表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忌み子の世界救世記  作者: 紅月ぐりん
叡智の魔王皇編
166/229

151話

 雪が降りしきる中だだっ広い平原を抜け、クロ達はザンツバルケルの領土内へと足を踏み入れた。むき出しの配線や鉄屑が転がり、至るところから蒸気が吹き出ている。ザンツバルケルの上空は吹き出した蒸気の煙で薄暗く淀んでいた。

 この世界ネバーエンドの中でもこんな情景が見られるのはここだけだろう。基本的には地球の中世次代程度しか文明が発達していないこの世界においてザンツバルケルは一歩二歩先を進んでいる。地球で言えば産業革命以降程度の文明水準だった。

 しかし現代の地球に匹敵する、あるいはそれ以上の文明水準を誇るザカリクやマガミネシアに比べれば全然大した事は無かった。



 『真の敵』が治める国、という事でザカリクやマガミネシアのレベルで発達している都市を思い浮かべていた片目達からすれば少々期待外れとも言うべきものであったが、逆にそれが敵の狙いが何なのかという事を見えにくくしてしまっていた。

 科学力を期待してザンツバルケルを乗っ取ったというなら正直な所力量不足に思えたからだ。飛行船や機械兵にしても驚くべきものではあったが驚異と呼べる程のものでは無かった。


 それを、敵の何かの策略なのではと皆疑っているのだ。無理もない事だった。神魔戦争では散々敵の策略に嵌められ陥れられたのだから。今回の敵が『真の敵』ならまた同じように何かしらの策略罠が仕掛けられてしかるべきと無意識のうちに刷り込まれてしまっていた。



 しかし予想に反して警戒していたような「何か」が起こる事は無かった。極めて順調に進軍は進み障害らしい障害は何も無かったのだ。

 あまりにも何も起こらない為にかえって不安になってくる程だ。

巨大な都市部を抜けて大きな一本道に出た。その道はそのまままっすぐ奥にあるザンツバル城へと続いていた。その一本道を進んで半ば程まで行った時、ようやく事態に変化が訪れていた。



「囲まれてるな」

 片目がそう呟いた。その声色には焦りの色は全く無い。敵の本拠地に攻め込む以上当然予想できる事態だったからだ。予想しているという事は対策も済んでいるという事に他ならない。片目達が先行し、その後にクロを中心としてぐるりと取り囲むように配置された連合国軍の兵達が配置されていた。

 どの方向から奇襲を受けてもクロを守る為の布陣である。戦略と呼べる程のものではない。単純にクロを倒されない為のものだ。クロさえ守れればいい。クロさえ守れればいくらでも取り返しは効くのだ。


 それに、あれこれ策を巡らせた結果としてかえって敵の策略に嵌まる結果となってしまったという苦い経験もある。敵はサーベルグの策略を上回る知略の持ち主なのだ。知恵比べよりもクロの力に頼って任せてしまった方がいいだろうという判断の結果だった。

 事実クロは敵の策略を再三打ち破ってきた功績がある。悪意の知略に対しては、善意ーー即ちクロの神がかった単なる戦力とは違う何かーーをぶつける他は無い。

 サーベルグはそう判断し部隊の指揮はクロに全て任せて自分はその補佐に回る事を決めたのだった。



 片目の声に反応するようにあちこちから敵兵が突如姿を表した。突然姿を表したように見えたのは光学迷彩を使って姿を隠していたからだ。しかしそれも以前既に相手にした事がある。片目達は至って冷静に戦闘体制に入った。


 しかしそれからの敵の動きは予想の範囲外の事だった。姿を表した歩兵の後ろに巨大な機械仕掛けの何かが蠢いていた。それは非常に奇怪な姿をしていた。

 全長は3~4メートル、横幅は2メートル程で簡単に言えば魔族のケンタウルス族のように四つ足の下半身に人型の上半身を持ち、その上半身の後部に着く形で魔物兵が乗り込む操縦席のような物が設置されていた。そして一番大きな特徴は、その人型が実際に内部に人間を収納し回りを取り囲むような、言わばパワードスーツのような形状をしていた。



「魔獣機人、発進ーー!!」



 操縦席に飛び乗った兵達のかけ声と共に鈍く妖しい発光と共にパワードスーツが動き出した。直後、凄まじい激突音と共に複数の機体が片目に衝突した。吹っ飛ばされるとまではいかないものの、大きく後ろへ押し退けられた。片目を仰け反らせる威力があるならばそれは相当のパワーがあると言えた。

 そして片目が反応出来なかったという事はスピードも相当なものがあるという事だ。


「気をつけろ!コイツら、かなりヤるぞ!」


 片目の叫び声が辺りに響き渡ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ