102話
廊下を連れ立って歩くユータとジュレス。気恥ずかしそうに、だが確かに互いの手を繋ぎ一緒に進む。廊下を進んでいくとクロとコーデリックに出くわす。コーデリックは意味ありげにウフフと笑いクロは驚いたかのように2人の繋いだ手を凝視している。
ジュレスは死ぬほど恥ずかしかった。でも、繋いだ手を離す気にはなれなかった。
「うまくいったみたいだね」
「おかげさまでな」
クロは2人の会話から何が起きたのか察したようで、
「え、ええ……?」
いきなりの展開に目を白黒させている。
「つ、付き合う事になったの? お、おめでとう」
混乱しながらも祝福の言葉をかけてくれた。
「あ、ありがとう……」
頬を赤く染め礼を言うジュレスにクロは目を丸くして、
「なんか、ジュレスがすごく可愛くなってる」
と呟いた。
「同感だね」
「可愛いだろう。だが、やらんぞ」
などと好き勝手に言っている。
「ば、馬鹿野郎!……変な事言うなよなぁ……」
顔から湯気を噴き出しそうになりながらしどろもどろになりながら言うジュレスを見てクロは身体をもじもじさせながら
「どうしよう……なんか今のジュレスを見ていると胸がドキドキする……もしかして、これが恋?」
「あれ、クロもとうとう恋に目覚めちゃった? よし、じゃあ4人で酒池肉林のめくるめく快楽の世界へ旅立とうか」
「だからジュレスはやらんと言ってるだろうが!」
チッチッチ、と指を振りコーデリックが分かってないなあ、と言う。
「ボク達がジュレスをものにするんじゃなくて、ボク達がキミのものになってあげるって言ってるんだよ。絶世の美少年が3人、キミのものになるんだ。好き放題できるんだよ。……悪い話じゃないだろう?」
などと悪魔の囁きで誘惑してくる。
「ば、馬鹿……俺は美少年なんかじゃねえよ」
「ジュレス、突っ込む所はそこじゃない」
ユータが、お前はオレがほかの奴のものになってもいいのか、という目線をジュレスに送り睨むとジュレスは
「俺は別に……ユータ兄がちゃんと俺の事を見ていてくれさえすればそれでいい」
「え」
「いつまで一緒に居られるか分からないんだ。独占できなくたっていい。ユータ兄が俺を好きでいてくれれば……それだけで」
「ジュレス……」
いじらしい事を言うジュレスに胸が締め付けられる。
(オレは、こんなにオレを思ってくれる奴を見捨てて、帰ろうとしていたのか……その気持ちに、一切応える事もせずに)
「いつまでも一緒に居られるか分からないって……?」
クロが疑問を浮かべるとコーデリックがユータとジュレスの代わりに答えた。
「ユータ君は異世界の人間だろう? いずれ自分の世界に帰らなければならない。そういう事さ」
「なんで?」
それでもクロは分からない、という顔をして言う。
「それならジュレスも一緒に行けばいいじゃない。なんで一緒に居られなくなるの? そんな障害を乗り越えても尚一緒に居たいって思う事が『好き』って事なんじゃないの?」
「「「………………」」」
黙り込む3人にクロはあれ? という顔をして
「ぼく何か変な事言ったかな?」
という顔をして焦る。
「いや」
と首を横に振り
「お前の言う通りだよ。全くもってその通りだ」
と降参のポーズをしてユータが肯定する。
「全く、クロには叶わないよ。ホントにね」
コーデリックが苦笑を浮かべる。
ジュレスだけが暗い顔をして
「でもクロ……ずっとお前の傍にいるって約束したのに」
と言うとクロはうーん、と唸り
「じゃあぼくも一緒に行こうか?」
などととんでもない事を言い出す。
「お前、本気で言ってるのか?……帰ってこれるか分からないんだぞ?」
とジュレスが言うと、
「帰ってこれないと決まった訳じゃないじゃない。ユータ兄さんがこっちの世界に来れたんだから、出来ないって事はないと思うけど。……もしダメだったら皆でユータお兄さんの世界で一緒に暮らすとか。……ダメかな?」
「「「………………」」」
再び全員が黙り込む。
「ぷ、くくく……あはは」
とジュレスが耐えられないといった様子で噴き出し、コーデリックもクスクスと笑っている。ユータも声には出さなかったが、微笑を浮かべていた。
「え、なんで笑うの? ぼく何か変な事言った?」
などと焦り出したので更に笑い出した。
コーデリックが場を整え後押しして尚あれだけ2人が悩んで出した結論を、クロは何も気負う事もなくあっさりと出してみせた。まるでそんなのは世界を救う事に比べたらずっとたやすい問題だ、とでも言わんばかりに。
クロには叶わない。この場の誰もがそう思ったのだった。
クロ△(さんかっけー)っす(,,•﹏•,,)




