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01.ハンター登録

01.「ハンター登録」



人種首都『ノートルダム』

人種族は平均的な身体能力、魔力を有するバランスの取れた種族。いってしまえば器用貧乏。

ただ繁殖能力だけは優秀で他の種族の優に5倍の人口を誇っている。数は力なりを地で行っている。

それによって問題もある。まずは食糧問題、人口が増えれば食料の供給も増やさないといけない。

不作の年が続けばあっという間に飢餓が広まり人口は激減する。

次の問題が雇用問題、つまり仕事がないのだ。万人に等しく仕事を与えることなど不可能。

ただこの問題に関してはハンターギルドがあるためにある程度緩和しているといえる。

命に係わる仕事が主立っているが、仕事を探せなければどちらにせよ死ぬのだから変わりない。

そしてクロエもハンターギルドに登録するために街中を歩いている。


「身分証明書とかない状態で本当に登録できるんでしょうね」


『問題ないよ。そういった身分を証明するものが無い人なんてそこらじゅうにいるんだから』


恐らく浮浪者のことをいっているのだろう。これだけ大きな都ならスラム街だってあるかもしれない。

クロエだって好き好んでそんな治安の悪い場所に行こうとは考えていない。ただ気になっただけだろう。

ちなみに会話している人物は自称女神。今は左耳のイヤリングを通して念話を行っている。


『そこを左に曲がって真正面に見えるのがハンターギルドよ。ギルドカードは身分証明書の代わりになるからクロエにとっては必須ともいえる貴重品アイテムよ』


「ゲーム風に言うな」


地味だが長い年月建っているであろう建物は味のある風格を醸し出しているような気がする。

クロエにしてみれば長い年月が立ったものには付喪神が宿るとされているが、目の前の建物になら付喪神がいるのではないかと思ってしまうほど。

中に入ればみれば予想外に人の数は少なかった。元から人が少ないのか、作業が早いのかのどちらかだろう。

その中で登録という札が書かれている窓口にクロエは向かっていく。周囲の視線を浴びながら。

クロエの恰好は呼ばれた時のままの巫女服。これはクロエにとって仕事着と変わりないのだが周囲には奇抜な格好に映っているのだろう。

その背景にこの人種首都は洋式が主体となっており、和の文化が全くないといえるのだ。


「登録をお願いしたいんだけど」


「構いませんが、えっと、戦えますか?」


受付の女性からの一言でギルド内が笑いに包まれた。受付の人は心配して声を掛けただけなのだが周りの笑いは嘲笑でしかない。

クロエも自分の恰好を見て、納得してしまう。武器らしいものも防具もなしでどうやって戦うのか。

素手で戦う術もあるが、やはり見た目も大切だろう。


「武器とかはあとで調達するつもり。先に登録を済ませておこうと思って」


「そうでしたか。それではこちらに記入をお願いいたします。もし分からないところが未記入でも構いません」


紙には氏名、年齢、出身地、使用武器、魔法属性と書かれていた。一応自称女神から文字について学んでいるため書くことに不安はない。


氏名:クロエ・アイズ

年齢:19歳

出身地:不明

使用武器:剣

魔法属性:不明


分かる範囲内で正直に書いていた。こちらで刀が存在しているか分からないからあえて書かず、出身地なんて正直に書いても誰も分からないだろう。

魔法属性は不明と書こうとしたら『全属性いけるよ!』という怪電波が送られてきたが無視した。

受付の女性に書類を返して、OKを貰うとしばし待つように告げられる。

恐らく審査とカード発行までの待ち時間だろう。近くの椅子に腰かけながら周りを見渡してみるとある受付の方で手を振っている。


「何か用?」


「いやぁ、珍しい格好していると思ったからさ。それって和服かな?」


声を掛けてきたのは軽薄そうな男性職員だった。『ナンパきたぁー!』と喧しい声を無視して溜息を吐く。

何でこんな自称女神のサポートを受けたのだろうと後悔していた。


「その黒髪に和服は似合うね。スタイルもいいし、ギルドの受付でもやっていけるんじゃないかな」


「ナンパなら結構です」


「確かにナンパだけどさ。この時間、受付は暇なんだよ。だから軽く話でもしようよ」


「有益な話ならいいけど、そうじゃないならさっさと離れる」


「有益ねぇ。冒険者に成り立ててどうみても初心者の君に与える情報となると近隣の森に関することかな」


首都の周りは広大な森に囲まれているから、そのどこの部分を指して近隣の森と言っているのクロエには判断がつかない。

それを察したのか男性職員はニッと笑い得意げに説明を始める。


「初心者がよくいく森は東の森、そこが一番レベルが低い魔物が出るのさ。ゴブリンとかスライムとかね。

逆に上級者が行くのが北の森だ。あそこは氷豹とか土亀とか属性を宿した魔物が徘徊しているから滅多な事じゃない限り誰も近づかないぞ」


「なるほど。つまり私みたいな者は東の森で経験を積めという事だな」


「そういうこと。討伐系と採取系を同時に受けると効率はいいが、君みたいな新人は一つずつこなしていくのをお勧めするよ」


その後この街について色々と質問を行った。薬ならあの店、武器防具ならあの店がお勧めとか。

自称女神が『いい雰囲気じゃない』とか戯言を言っているが、更に無視。クロエにとって彼は好みではない。


「あんたはまたナンパしているの?」


唐突に男性職員が後頭部を叩かれて机に額をぶつけていた。その後ろにいたのは先程登録を行った女性。

『修羅場?ねぇ修羅場よね?』いい加減、この念話を切りたいと思い始めていた。

女性職員は一枚の銀色のカードを渡してくる。それは何も記されていない銀色の板といっても過言ではない物。


「その板に血を一滴つけてくれないかしら」


一緒に渡された針で指先を指して傷口に血を集めるように他を圧迫して一滴をカードに垂らす。

血が付着するとカードは淡い光を放ちながら文字を、模様をカードに記していく。


「登録完了です。それでは説明を行います。カードには貴方の基本情報とクエスト受注の履歴、討伐履歴などが表示されます。

内容を確認したいときは表示と念じて頂ければ大丈夫です。討伐履歴に関しましても自動的に記録されていきますのでご安心を。

それと表示したくない内容につきましてはフィルターを掛けることも出来ますのでご利用ください」


「不正防止も出来ていることね。取り敢えず試してみようかな」


表示と念じてみると確かにカードの表面に情報が開示されていた。何故か日本語で。


名前:クロエ・アイズ Lv1

年齢:19歳

種族:半神人


すぐにカードの表示を消した。明らかに他人に見せてはいけない情報が載っていた気がする。

油断していた、まさか種族が変更されていてなおかつ半分神様になっているとは思いもしなかった。原因は恐らく。


『あぁ、やっぱりそうなるか』


「どういうことよ、これは」


『ほら、貴方あの空間で紅茶とクッキー食べたでしょう。あれの影響で神気を取り込んじゃったと思うのよ。

それに他の転移者たちよりもあの空間にいる時間が長かったことも影響していると思う』


「この世界の種族で半神人は何人位いるの?」


『クロエだけだよ。何処の世界に神の領域に足を踏み入れる人間がいると思うの』


そっとイヤリングに触れると魔力を流し込む。攻撃的意思を持って。


『アババババッ!?』


まるで感電したかのように変な声が念話を通して伝わってくる。もちろん折檻をするつもりでやったのだから当たり前。

念話で繋がっているのであれば魔力も流れていくと考えたがどうやらクロエの目論見は的を射たようだ。


『もう魔力を使いこなすなんて、恐ろしい子ね!』


「喧しい自称女神が。早々に面倒臭い事態に巻き込みやがって」


『いやぁ、私の不注意とはいえ面白い状況だよね。それがバレたら大騒ぎよ』


「この自称駄女神が!」


パワーボムをイメージして魔力を流すと『ふぐぁ!?背中がぁ!!』と痛快な悲鳴が聞こえてきたので成功したのだろう。

何気にこの折檻システムは便利だ。イメージ通りに自称女神に体罰を加えられるのは精神的によろしいとクロエは思っていた。

もちろん目の前の受付嬢は黙ったまま密かに微笑んでいるクロエを若干引いた目で見ている。


「あの、何か不明な点がありましたか?」


「いや少しこれからのことを考えていただけ。それじゃ私はクエストを受注してさっさと行くわ」


「ならこれがお勧めです。ゴブリン討伐とシィナ草の採取です」


「ゴブリン討伐は分かるけど、シィナ草っていうのは?」


「こちらが見本です。ギザギザ葉が特徴的で主に傷薬の材料となります」


「なるほど。これを何束?」


「20束で結構です。それで二つを受注しますか?」


「お願い。それじゃ行ってきますか」


「「無事の生還を願っています」」


恐らくギルドでの定例挨拶なのだろう。2人揃って同じ言葉を使っているのだから間違いないと思う。

悠然と歩いていくクロエを2人は出ていくまで見送っていた。ただ思っていることはお互いに同じだと思う。


「あの年齢でレベルが1というのはどういうことだろうね」


「だよな。普通に生活していても2,3くらいまでは上がっているよな」


経験値というのは何も魔物を倒すだけで得られるものではない。知識を学ぶこと、体を鍛える事でもある程度の経験を得ることが出来る。

それなのに今来た彼女は経験が全くのゼロなのだから2人にとっては不思議でならないのだ。


「それに武器と防具もなしでここに来たということは無一文よね」


「まさか武器なしで挑みにいくとは思えないが、そうなったら戻ってくるかな」


彼の懸念の通りクロエは武器なしで挑む気満々だった。どちらにせよ無一文なのに変わりがないのだから武器なんて買えるはずもない。

防具もしかり、素手でゴブリンを討伐しに行く冒険者もまずいないだろう。

本来討伐依頼は事前の準備をしっかりと整えてからいくのが常識なのだが、クロエはまだそこらへんを理解していない。


「格好も変わっていたけど、無事に戻ってくるかな」


「姉ちゃんが不安に思うのも当然だと思うが、不思議と何とかなりそうな雰囲気がなかったか」


「それは確かに言えてるわね」


今は午前10時くらいだからあっさりと夕方位に戻ってきそうな気が2人は感じていた。

ゴブリン程度に素手とはいえクロエが殺されるとは全く思えない、会話をしてみて強者とはこういうものかと感じていたのかもしれない。

偶に怖い笑みを浮かべるのはどうかと思っているが。


ゲーム風の異世界を書きたいと思って急遽書いてみたけど意外と方向性が定まってビックリ。

でも最初は街の観光も書こうと思ったけど無一文だった設定を思い出して挫折。

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