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忌み子の世界救世記  作者: 紅月ぐりん
叡智の魔王皇編
167/229

152話

 決着が着くまでにそれ程の時間はかからなかった。戦いは終始片目達が優勢に進めた。結論から言うとパワードスーツ軍はアッサリと敗北した。片目達の手によって数十体あったパワードスーツは全てスクラップにされた。

 確かに、パワーもスピードもかなりの出力がありまともにぶつかったら苦戦は必至だっただろう。だが、明解で単純、そして重大な欠点がこの魔獣機人と呼ばれるパワードスーツにはあった。


 極めて挙動が読みやすいという欠点である。動き出せば確かに速い。力も強い。しかし、細やかな挙動が出来ない為に直線的な動きしか出来ないのだ。

 それに加えて防御に回った時の脆さである。何しろ中に入っている(捕らわれている?)人間の姿が外から確認出来るという事はそれだけ体がむき出しになっているという事である。勿論心臓や脳、急所など優先して守らなければならない場所は装甲で覆われているが、それ以外の部分は守られていないのだ。


 魔物兵(テロリスト)が乗り込む操縦席は流石に全面厚い装甲で守られてはいる。だが、この魔獣機人という兵器、名前からするに魔獣合身を機械で再現させたものなのだろう。

 恐らく魔獣合身の「戦闘能力は極めて高くなるが暴走してしまいコントロールが効かなくなる」という欠点を機械で制御する事で補おうという発想で作られたのだろうが、動力源とも言える人間の体を守れないなら本末転倒である。



「まあ、乗ってるあんた達からしてみれば人間を使い捨ての電池同然に扱うこの機械は乗り心地が良かったんだろうけどな」

 そうやって懇切丁寧にジュレスは相手に敗北した理由を説明した。テロリストは表情を歪め吐き捨てるように言った。

「くそっ!ベオルーフの野郎ポンコツを掴ませやがって!」

「お前達はベオルーフから兵器を提供されそれを使っていたんだな?」

 確認の意味で片目が訊ねるとテロリストは頷き、

「そうだ。野郎の呼び掛けに答えて集まった俺達に奴はこの兵器を提供した。この兵器があれば連合国軍は敵ではないってな」

と返した。

 その期待の兵器が敗れてしまったのが余程ショックだったのかそのテロリストは抵抗する様子も見せず素直に聞かれた事に対して答えていった。


「ベオルーフはどんな奴だった? 顔を見たか?」

「分かんねえよ。俺達が奴と接触したのはそのやり取りだけだし、野郎はローブで顔を覆ってやがったからな」

「ベオルーフ以外の誰かに会ったか? ザンツバルケルの民は?」

「それも分からん。会ったのはベオルーフの野郎だけだ。後は野郎の身の回りの世話をしてるらしい機械人形共しか見てねえ。ただ、他に生きてる誰かの気配は感じなかった」

「誰も居なかったのか? じゃあ、パワードスーツに使った人間はどうやって?」

「ありゃあ俺達が各国から拐ってきた人質だよ。何かしらに使えると思って一緒に連れてったんだ。野郎は人間がいるのを知ってあのパワードスーツを開発したんだ」


 一通りの質問が終わるとテロリストは押し黙った。これ以上話せる事は無いという事だろう。引き出せる情報は引き出したのでテロリスト達は全員拘束され、動力源として使われていた人間達も怪我を負ってはいたが全員命に別状はなく、10名ばかりの兵を付き添いにして転送魔法陣の所まで送られていった。




「しかし、こう言っては何だが……正直肩透かしを食らった気分だ」

 片目が何だか釈然としない顔で言うと、ユータとコーデリック、ジュレスも同意した。

「いくらなんでもアッサリ片付きすぎだな。……これも何かの罠、なのか……?」

「考えすぎじゃないのかな~魔術の媒介にするにしても血とか臓物とか生きたモノが無いと出来ないし……機械を破壊させて何か出来るとは思えないけど」

「なあ……本当に、これが『真の敵』なのか?」

 ジュレスが遂に徹底的な一言を口にした。一同は押し黙った。誰もが同じ事を考えていたのだ。



「ここで考えていても結論は出ない。直接本人に会って確認するしかないよ」

「「「クロ……」」」

 後ろに控えていたクロが片目達の所まで来ていた。クロは肩に乗せたカーバンクルを指差すと

「ルビーが言うにはもう他に敵の気配はしないそうだよ。後は、城に控える魔王皇だけだ」

 そう言って先に進み始めた。

 片目達も慌てて後に着いていった。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 クロ達が城の前までたどり着くと、触れてもいないのに勝手に城門が開きどこからともなく声が聞こえてきた。

「ようこそ、ザンツバル城へ。歓迎しよう」

 重々しく威厳を感じさせる声が辺りに響き渡る。さっきまでのどこか白けた空気は一瞬で吹き飛んだ。


 コイツは、違うーーさっきまでの連中とはーー


 その場の誰もがそう感じさせられた。額に汗を滲ませながらジュレスが強がる。

「へっ。お出迎えの準備は万端って訳か。大した自信だぜ」

「そういう事だな。だが、歓迎するのは主賓達だけだ。その他の有象無象は要らん」

 声の主がそう言った途端に名状し難い不可思議な感覚がクロ達を包み込んだ。強いて言うならばブラックタワーに入る時の空間を渡る感覚に似ていた。



 気が付くとクロ達は、城の中へと移動させられていた。

 しかもーー


「ようこそ。改めて歓迎しようではないか」

「「「………………!!」」」

 敵の総大将である魔王皇ベオルーフの目の前へ。

ジュレス「気をつけろ! コイツら、かなりヤるぞ!」(`・ω・´)キリッ

片目「やめろぉおおお//////!!Σ(;゜∀゜)ノ」

コーデリック「ニヤニヤ(* ゜∀゜)」

ユータ「ニヤニヤ(* ゜∀゜)」






圧勝でしたね、片目さん(=゜ω゜=)

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