本来の自分の戦闘方法たたかいかたを封じて尚あれだけの力を出し片目達を追い詰めたのだ。認めない訳にはいかなかった。

「魔法を使わない私など本来ならばお前達と戦うなど到底勤まらない弱さだ。だが、綿密な作戦と周到な準備を徹底すれば出来ない事はないのだ……」

「あなたは……まるで僕達に助言をしてるみたいだ。もっと強くなりあらゆる状況に対応できるようにさせる為に」

 振り返ってみれば、戦闘中のベオルーフの行動、言動はクロ達の弱点を指摘して気付かさせる為のものだったようにクロには思えたのだ。例えばいきなりの奇襲、魔術での拘束はクロにとっての弱点であろう。



「全ては……お前達を高みへ押し上げる為に……天上の支配者を倒す為」

「天上の……支配者?」

「今こそ語ろう。この世界を、ネバーエンドを混沌と狂乱に導き多くの悲劇を産んできた我等の『真の敵』の正体を」

 そして、遂に語られる。この物語の真の敵、倒すべき真の黒幕の正体がーー

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