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忌み子の世界救世記  作者: 紅月ぐりん
竜退治編
11/229

9話

 片目は冒険者ギルドの建物へと入った。

 扉を開けると大量の視線が片目へと集まった。部屋の中にいた冒険者達だった。値踏みするように片目を見ている。片目は特に反応せずつかつかとカウンターへと進み出た。


「ここで登録すれば冒険者になれると聞いたが」


 用件を告げると女性職員は頷き、

「はい、そうですね。冒険者になるためには現役冒険者からの推薦をうけるか承認試験を受けて頂いて合格して貰わなければなりません。合格して頂ければ晴れて冒険者としての活動が許可されます」

「その承認試験とやらはすぐに受けれるのか?」

「承認試験は当ギルドでは月に1度行われています。今月の試験は2週間後になっております」

「そうか、では2週間後にまた来ればいいんだな」



「その必要はないぜ」



 後ろから声をかけられ振り返ると、30代後半くらいの長身の男が立っていた。つばのある帽子を斜めに被り腰に巻いたベルトには見慣れない鉄の道具が差し込まれている。上着はジャケットを着込み下は黒いズボン、両足には長靴を履いている。無精髭を生やした顔には飄々とした表情が浮かんでいる。

「どういう事だ?」

「俺があんたの推薦人になってやるよ。そうすればわざわざ試験なんぞ受けんでもすぐに冒険者として活動できる」

「……何が望みだ?」

 片目は警戒心を露わにして男に尋ねた。無償でやってくれるなどと考える甘い考えの持ち主ではない。当然なにかしらの目的見返りがあってしかりだと考えていた。そしてその考えは間違っていなかった。


「……狩りを手伝ってもらいたい。あんたの腕を見込んでの頼みだ」

「私の実力も知らないのにか?」

 この街に来てから目立つような事は何もしていない。誰かに見られていたとしても片目の力を確信できるような事は何も起きてないはずだ。

「目の前の相手の実力も測れない程腑抜けじゃないさ。俺の目は1つしかないが、節穴じゃあない」

 目の前の男は片目と同じく隻眼だった。片目との相違点は右目ではなく左目が塞がっているところか。


「前報酬として狩りの成功如何に関わらず今すぐ推薦状を書いてやる。無事に成功したら追加報酬として金を支払う。悪い話じゃあないだろ?」

「まだ肝心な事を聞いていない。何を狩るつもりなんだ」



「……ドラゴンだ」



 表情を厳しくして男はそう答えた。周囲の冒険者達のひそひそ話が聞こえてくる。

「出たよ。[死にたがりの隻眼]」

「また勧誘か。懲りずによくやるぜ」

「竜狩りなんてベテランの上級冒険者がチームを組んでやっと倒せるかどうかの危険度Aの獲物だぜ。新人が受けるような仕事じゃねえよ」

 周りからの嘲笑にも全く気にする様子がない。慣れているのだろう。嘲笑されるのにも、断られるのにも。


「良いだろう。その依頼、引き受けよう」


 ざわ……と周りがざわめきたつ。まさか……とか正気か?とか色々聞こえてくるが片目は全く動じず男の返答を待っている。男は少し驚いた様子だったがすぐに頷き、

「商談成立、だな。約束通りすぐに推薦状を書こう」

 男は言葉通り懐から筆を取り出し受付から用紙を受け取るとサラサラと推薦状を書き始めた。書き終わると受付に手渡し

「はい、確かに推薦状を承りました。確認いたしますがあなたのお名前は?」

 と聞かれたので

「片目だ」

 と答え

「片目様、ですね。これがギルドカードでございます。冒険者の証となりますので大切に扱いください。再発行はされませんので」

「分かった」

 と言って受付からギルドカードを手渡された。銅で出来たカードには冒険者ギルドの刻印が刻まれていた。


 ギルドカードを懐にしまうと片目は男に視線を送り

「では、行こうか」

 と声をかけた。

「そうだな」と男も頷き歩き出したがすぐに足を止め、

「そういえば、まだ名乗っていなかったな。俺はヒュージ、ヒュージ=バレットだ。よろしくな」

 そう言って手を差し出してきた。

「ああ」


 二人の間で握手が交わされた。


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