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忌み子の世界救世記  作者: 紅月ぐりん
竜退治編
13/229

11話

 転々と続く小型竜の死骸を目印に片目はどんどん進んでいった。それと同時に感じる魔力も強さを増していく。魔力に混じって流れてくる熱風に片目はチッと舌打ちをする。

 この先にいるのはおそらくレッドドラゴンだ。

 竜族の中でも上位に位置する魔貴族である。高い知性と強靭な鱗を持ち吐き出す息はあらゆる物を灰塵に帰す。だが通常レッドドラゴンは火のある所を好み火山の地下のマグマ地帯などに住んでいる事が多い。この山にいる奴はどうやら変わり者らしい。



 ドン、と拳銃の音が響いた。硬い金属音のような音も。どうやらもう戦闘は始まっているらしい。

「ハハハハハハ!! 効かねえよ」

 やはり山頂にいたのはレッドドラゴンだった。5、6メートルはあろうかという巨体は今にもバレットを踏み潰してしまうのではと思わされる程の威圧感に溢れていた。

バレットは1歩も引く事もなく赤竜と向かい合って対峙していた。


「お前も懲りねえやつだなあ。前に教えてやっただろう? お前のその拳銃とかいう武器は俺の鱗を撃ち抜けねえって」

 竜が喋る間にもバレットは巧みに位置を変えながらあらゆる角度から竜の両目を狙って弾を撃ち込んでいく。だがそのどれもがかわされるか鱗によって弾かれる。

「攻撃が単調なんだよなあ。仕方ないか。お前には俺の両目を狙うしか手段がないんだから」



 ひとしきり嘲笑した後、赤竜は大きく息を吸い込んだ。

「そろそろこっちからも攻撃させてもらうぜ。燃えちまいな!」

 赤竜の口から凄まじい程の火炎が吐き出されバレットを襲う。バレットは素早く反応し横に跳ぶが一瞬遅く両足を焼かれて地面に転がり落ちる。

「ぐ……」

 赤竜はゆっくりと歩を進めるとバレットの胴に足を乗せ徐々に体重を乗せていく。

「ぐああああああっ!」

 たまらずバレットは悲鳴をあげる。バキバキ、と骨の折れる音が辺りに響く。最後のトドメとばかりに赤竜が踏ん張ろうとした時、赤竜の体が唐突に吹っ飛んだ。勢いのままに崖を転がり落ちていく。



 そこに立っていたのは片目だった。バレットの危機に居ても立ってもいられず手を出したのだ。

「お前……」

 バレットは驚いて右目を見開いた。

「大丈夫か」

 片目が声をかけるがそれを無視してバレッドは叫んだ。

「バカ野郎!! 何しに来た! 俺1人でやるっていっただろう!」


「いてて……なかなか強烈な一撃だったぜ。崖の下まで転がり落ちちまった」

 見ると赤竜が翼を羽ばたかせ地面に降りる所だった。



 赤竜は首をコキコキと鳴らして片目を睨みつける。

「その男の仲間か? 人間にしちゃやるじゃねえか」

 片目の正体には気付いていないようだ。赤竜は片目にしてやられたというのに何故か上機嫌でペラペラと喋りだした。

「そいつが何で俺の命を執拗に狙い続けるか知ってるか? その顔だと知らないようだな。そいつはな、目の前で俺に大事な恋人を殺されちまったのさ」

 ニヤニヤと笑いながら言う。片目が眉を寄せるが構わず喋り続ける。


「今から10年も前の話かな。そいつはなあ、この山でデートしてやがったんだよ。

 男同士でしかも魔族と人間がなあ! 笑いをこらえるのに必死だったぜ! 人間てやつは何をするか分からねえからおもしれえ」

 意外な話に思わず片目はバレットの方を見る。バレットは顔をしかめて逸らした。どうやら本当の事らしい。

「そいつらはよお、契約を交わしてやがった。それが気に食わなくてな。人間と魔族の「絆」とやらを引きちぎってやろうと思ったのさ。炎を吐いたら魔族の方がそいつを庇ってな。死んじまったのさ。それ以来こいつは事ある事に俺の命を狙って襲ってくるようになったのさ」

「何故だ?」

「ん?」

「お前の力ならいつでもこの男を殺せただろう。なぜわざわざ生かしておいた?」


 バレットと赤竜の顔が驚愕に歪む。バレットは自らの知らなかった真実に、赤竜は自分の手心を見破られた事に。

「ふ、フフフ。よく分かったな。そうだ、その通り。俺はわざとこの男を殺さず生かし続けておいた。なぜだと思う?」

 そう言って片目を睨みつける。

「待ってたんだよ。お前をな」

「何だと?」

「大切な者を奪われ一生を復讐に捧げてきた男が、再び目の前で仲間を失った時どんな反応をするのか気になってな!ハハハハハハハ!!」

 赤竜は高らかに笑う。片目は眉を寄せたまま表情を変えずに言った。


「そうか……よおく分かった」


片目の言葉に赤竜は満足そうに頷いていたが次に片目が発した言葉に表情を変えた。

「貴様がクズだという事が」

「なに?」

「ずっと気になっていたんだ。何故こんな所にレッドドラゴンがいるのか」

片目は一旦そこで言葉を切ると赤竜を見据え再び口を開いた。

「誇り高き竜族は自分より力の劣る者をいたぶって楽しむなどという事はしない。お前、素行の悪さで一族を追放されたクチだろ?」

ぴく、と赤竜の眉が寄った。

「ディンバーがそんな悪ふざけを許すはずがないからな」

ディンバーの名が出た瞬間赤竜の表情が一変し、鬼神の如き表情で片目を睨みつける。

「貴様、何者だ。何故その名を知っている?」

「誇り高き竜族にならともかく、外道に教える事など何もない」

 ブチ、と血管が切れる音がした。

「調子に乗るなよ……! 殺してやる!!」

 巨体をいななかせて赤竜が片目に襲いかかる。


 片目は全く動じる事なく右手の指先をクイクイと動かして赤竜を挑発する。




「来い外道。少しの間遊んでやる」

 片目と赤竜の戦いの火蓋が切って落とされた。


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