クリスマスイブに別れた俺たちの結末
クリスマスイブ。
きっと日本中のカップルが浮き足立ち、子供たちはサンタさんからのプレゼントを楽しみにしていて、親たちはその子供たちの笑顔を楽しみにしている。
そんな日本がどこか幸せな空気に包まれるクリスマスイブの日に、俺は孤独だった。
大した理由じゃなかった。
仕事が予想以上に立て込んでいて、クリスマスイブに会える時間が遅くなるかもしれない。
二十二時までしか点灯していないイルミネーションは一緒に見れないかもしれない。
それだけの理由。
何年も続いた俺たちの関係は、そんな些細な理由で一瞬にして壊れた。
皮肉な事にクリスマスイブの昼休みに。
皮肉は重なり、仕事は予想以上に早く終わり、十八時に会社を出る事ができた。
イルミネーションに向かう。
地下鉄から降りたら、カップルだらけの人ごみ。
何しに行くんだ。
ちくしょう。泣きたい気分だ。
イルミネーションを見ているのか、彼女を探しているのか、分からない。
カップルだらけ時々親子の公園を、俺は心あらずの状態で男一で人歩くのだった。
その時だ。
彼女から電話がきた。
「何してるの?」
「イルミネーション見てる」
「一人で?」
「うん。一人で」
しばし続く無言。
俺は聞く。
「お前は? 何してるの?」
「私も一人で見てる」
「ふ~ん」
無言。
「一人はつまらないな」
「そうでもないよ」
「そうか?」
「うん」
「俺たちってやり直せないか?」
「無理よ。だって終わって無いもの」
また、無言。無音。
電話って事は俺たちの距離は離れていて、同じ空間にいないはずなのに、気まずい空気を共有している。
彼女の気持ちは分からないけれど、この無言はそういう事なのだろう。
「そう言えば、聞かれなかったら答えなかったけど、私が見てるのはイルミネーションじゃないかもしれない」
彼女はとても静かに穏やかに、でも冷たく言った。
俺は聞くのだけれど、
「何見てるの?」
彼女は答えなかった。
その時、電話は切られた。
俺は空を見上げる。
こう言う日に限って天気良いな、皮肉なもんだな。
と思った。
もういいや。
投げやりな気分になった俺は、帰る事にした。
その時、彼女の声が聞こえた。
「あなた」
振り向いても彼女を見つけられない。
「わたしが見ているのはあなたよ」
絶対に彼女の声なのに、声が聞こえる近距離にいるはずなのに、人ゴミがじゃまで彼女を見つけられない。
「これからも、ずっと、見ているからね」
また電話が鳴った。
俺はディスプレイに表示された『田中』の苗字だけを見て、彼女だと思った。
名前までは見なかった。
電話は彼女からではなかった。
彼女の母親からの電話。
苗字『田中』、名前『実家』からの電話。
彼女の母親は泣きながら言った。
「ごめんね。ごめんなさいね。トウヤ君。娘が自殺したの」
その時、どこからともなく、彼女の声が聞こえた。
「大丈夫よ。ずっと、ずっと、見ているからね」