某小説投稿サイトのバナー広告がウザすぎる
極度のアウトドア嫌いである俺の唯一の趣味。それは、部屋にこもってWeb小説を読むことである。
大学が休講である今日、俺はいつも通りベッドに寝転がりながら、国内最大級の小説投稿サイト『小説家になりたい』のランキングを漁っては、時間を潰せそうな作品を探していた。ランキング上位から順番に目を通していく。
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1.婚約破棄は、ハキハキと 15,693pt
2.後悔しても、許しません 〜いまさら『婚約破棄する』じゃなくて『こんにゃく破棄する』と言っただけと言われても、もう遅い〜 12,890pt
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ランキングトップには日間とは思えないポイント数の作品が表示されている。俺はタイトルを見ながら画面をスクロールしていく。
「......」
そんな、なんの変哲もない暇な大学生の俺なのだが、このサイト『小説家になりたい』について、最近一つ悩みがあった。
それがこれ。
「……また広告か」
悩みとは、このサイトに表示される広告の量が、最近あからさまに増えたというものである。
現れた広告に間違えて触れないよう、画面をスクロールする俺の指が自然に止まった。
「邪魔だなぁ……」
スマホ画面の半分ほどを、正方形の巨大なバナー広告が埋めている。
そこに表示されているのは都心の超高級タワーマンションの広告。言うまでもなく、普通の大学生の自分には1ミリも関係のない商品だ。
こんなターゲット層を無視した広告なんて、見もしないどころか印象が悪くなるだけ、むしろ逆効果だろうに。
俺は軽いストレスを感じながら、スマホ画面を親指でスクロールしランキングに戻る。
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3. 後悔しても、許しません 〜いまさら『婚約破棄する』じゃなくて『今夜吐き気する』と言っただけと言われても、もう遅い〜
11,522pt
4.悪役令嬢かと思ったら、鍋のアクをすくう役割の令嬢だった件
10,369pt
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少しスクロールしただけで、再び指が止まった。
「また広告だよ......」
俺はため息をついた。画面には大きな広告が表示されている。
「......これもスルーっと」
広告に触ると別のサイトに飛ばされてしまう。俺は触れないようにうまくスクロールしようとする。
そんな時、ふとバナーのテキストに目を走らせた俺は、思わず指を止め固まった。
「......あれ、逆じゃない?????」
思わず部屋で一人、小さな声が出た。逆。そう、逆なのだ。
大豆が「畑の肉」と呼ばれるのであって、肉を「牧場の大豆」とは呼ばなくない????
困惑しながらさらにスクロールすると、今度は別のバナーが現れる。
「これも逆じゃねーか!!!」
森のバターがアボカドであって、牧場のアボカドがバターではない。なんだこれ、気持ち悪すぎる。こんな気持ちの悪い広告が出るなんて、今日の広告はハズレかも知れない。せめて出るなら、面白い漫画の広告でも表示されて欲しい。
胸のモヤモヤを消し去るように、俺は勢いよく画面をスクロールした。
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7.あっ、予約忘れた! もう遅い......
9,025pt
8.後悔しても、許しません 〜いまさら『婚約破棄する』じゃなくて『トンカツ馬鹿にする』と言っただけと言われても、もう遅い〜
8,964pt
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画面にランキング作品が表示されていく。そしてランキングを少し進むだけで、また広告が現れた。
「......まただ」
俺は間違えてクリックしないようスクロールの手を緩め、広告へと目を向けた。
なんと今度の広告は、2枚のバナーが縦に連結されていた。
いくらなんでも流石にひどい。こんなに大きな広告を出されたら、画面をスクロールする指がちょっと滑っただけで、間違ってクリックしてしまう。
「画面の半分以上埋まってるじゃん。邪魔すぎるだろ……」
俺は深くため息をつき、画面をスクロールする。すぐにまた邪魔な広告が現れる。今度は飲食店の広告だった。俺は広告を一瞥した。
「いや大損過ぎるだろ!!!!!」
なんだよ食べ放題を豚汁に変更って。3,050円払って、豚汁1杯を飲んで帰るだけになるだろ。
混乱する頭で画面をスクロールする。パニックになりかける俺の視界に、すぐに次の広告が飛び込んできた。
今度は書道教室の広告だ。俺は広告に触れないよう気をつけて画面をスクロールしようとした。
「墨汁を豚汁に!?!?!?」
これじゃ半紙を前に豚汁を飲むだけの教室になるだろ!!!!
液体が豚汁になればなんでも嬉しいと思わないでほしい。この広告の作成者はどうかプラス50円払って血液を豚汁にでも変えてくれ。
俺は広告から逃げるように画面をスクロールした。再び小説家になりたいのランキングが現れる
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14.後悔しても、許しません 〜いまさら『婚約破棄する』じゃなくて『温玉飲みまする(温泉玉子を飲むという意味)』と言っただけと言われても、もう遅い〜
5,697pt
15.後悔しても、許しません 〜いまさら『婚約破棄する』じゃなくて『ぅぉんやくぅはきぅぃえぉすぉうぃるぇい』と言っただけと言われても、もう遅い〜
5,420pt
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「というか、さっきからこのシリーズはなんなんだよ!!!!」
何が『許しません』だよ。なんでこんなのが一定の評価を得てるんだよ。
俺はランキングから逃げるように指を滑らせ画面をスクロールする。次に現れたのは化粧の広告だった。画面に化粧道具を持った女が現れる。
「......」
広告は普通だ。ただし成人男性の自分には全く興味のない内容だ。俺は気にも止めずに指を動かす。すぐに別の広告が現れた。
「若者達御用!?!?!?」
若者達逮捕されてますけど??????
俺は叫んだ。危ない、騙されるところだった。最初から「逮捕」されると広告しているバイトなら、万が一捕まっても応募してきた若者の自己責任に出来るという狙いだろう。これが闇バイトの、高度な作戦である。高度か?
俺はスクロールする指を早めるが、画面にはまたすぐに広告が現れた。もはや小説より広告の方が多く表示されている気がする。俺は辟易しながらも広告へと視線を向けた。
「次はスピ系の広告か……」
よくある、不安を煽るタイプの広告だ。スピリチュアルに興味がない俺は冷ややかな目を向けスクロールを続ける。
「不幸が地味すぎるだろ!!!!」
なんだよその聞いたことのない不幸は。気持ち悪いな。
虹色に光る『詳細はこちら』の文字がもはや白々しく感じる。クリックしたら一体何の詳細が知れるのだろう。あさりの蘇生法でも教えてくれるのか???
もはや小説を読むどころではなくなってきた。俺は事務的に、無感情に画面をスクロールしていく。次に現れたのは真っ青な広告だった。
「プールの広告? それか水泳教室か?」
この一枚だけでは意図がわからない。俺は画面をスクロールした。泳ぎ方でも教えてくれるのだろうか。
「怖いこと言うなよ!!!!」
もはや何を言いたい広告なのかもよく分からなかった。逆に俺が狂犬病だとしたら助けてくれるのかよ。俺は不気味な広告を避けるように画面をスクロールした。
画面には再び小説のランキングが表示される。
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21.婚約破棄とかけまして、遊園地ととく。その心は、どちらも楽しいでしょう wwwwww
4,052pt
22.【悲報】婚約破棄した結果の末路はこちらwww
3,964pt
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「このサイト、婚約破棄しかランキングに入ってねぇ!!!!!!!」
俺は最早広告以外にも文句が止まらなくなっていた。
「......はぁ、はぁ」
休日。たった一人部屋で叫ぶ俺。
段々と自分のことが馬鹿らしくなってきた。スマホから目を離した俺は少しづつ冷静さを取り戻す。
「......はぁ。」
なんだか色々どうでも良くなってきた俺は、少し前に表示されていた、あさりの味噌汁の広告まで画面を戻した。
逆に広告を押したらどんなサイトに飛ぶか、少しだけ気になっていたのだ。
「......よし」
俺は親指で、表示された広告をタップした。一瞬画面が読み込みのため遅くなり、すぐに別のサイトへと飛ばされた。
「普通に危ない広告なのかよ!!!!」
俺は激しい後悔と共に、全力でブラウザの戻るボタンを連打する。
『最近悪いことばかり起きてませんか?』という広告の問いへの答えは『はい』かも知れない。




