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忌み子の世界救世記  作者: 紅月ぐりん
神魔戦争編前編
128/229

116話

 赤毛の男の掛け声と共に敵軍が続々と闘技場に雪崩れこんでくる。クロ達制圧部隊はすぐさまクロを中心に円陣を組み迎え撃つ体制を整える。

 なるべく密集するよう布陣を固めているが密集しすぎても身動きが取れなくなり敵の範囲攻撃や遠距離攻撃の的となる為にある程度の間隔は空けてある。


 百人程度の少数精鋭とはいえそうなると聖魔解除防壁セイントリザーブウォールのの範囲内に全員が収まるのは無理なので、魔力消耗がより激しくなる魔族兵を中心に円陣を組み応戦する形になり人間兵は遊撃部隊として前線に出て戦うという形になった。


 流石に選りすぐられた精鋭部隊なだけはありその力量は高くザカリク兵の実力を大きく上回っていた。しかし相手は怯む事の無い勢いと数である。クロ達制圧部隊百人に対して敵の数約4000。絶望的な戦力差であった。その差を少しでも埋めるべくクロ達のパーティーメンバーはそれぞれが獅子奮迅の活躍を見せる。


 圧倒的な速度と手数で敵に反撃の機会を与えず薙ぎ倒していく片目。密集地帯に飛び込み雷の感電を利用して多数の敵にダメージを与えていくユータ。四聖獣の強力な力を巧みに使いこなし状況に合わせ臨機応変に対処するコーデリック。そして彼等のサポートに回りながら要所要所で的確に支持を飛ばし攻撃にも参加するジュレス。

 彼等の戦闘力は圧倒的で近寄る敵を物ともしない。


 一見、戦いの趨勢はクロ達制圧部隊が有利に見えた。だが、敵の数はクロ達の40倍である。そして恐らく敵側でも屈指の実力を持つであろう赤毛の大男もあれだけ威勢のいい叫び声を上げておいて一切戦闘に参加せず後方に控えただ戦いを見物しているのみだ。その視線は鷹のように鋭くそれぞれの戦い方を食い入るように見つめている。



(全く……嫌になっちゃうね)


 そんな敵の様子を見ながらコーデリックは溜め息をついた。

 恐らく今の自分達が相手しているのはただの前座でしかないのだろう。こちらの戦術を観察するのと、体力を消耗させるのが目的なのだろう。今前線で命を懸けて戦っている味方の命をアッサリと見捨て、一番合理的で無駄のない「使い方」をしている。


 ザカリクの上の連中に取って兵士などあくまで道具でありいかに上手く使いこなすか、その程度のものでしかないのだ。そして兵達もそのような扱いに不平や文句など抱かずに理想の名の元に命を平然と投げ捨てる。


(まるで『カミカゼ』だな)


 ユータは相対する敵兵の姿を見てそういう感想を持った。

 「カミカゼ」とはユータの故郷地球で日本国が第二時世界大戦時に行った作戦である。敵軍の空母に対して片道分の燃料だけを乗せた飛行機に爆弾を積み体当たりをするという自身の命を捨てる事を前提にした恐るべき特攻攻撃である。


 しかしこのような手段に出ても日本は戦争に勝つことが出来なかった。資源が圧倒的に不足していたからだ。しかし、ザカリクはそうではない。地球で例えて言うならばアメリカ並みの巨大な国土と資金と資源を持つ大国が日本のように決死の覚悟を持って特攻を仕掛けてくるようなものだった。


 攻撃を仕掛けられる側からしてみればたまったものではない。狂気の沙汰としか言い様が無かった。しかし、ザカリクではそれは当たり前なのだ。



 改めてクロ達は自分達が相手をしている敵の恐ろしさを痛感せざるを得なかった。いつも彼等の攻撃はこちらの想像を超えてくる。いや、まっとうな人間なら考えつく事もないような事を平然と行ってくるのだ。


 クロは、かつてない焦りを感じていた。このままでは勝てない。消耗戦では勝ち目がない。しかし悪巧みでは相手を上回る事は出来ない。

(相手と同じ土俵に立っていたら負ける。悪意と狡猾さでは圧倒的に相手の方が上なんだ……『答え』を見つけ出さないと)

 今まで先延ばしにしてきた答えをこの戦いの中で見つけ出さねばならない。そうしなければ勝てない。



 クロは痛切にそう感じていた。

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