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忌み子の世界救世記  作者: 紅月ぐりん
叡智の魔王皇編
162/229

147話

 女神信仰のメッカであり世界でも指折りの超経済大国であるザカリク、その首都キエヌルカ。その町並みは一般の国の文明レベルとは一線を画しており高度な科学技術に裏打ちされた建物は外から来た者からすれば異世界に感じられるだろう。


 その地に再びユータとコデリックは足を踏み入れていた。かつてあった脅威は終結し、今はまた新たな脅威がこの地を襲っていた。頭上には宙に浮かぶ巨大な影。北の機械大国ザンツバルケルより送られた飛行く船である。

 その数は10隻を越えていた。国土の広さ、(前大戦によって消耗されてはいるが)強大な国力、そして何よりも長年女神の信仰の名の元に魔族と魔族信仰者達へと迫害を続けてきた憎き怨敵。

 ザンツバルケルから放出された全戦力の3分の1がこの地に投入されていたのである。黙って上空の敵を見つめる二人に声をかける影があった。



「よう、また会ったな」

 そこに立っていたのは赤毛の大男、得物である長い槍を抱えたウルグエルだった。

「まさかまた戦場で会うとは思わなかった。しかもこんなすぐにとはな」

 ユータの言葉にウルグエルは全くだ、と同意する。

「せっかく生き残ったってえのに、ここで終わっちまうかもしんねえな。運がいいんだか悪いんだか……」

 ため息混じりに呟くウルグエルに

「大丈夫」

 とコーデリックは笑顔を浮かべた。

「?」



 コーデリックの意図が分からず怪訝そうな顔をするウルグエル。コーデリックは緊張も不安も感じさせない声で何でもない事のように言った。

「勝てるよ。サーちゃんの話じゃ数は多いけど力はたいした事ないって話だから」

 ザカリクは距離的にはザンツバルケルよりかなり離れているので真っ先に侵攻を受けた国より襲撃を受けるのはかなり遅くなる。その時間差で分かった敵の情報をサーベルグから受け取っているのだ。

「随分気楽に言ってくれるねえ。あの船一隻に5000~10000くらいは機械兵が乗ってるって話じゃねえか」

つまり最低でも50000、悪ければ100000もの軍勢が向かって来ている事になる。しかしそれを聞いてもコーデリックの余裕は崩れなかった。


「大丈夫。相手が機械兵で、戦うのがボクとユータなら敵じゃないよ」

「おいおい。勘定に俺達が含まれてねえぞ。たった二人で勝てるっていうのか?」

俺達、とウルグエルが言ったのはウルグエルの他にも自らの部下達とザカリク防衛隊も戦いに参加するからである。

「まあ流石に全部ボクとユータだけでってのは無理があるだろうけどね。……まあ見ててよ」

自信ありげなコーデリックの言葉にニヤリとウルグエルは笑い

「おもしれえ。それじゃあお手並み拝見とさせて貰おうじゃねえか」

そう言って後ろに部隊を下げ距離を取った。

二人の攻撃に巻き込まれないようにする為だ。



「それじゃあ、行こうか」

「ああ」

 そういうとコーデリックはユータの体を持ち上げ上空へと飛び上がっていく。あっと言う間に船団へと近付いていく。二人が接近した事に気付いた船団は大砲で迎撃しようとするが縦横無尽に飛び回る二人の動きを捉える事が出来ない。

 それどころかお互いの放った弾丸がお互いに命中し同士討ちとなってしまっていた。しはらくの間二人はそうやって船の周りを飛び回り同士討ちを誘発させ続けた。

流石にそれだけで落ちる、という言は無かったが何発かの被弾によるダメージにより移動速度は低下し高度も下がってきていた。

 そしてただ単純に設定された条件でオートで撃ち続けていた為に大砲の弾が切れてしまい上空の二人に対する攻撃手段が無くなってしまった。

 それを確認するとコーデリックは一番近くにあった飛行船へと降り立った。



 侵入者の存在に気付き、機械兵達がのろのろとした動きで迎撃体制に入った。ユータは得意とする雷の魔法を放つ為呪文の詠唱を始めた。コーデリックは四聖獣を呼び出す為に魔力を集中させる。


 契約を交わした後コーデリックにはある変化が訪れていた。全身を統一している色が黒から白へと変わっていた。これは聖属性魔法を使うユータと契約を交わした為に闇属性から聖属性へと肉体が変化した事を示していた。



「いでよ、四聖獣ーー玄武!!」



 コーデリックの呼び声に水を司る四聖獣、玄武が召喚される。だが、その身体の大きさ、放つ魔力、威圧感どれをとっても以前とは桁が違っていた。本来適正のない聖属性の幻獣である四聖獣を無理やりに呼び出していたために消耗は激しく本来の力の半分も出せていなかったのだ。

 しかし今は違う。ユータとの契約により聖属性へと変化したコーデリックは四聖獣本来の力を発揮できるようになっていたのだ。そしてーー


「水流破陣壁!!」


 玄武の周囲から円状に水流の壁が表れ外側に向かって津波のように怒涛の勢いで流れていく。その水の勢いに押され機械兵達がひとまとめにされながら飛行船の上から押し出され落下していく。波が去った後に残るのは水浸しになった甲板のみだった。

地面に落ちた機械兵達は水の重みでペシャンコにされグシャグシャになりびくりとも動かない。




 そしてユータにも変化が訪れていた。見かけには全く変化は無い。だがその戦闘力には劇的な上昇が見られた。今までのユータには高い防御力と攻撃力があったが反面移動速度が遅く攻撃範囲も手が届く範囲が基本であった。が、コーデリックとの契約により移動速度が上昇し攻撃範囲も広くなった。

 ユータは電流で作り出した翼により宙に舞った。空中で姿勢を整え右手を前に突き出し呪文の詠唱を始める。



「轟く雷鳴 唸る衝撃 聖なる怒涛の一撃にて 全てを焦がす


 聖神雷鳴衝撃波セイントトールハンマー!!!!」


 ユータの手から放たれた雷は幾重にも広がり重ねられ空にタペストリーを描いた。



 バリバリバリッ ズギャギャギャギャッ!!!!




 直撃を受けた飛行船のみならず近くにいた飛行船まで巻き添えにして炎に呑まれ落下していく。その様子をあんぐりとしながらウルグエル達はただ見守るのだった。




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