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忌み子の世界救世記  作者: 紅月ぐりん
神魔戦争編前編
120/229

108話

「世界各国の皆さん、こんにちは。ぼくの名はネクロフィルツ=フォンデルフ。魔族信仰者の間で救世の天子と呼ばれる存在です。先日、マガミネシア軍がアクアドール国首都アルクエドへと侵攻を行い、現在アルクエドは王政に代わる新しい政府の元に新しい道へと歩み始めました。


……即ち、魔族信仰者への差別迫害のない、女神信仰者と魔族信仰者が共に同じ道を歩んでいく為の1歩を、です。ぼく達は戦争がしたいのではありません。侵略がしたいのではありません。


 女神信仰者の誤った信仰の元に奪われた魔族信仰者達の土地の返還、魔族信仰者と女神信仰者の完全なる対等で平等な付き合いを望みます。ぼく達から奪った土地をぼく達に返して下さい。

 そして、良き隣人としての新しい関係を強く望みます。その為にも各国の指導者と話し合いの場を持ちたいと考えています。



 どうか、新しい平和な世界の建設の為にもよいご決断をお待ちしております」




 アクアドール首都アルクエドがマガミネシア軍によって制圧されてから半月程経ち、情勢が安定した事を受けてサーベルグは次の段階に移る事にした。

 通信虫を通じた世界各国への所信表明、及びザカリクへの交渉へ向けた放送を送ったのだった。所信表明をサーベルグではなくクロがする事により先の戦い(実際アルクエド軍とマガミネシア軍は戦っていないが)が侵略目的ではない事、女神信仰者からの魔族信仰者への不当な弾圧差別を無くす為の行動であるという事を強く訴えかける内容であった。


 各国の指導者は通信の内容はもとよりわずか12歳かそこらの少年が大人顔負けの演説をしている事に驚きを隠せなかった。そしてその少年の凛とした美しさ、映像越しでも伝わってくるカリスマ性に魔族信仰国家は多いに勇気づけられ逆に女神信仰国家は多いに恐れおののいたという。


 魔族信仰国家からは続々と賛同の声が寄せられ、ごく1部ではあるが女神信仰国家の中にも賛同を表明する声が上がった。これらの国はザカリクから地理的に離れていて影響を及ぼされていない国であった。



 これらの反応、声明に対してザカリクは同じように反演説を行い、女神の土地を不当な手段で奪い私利私欲の為に利用する魔族と魔族に魂を売り渡した悪魔を殲滅し女神による完全なる平和と統治をもたらす為に戦いも辞さないという声明を発表した。

 殆ど宣戦布告のようなものであった。


 こうして魔族信仰国家と女神信仰国家による世界を2分する戦争が勃発する事になるのである。後の世に神魔戦争と呼ばれる戦であった。



「どうかな? 各国の反応は」

「上々、といった所ですね。女神信仰国家の中にも賛同する国が現れたのは嬉しい誤算ですね。ここからの繋がり交渉次第では更に賛同者を増やせるかもしれません」


 サーベルグの報告にクロの顔が明るくなる。

「ザカリクはほとんど宣戦布告という取れる反応をしてきましたが、即戦争という事にはならないでしょう。戦いの前にどれだけの国が味方につき、敵に回るかを把握しておかなければなりませんからね。同様に世界の各国も、どちらに身を振るかでしばらく様子見状態になるでしょう」

 ザカリクとマガミネシア、どちらも世界に多大な影響力を持つ超大国である。ここでの身の振り方は国の将来を左右する重大懸案である。早い話が、勝ち馬に乗れるかどうか、という事なのだ。


「したがって私達が今やるべき事は……」

「戦いの前にどれだけ味方を増やせるか、だね?」

「そういう事です。いわば前哨戦ですね。ここでの結果が戦いの結果に大きく影響してくるでしょう。決しておろそかにはできません」

 クロも同意するように頷いた。


「もちろん。ここでの結果次第では戦いを起こさずに済ませられるかも知れない」


 あくまで可能性の話ではあるがこちらが圧倒的多数で優勢になれば向こうも負けの見えている戦に踏み切る事はなくなるかもしれない。その場合、軍による侵略ではなく少数精鋭による暗殺に切り替わるのだろうが、それこそ望む所である。


 そうなれば少なくとも一般人や兵が犠牲になる事は無くなるのだから。後は自分達が送られてくる刺客を撃退すればいい話である。



 とはいえ、まだ戦は始まってすらいない。希望的観測だけで現実を見ないのは命取りである。クロは改めて気を引き締めなおしたのだった。

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