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忌み子の世界救世記  作者: 紅月ぐりん
エスクエス奪還編
102/229

92話

 マガミネシア国主クロイツェフ=サーベルグ=ヴァン=マガミネシアはアクアドールへ宣戦布告をし王都アルクエドへと進軍を開始した。その情報は世界を駆け巡り震撼させた。マガミネシアを出発した大軍は一直線に西のアルクエドへと進んでゆく。


 ゴブリン、リザードマンを中心とした歩兵部隊、ケンタウルスを中心とした騎兵部隊、ワイバーンや鳥人種を中心とした飛行部隊、吸血鬼やゴースト、淫魔族を中心に構成された魔法部隊。主にこの4つの部隊で構成された部隊の人員は12000。

 アルクエドを落とすには過剰とも言える程の戦力だった。


 クロ達はその部隊と共にアルクエドを目指し進軍していた。ユニコーンの背に揺られながらクロは自分達を取り巻く大軍をただ眺めるばかりだった。

「ふええ~ すごい人数だね」

「確かにな。4年前の戦争の時もここまでの軍は見なかったな」

 ユータが記憶している限り4年前の戦で招集された軍の総数は10000くらいだった筈。それ以上の大軍がアルクエドへと向かっているのだ。

「キュイ~ キュイキュイ」

「どうしたのルビー?」

 肩に乗せているカーバンクルが何かを訴えるかのように鳴き声を鳴らした。赤い瞳をしているのでルビーとクロは呼んでいる。


「『戦の空気に引き寄せられて災厄が増大している。自分の力では抑えきれない』

と言っている」

 と片目が通訳した。

「災厄が……」

「つまり何かが起こるという事だな」

 ユータがそう言った次の瞬間、前方に敵影と思われる集団が発見された。斥候のガーゴイルの報告によれば、魔族と人との混成部隊がおよそ3000。恐れるような数ではないが、無視できる数でもない。

「早速おいでなすったようだな」


「どうやら反王制派過激派の残党のようです。上級魔族も多数報告されており、まともにぶつかれば影響は避けられないかと」

「ふむ、ここで部隊に余計な消耗はさせたくないな。私達が打ってでよう」

「そうだな」

「おう」

 片目の提案にジュレスとユータが応じる。

「じゃあぼくも……」

「クロは待機だ。何せ相手は過激派。この人数差を知って尚攻撃を仕掛けてくる奴らだ。何をしてくるか分からん。気を付ける事にはこした事は無い」

 それでもクロは食い下がる。

「でもこの人数にたった3人で突っ込むなんて無謀すぎるよ! ぼくも出る!」

 駄目だ、とクロの提案を却下しようとした時上空から物凄い勢いでこちらに向かってくる影があった。

「あれは……コーデリック?」


 果たしてそれはコーデリックだった。全身を炎に包まれた巨大な鳥の背に乗ってクロ達の目の前に降り立った。

「やあ皆。過激派の連中をどうするか話し合ってた、てとこでしょ? ボクが出るよ」

「おい、いきなりやってきて私達の仕事を奪うな」

 片目の講義ににひひ、と笑い

「じゃあ皆でやろうか。いくらボクでも相手が3000人もいたんじゃ上手く手加減できる自信がないからね」

「手加減、ときたか。えらい自信だな」

 ユータの皮肉にもコーデリックは自信ありげに

「まあね」

 と答えた。


「コーデリック、君は王都で潜入工作をしていたんじゃ」

「うん、それはもう終わったんだ。王は正気に戻り魔術師長と占星術師長は投獄されたよ。後の処理は法王庁の人達に任せてきた」

「でももしもの事があったら……」

「そのもしもの時が今さ。サーちゃんに頼まれたんだ。クロ達の手伝いをしてきてくれって」

 なおも心配するクロにコーデリックはそう告げた。

「サーベルグが……」

 サーベルグはここにはいない。マガミネシアに残り作戦の全体指揮をとっている。戦場で指揮を取り続けているとその場の雰囲気に流されやすくなってしまうだとか。何よりもサーベルグが十全の力を発揮できるのはマガミネシア国内に限られるのだ。


 マガミネシアの建国、そして発展を自身の生涯の仕事と定めたサーベルグは出来うる限りの防御策を取った。その一つとして国内に限り自身の力を増大させるというものがある。だからこそクロ達四人を相手に大立ち回りを演じる事ができたのだ。

 代わりに国を出てしまうと中級~上級魔族程度の力しか出せない。


「不確定要素ほど危険なものはない。だから速やかに全力で排除する。って言ってたよ」

 クロはそれ以上何も言えなくなってしまった。だが相変わらず不安が残っている。災厄が、何も起こさずに過ぎ去ってくれるとはどうしても思えないのだ。



「さて、じゃあ行くか」

 片目の声を合図に4人は敵部隊へと向かっていった。



 いよいよ戦が始まろうとしていたーー

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