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忌み子の世界救世記  作者: 紅月ぐりん
エスクエス奪還編
109/229

98.5話

……クロ君達は無事エスクエスを奪還できたようだね。流石は策謀の魔王皇。殆ど人的被害無しで裏工作だけで一国を落とすとはね。恐るべきはその頭脳だね。


 彼はどうも薄々僕の存在に気付いてる節がありそうだね。僕も彼の思考だけは読み取れない。脳味噌がこの世界の外にあるからね。あの、ブラックタワーの内部は実は異世界に通じてるんだ。微妙にこの世界とは位相のズレた世界というか。だから仮にマガミネシア全土を破壊しつくしたとしても彼は滅びない。本体とも言える脳が無傷だからね。


……どこまで彼は知っているんだろうね。今回の一連の流れはクロ君達の意思で動いているようで実は全部彼の思惑で進められていた。最後の会談なんか正にそれの極みだろう。それに気付いてる者がどれだけいる事やら。コーデリックは感付いているけど放置してるって感じだね。全く彼らしいよ。


 まあ、救いなのは彼が正真正銘善人だと言うことだろうね。彼を敵に回していたら今頃クロ君達は一人も生き残れなかっただろう。一国を色華だけで落としたコーデリックもそうだけど、魔王皇というのは本当に侮れない存在だよね。

 まあ本当に凄いのはそんな彼等を骨抜きにしちゃうクロ君なんだけどね。


 彼は今回の戦いで成長したようだ。以前のクロ君なら今回の会談のような結論は出せなかった筈。事実彼はユータ君の問いに答えられなかった。あれから彼なりに色々考えたんだろうね。……本当に、救世の天子というのは有り難い存在だよね。彼の存在によってどれだけ多くの者が救われている事やら。

 最も本人は無自覚のようだけど。


 無理もないね。目の前であれだけの者が死んでいけば無力感も感じるだろうさ。……ちょっとそれが心配なんだよね。クロ君はとても強い子だけど、それ故に誰からも頼りにされ、逆に頼る事が出来ない。

 いくら彼が規格外の存在といっても人の子である事には変わらないんだ。絶対無敵の存在じゃないんだからさ。

 そんな奴がいたとしたらそれはもう人じゃない。神って奴さ。


……………………


 でも、その神って奴も案外無力な存在さ。何故かって? 神が本当に万能の存在ならこんな悲劇に満ちた世界が存在してるのはおかしいじゃないか。

 そうじゃないなら今のこの世界の現状はその神が望んでそうなってるって話になってしまう。こんな事を言ったら神を信仰してる連中に殺されてしまうかも知れないね。


……でも、勘違いをしてはいけない。神がどんなに完璧な存在だったとしても、君の願いを都合よく叶えてくれる存在ではないという事さ。

 例えば、君が悪党に襲われて怪我をしてしまったとしよう。君は必死に神に救いを求める。でも結果は、殴られた上に金まで奪われてしまう。君は心の中で神も仏もあるもんか、て憤慨するだろう。


 だが、君は本当に救われるに価する存在なのかな? 普段ろくに神を信じてる訳でも信仰してる訳でもないのに自分の都合のいい時だけ神の名を叫び救いを求める。


 そんな奴を救ってやる必要が本当にあるのかな? 少なくとも、救われなかった事を逆恨みして恨みつらみを吐き出すような奴を救いたいとは僕は思わない。

 そんな奴を救うくらいならもっと救いに価する者を助けるよね。クロ君みたいな、さ。

 でも現実はクロ君程の善人ですら苦しい現実を生きている。これはどういう事なんだろうね。……やはり、この腐った現実は神が望んでいる事なのかも知れないね。


…………少なくとも、『あのお方』とやらはそれを望んでいるようだよ。魔獣合身、あれは酷かった。本当に酷かった……

 合身は、人と魔族の絆の結晶。奇跡と言っていい何物にも変えがたいものなんだ。

 それを、最大限に辱しめるやり方で利用している。全く、本当に『あのお方』とやらは僕を失望させ苦しめるのが上手いよね。 彼の悪質な所は敵どころか味方にも全く救いをもたらさないという事だ。普通どんな悪党でも自分の身内なら甘くなるものなんだ。身内っていうのはある意味自分の延長線上にいるものだからね。


 でも彼にはそれが全くない。これは、彼が彼自身にも激しく絶望して何も望んでない事を示している。……全く、落ちぶれたものだよ。かつては世界を救った存在が……。

 でも、そうなったのも、僕のせいか……………


 ある意味で全ての元凶は僕なんだろう。いつかクロ君達がパーティーを組んで僕を倒しに来るのかもね。『世界に真の自由をもたらす為に!』とかなんとか。……それで、僕が死ねば皆幸せになれるなら喜んでこの身を捧げよう。

 でも残念ながら僕は死なないし既に世界は僕のコントロールから外れてしまっている。




……本当に、神って奴は役立たずだよね。少なくとも、この世界においては。

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